桜の木の下で(3)
三人、無言で洋介をじっと見つめる。
[洋介]:「すみません、僕が間違ってました。だからその冷たい視線はやめてくださいお願いします」
[百合]:「春美くんまで同じような視線を向けるとは意外ね……」
[春美]:「聞き捨てならない言葉だった気がしたからな」
[洋介]:「くそ、そういうところばっかり聞き逃さないんだよな」
[春美]:「当然だ」
[百合]:「まあ仮に洋介が良い人だとしても、待ってるだけじゃなくて自分からアピールしないとダメよ~。受け身な男は評価が低いからね」
[洋介]:「んなこと言ったってな……アピールしたらしたで『うわー、何よこの男~』みたいな視線向けてガツガツしてる男は嫌いって思う女もいるし……ちょっと矛盾が生じてるんじゃないのか?」
[百合]:「うーん、気のせいではないかもしれないけど、やっぱりアピールは必要よ。ポイントはギンギンにアピールするんじゃなくて、控えめにアピールすることよ」
[洋介]:「控え目?」
[百合]:「そう。例えば『別にそれほどのことじゃないですよ~』的なオーラを出しながらアピールするといいと思うのよ」
[洋介]:「……本当に、何を言いたいのか分からないんだが」
[百合]:「まああれよ。イケメンに限るってやつ?」
[洋介]:「おい! 話がとんでもない跳躍を見せたぞ!」
[百合]:「まあその時が来たら教えるから。とりあえず好きな子を見つけたら私に言いなさいな。バッチリサポートしてあげるから!」
[洋介]:「あやめ……信じて大丈夫なのか? こいつの言うこと」
[あやめ]:「期待しないでおいたほうがいいと思う。結構百合は適当なことを言うから」
[洋介]:「ですよね~」
[百合]:「お二人さん? 本人の目の前で悪口を言うのはいかがなものでしょうか~?」
[洋介]:「おっと申し訳ない。口にボタンをしておくよ」
[百合]:「何か頑張ればしゃべれそうじゃない? それ」
[洋介]:「やっぱりチャックのほうがいいか」
[百合]:「そうね。チャックでお願いするわ」
[春美]:「…………」(無言&無表情)
[百合]:「春美くん? どっちでもいいだろみたいな視線はNGですよ~」
[春美]:「別に向けてないよ」