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リボルバー

作者: 空花玲奈
掲載日:2026/06/18

雨は、嫌いだ——



アメリカ、ニュージャージー州、ニューアーク。

冷たい雨が降り注ぐ。

古いレンガ造りのアパートの壁面には《異星人は出て行け》と落書きが書かれいる。

アパートの中で温かいシャワーを浴びるアフリカ系の美しい女性。

真っ直ぐ伸びた長いプラチナシルバーの髪。

シャワーを浴び終わるとバスルームから出る。

右手の肘から先がない。

ベッドに腰掛け、右手に黄金色の義手を装着すると小さく呟いた。

 

「雨の日は右手がうずく。雨は、嫌いだ……。」

 

黄金色の義手を見つめると、雨の音だけが聞こえた。

 

10年前、雨の中央アジア、宿舎。

体格のいいアフリカ系の男性が女性に話しかけた。

 

「お前がアイリスだな。ついてこい。」

 

アフリカ系の男性の後ろをついていくアイリス。

 

「ミラー軍曹、新人を連れてきました。」

 

40代の白人男性がテーブルに座りパンを食べている。

 

「ご苦労、バローズ伍長。」

 

バローズ伍長にそう言うとアイリスを見つめミラー軍曹が言う。

 

「若いな。なぜ軍人になった?」

 

直立不動でアイリスが軍曹に答える。

 

「大学進学の奨学金が目当てです。」

 

ミラー軍曹が指にベタリとついたバターを舐めると話した。

 

「なるほど、ついてないな異星人と戦争なんて。」

 

宿舎に若い男性隊が員入ってくる。

 

「軍曹、時間です。」



雨の中央アジア、森林。

M4カービンの銃声が鳴り響く雨の中央アジア。

 

タタタタン!!

 

「撃たれたっ。」

 

右手で左腕を押さえるバローズ伍長。

薄暗い森の中、銃声の音が止む。

ミラー軍曹が構えていたM4カービンを降ろすと振り向きバローズ伍長を見た。

 

「逃げやがったな、異星人め!!」

 

ミラー軍曹がバローズ伍長を見ながら顎で指示をする。 

 

「救護班、こいつを見てやれ。新人、お前は俺についてこい。」

 

暗く静かな森の中、ミラー軍曹の後をついていくアイリス。

黒いトカゲのような異星人が見える。

 

「いたぞ新人。俺が前、お前がバックアップ。ついてこい。」

 

黄色い縦瞳でアイリス達を見ると森の奥に消える異星人。

異星人の後を追うアイリス達。

 

ドゴーン!!

 

ミラー軍曹の足下から音がした。

異星人が仕掛けた地雷を踏み、倒れているミラー軍曹。

 

「軍曹!!」

 

倒れているミラー軍曹に右手を伸ばすアイリス。







(……。)


 

周りを見るアイリス。

自身の右手が落ちている。

膝を落とし、右手を押さえ雨が降る薄暗い空を見上げ叫ぶ。


「あぁぁぁぁ——。」

 

冷たい雨がアイリスに降り注ぐ。

 

(雨は、嫌いだ……。)



アイリスの自宅、アパート。

 

「あれさえなければ、私は……。」


そう言うとベッドに倒れ込み、天井の照明を見つめるアイリス。


「私は、迷っているのか。」


薄暗い部屋の天井に右手を伸ばすと、黄金色の右の指から照明の光が漏れた。


トゥルル。

 

ベッドの上のスマホが鳴る。


 

ボンネットにNPDと書かれた黒いSUVを運転する三十半ばのヘッドセットをした白人男性。

 

「アイリス、ケインだ。テレビをつけてみろ。」


  

リモコンを操作し、テレビをつけるアイリス。

ニュースではラトガーズ大学での立てこもりを報道している。

 

 

車を運転しながら話すケイン。

 

「これから迎えに行く。詳しいことはそれからだ。」

 

ネイビーのシングルトレンチを着ると、腰にコルト・パイソンを装着するアイリス。

準備を終え表に出ると黒いSUVがアイリスを待っていた。

 

「何があった?」

 

アイリスが黒いSUVのドアを開け、助手席に乗り込む。

 

「ラトガーズ大学で立てこもりだ。犯人は異星人。」

 

ギュッと義手を握りしめるアイリス。

 

「異星人……。」



雨の中のラトガーズ大学。

傘を差し、NPDと書かれたビニールのコートを着たケインが若い警官に話しかけた。

 

「NPD異星人課だ。状況は?」

 

若い警官がケインに答える。

 

「詳しいことはわかりません。ただ、犯人は人質を盾にしているようです。」

 

話を終えるとアイリスに話しかけるケイン。

 

「行くぞ、アイリス。俺が前で、お前がバックアップ。」







「私は……。」


 

少し考え、アイリスが答えた。








「迷わない。前に出る。」

 

 

アイリスの顔を見るとケインが言う。

 

「わかった。フォローに回る。」

 

大学の建物内に侵入する2人。

 

バン!!

 

「聞こえたかアイリス?左側みたいだ。」

 

ケインが銃声のした方を見ると、女学生達が逃げてくる。

 

「助けて!!」

 

アイリスにぶつかると、無視するように走り去る女学生達。

右手の義手をギュッと握りしめるアイリス。

 

「どうする、アイリス。」

 

「……行こう。」

 

奥へと向かう2人。

 

「嫌……。」

 

奥の部屋から女学生の声が聞こえた。

アイリスが黄金色の義手でリボルバーのハンマーを起こす。

2人が部屋へと突入する。

部屋にはブロンドの女学生にテック9を突きつける黒いトカゲのような異星人がいる。

涙を流し、鼻水を垂らす白人の女学生がアイリス達を見て叫ぶ。

 

「私のパパは上院議員なのよ!!早く汚らわしい異星人から助けなさい、そこの刑事達!!」

 

「やれやれ、本音を言ってくれる。」


ケインがそう言うと、アイリスがチッと軽く舌打ちをした。

アイリスのリボルバーが火を吹く!!







「知るか!!」


 

異星人の黒い右手が打ち抜かれる。

異星人の背後のアメリカ国旗に飛び散る緑色の体液。


 

雨が降るラトガーズ大学、入り口。

アイリスの背後から警官の声が聞こえる。

 

「犯人は無事確保、右手に怪我。」

 

雨が降る薄暗い空を見上げるアイリス。

 

「雨は、嫌いだ……。」

 

雨に打たれるアイリスの後ろから、そっと傘を差し出すケイン。

 

「ああ、知ってる。」

 

SUVに乗り込むと現場を後にする2人。


 

  私達は暗い雨の中、迷う人——

 

        ただ、独りじゃない——

読んで頂きありがとうございます。

よろしければ、コメント等頂けると嬉しいです。

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