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女神ハルモニアの教育実習。その1

これは女神ハルモニアが魔法世界に赴く少し前のお話し。

パシリ女神としてハルモニアが天界中を走り回っていた頃のお話しです。



ここは天界の外れにある(要するにド田舎)女神ヘスティアの庵。


オリュンポス12神の一柱である「愛と美と豊穣を司る女神アフロディーテ」と「戦争と暴力と軍事を司る軍神アレス」の娘、「調和を司る女神ハルモニア」は両親が長く不在になっておりヘスティアに養育してもらう為にこの庵に居候している。


と言うかハルモニアが物心がつく前に両親が出張に出て行ったきり帰って来ないのでハルモニアも両親の顔をほとんど覚えていない「真なる鍵っ子」である。


鍵っ子ハルモニアになってからは、「炉と暖炉と家庭と国家の正しい秩序を司る女神ヘスティア」が女神ハルモニアを養育していた。


真なる天然のヘスティアだが天界より「孤児を育てる特権を持つ」ので子供達の養育には知見が多い。


「ハルモニアちゃんは、どんどんアフロディーテちゃんに似てきましたね~。うり双子です」


いやヘスティアさん?歳が・・・歳がばれるから「うり双子」とか言ってはいけません。

真なる天然は割と豪快に自分が敷設した地雷を自分から踏み抜いて行くのだ。


「そうなんですね?私はお父さんよりお母さんに似ているんですか?」


母親譲りの美貌と見つめると相手を魅了してしまう青い瞳の切れ長な目に加えて抜群のプロポーション・・・そして父親譲りのキラキラと風に流れる銀糸の髪。

どこからどう見ても妖艶な女神にしか見えないハルモニアだが中身はただの小学生児童である。


「アレス君の要素は銀髪だけですねぇ~。容姿はアフロディーテちゃんにそっくりです。

ハルモニアちゃんは、やっぱりお父さんとお母さんに会いたいですか~?」


「・・・ヘスティアちゃんが側に居てくれれば別に大丈夫です」


「そっか~」


「なので抱っこして下さい」

ん!っとヘスティアに向かい両手を広げる甘えん坊のハルモニア。


「は~い」

もう自分より身体の大きなハルモニアを抱っこして頭を撫でるヘスティア。

ゴロゴロと音が聞こえるレベルでヘスティアに甘えまくるハルモニア。


「こんな可愛い子を放ってお母さんとお父さんは今何してるんですかね~」


アフロディーテとアレスもまさかこんなに出張が長引くとは最初は想像もしておらず軽い気持ちで娘をヘスティアに預けたのだが「5000年(人間の感覚に換算すると5年)」も娘を放置する事になっている。


さすがにハルモニアも顔も覚えていない本当の両親よりも自分の近くで微笑んで抱きしめてくれるヘスティアの方を親だと思っている。


でも両親の擁護をさせて頂きますと、あの2人はハルモニアの事が嫌いとか興味がないとかの悪感情で放置しているのではないと思われる。


むしろ絶対に間違いなく2人は必死に頑張って何とか娘と連絡を取ろうと奮闘しているが「どうしても連絡が取れない状況」なのだろう。


と言うのも2万年ほど前に「どっかの馬鹿タレ」が引き起こした「超新星爆発大規模連鎖事件」の時に発生した大出力太陽フレアの残滓が2人が居る銀河とハルモニアが居る天の川銀河を遮る様に広範囲に広がっているのです。


フレア内は電磁パルスの猛烈な嵐になっていると思われ「神力念話」を含めた全ての通信が出来ない状況だと思います。


はい。その「どっかの馬鹿タレなわたくし」が1から10まで全て悪いんですね。ごめんなさい。


一応、わたくしもハルモニア親子を引き離した重大な責任をひしひしと感じておりまして・・・罪滅ぼしの為に通信制の家庭教師として可能な限り全力でハルモニアちゃんに勉強を教えています。


そして、わたくしの過去の悪業の概要とアレス君とアフロディーテちゃんの置かれている状況や苦悩についてもハルモニアちゃんにはハッキリと伝えておりますのでハルモニアちゃんも両親に対して負の感情は無いとの事。


ただ・・・やっぱり直接育ててくれる者を慕うのは当然でして・・・

いやこれ、アフロディーテちゃんが帰って来たら絶対に殴られるな・・・


なので、わたくし女神メーティスと女神ハルモニアは昔からの知り合いなんですね。

割と他の物語を読む上でもこの点は重要な要素になりますので覚えていて頂けると話しの展開の理解がしやすいと思います。


そんなこんなでハルモニアも「1万歳(人間に換算すると10歳児くらい)」となり、いよいよ幼年期から卒業する為の教育実習の時が近づいてまいりました。

これからは本格的に神様のお仕事を実体験して学んで行くのです。


本来教育実習を主導するべき両親が不在なので現行保護者の女神ヘスティアの主導で教育実習が行われる事になりました。


「これからハルモニアちゃんには色々な神様のお手伝いをして頂きます。

先ず手始めにハルモニアちゃんと同じ「光属性」で「調和」との親和性も高い、「芸術・音楽・医療の神様アポロン君」に付いて頂きますね~。

彼はとても優しい神様なので安心して下さいね」


「あい」


天界の初心者教育の第一人者のアポロン神。

少しハルモニアに対して過保護な女神ヘスティアはハルモニアの親戚筋で属性相性も良い無難な神の元に女神ハルモニアを送る事にする。


「お話しに聞いていた「パシリ実習」の開始ですね?頑張ってパシって来ます」


「ぱ・・・パシリ????え?ええ~???

誰ですか~?ハルモニアちゃんに悪い言葉を教えたのは~?」


えーと?すみません・・・それはわたくしのせいですね・・・

いえですね?これに関しては言い訳をさせて下さい!

わたくしはですね?授業中にポロリと・・・本当にポロリと「パシリ」と口走っただけなんです!

そしたら妙に「パシリ」の語呂がハルモニアちゃんの琴線に触れちゃったらしく覚えて使う様になっちゃったんです。

ああ・・・まーたアフロディーテちゃんに殴れられる要因が一つ増えたじゃん。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




芸術の神アポロンの工房へとやって来たハルモニア。

ヘスティアの庵からも近くテクテクと散歩しながら来ましたよ。


「ははははは。よく来たねハルモニア君」


「今日からお世話になるハルモニアです。アポロン様、よろしくお願いします」

ペコリとアポロン神に頭を下げるハルモニア。


太陽神アポロンはその名前の示す通りの陽キャで爽やかなイケメンでした。

ただ意外に年齢は高齢で末の妹の女神アテネとは年齢的な差がある。

イケメンと言うよりはイケオジと言った方が正解かな?

月の女神アルテミスの双子とも言われているがアルテミスの方が少しお姉ちゃんだったりします。


「はははははは、そう畏まらないでよ。君は我の姪っ子なのだからね」


「あれ?そうなのですか?」


「アレス兄上と我の母親は違うのだけどね」


「おおう?お祖父様ゼウスは「○○○○」ってヤツなんですね?!」


「どこでそんな言葉を覚えたんだい?!?!」

小学生の姪っ子に○○○○なんて言われたらそら叔父さんは気絶レベルの大ショックを受けるわな。

ハルモニアがなんと言ったかは皆さんのご想像にお任せします。


そしてすみません!その言葉を教えたのも実はわたくしですーーーーー!!!

違う!違うんです!旦那ゼウスが新しく若い愛人を作るからいけないのです!

なのでムカついてつい、「あの○○○○野郎」なんて恨み言をボヤいちゃったんです。

悪いのは全て浮気性な旦那なのです!


あああああ・・・・・・これはいよいよアフロディーテちゃんに殴られるどころか袋叩きにされそうです・・・


「うう・・・よし!じゃ・・・じゃあ教育実習を始めようか」


「あい」


姪っ子の酷過ぎる口撃から何とか立ち直ったアポロン神の教育実習が始まった。


アポロン神の教育実習は主に儀式で歌う聖歌の練習だったのだが・・・そこはさすがハーモニーを司る女神様。かなり難易度の高い聖歌も楽々とクリアして行くのでした。


「良いね。良いね。歌は文句無しだよ。次は楽器の練習をしようか」


「あい」


神が行う儀式において歌が歌えるか歌えないか、楽器が使えるか使えないかでは、その効果に雲泥の差が生じる。

生まれつき歌が上手なハルモニアは今後の大きなアドバンテージになるだろう。


「ふむふむ。歌は良いけど楽器の方はまだまだ練習が必要だね。

そこでどうだい?このまま我の従属神になって引き続き音楽の勉強するかい?

音楽は君の調和の能力も高められるよ?」

ここでの従属神とは要するに「弟子入り」って意味合いだね。


「うーん?もう少し色々と見てから決めたいです」


「そうかい?まあ教育実習は始まったばかりだもんね。

それで次はどの神の所に行く予定なんだい?」


「えーと?ヘスティアちゃん・・・ヘスティア様のお姉様のデメテル様の所らしいです」


「おお?!デメテルの叔母様の所かい?!

そりゃまた・・・随分と良い実習先に行けるね。普通なら叔母様の所に教育実習なんて行けないよ?」


「そうなんですね?」


豊穣の女神デメテル・・・オリュンポス12神の1柱で大神ゼウスや海王ポセイドンのお姉さんだね。

女神ヘスティア様は可愛い義理の娘の為にここぞとばかりにオリュンポス12神の権力を使い自分の兄弟姉妹のコネを最大限に使いまくりである。

真なる天然は自分自身には無頓着だが自分の大切な子の為に権力を使うのは厭わないのだ。


そしてハルモニアのお母さんの女神アフロディーテも豊穣の女神ではあるが女神デメテルは豊穣神の中でも格が一つ違う。本来なら教育実習程度では会えない偉大な女神様なのだ。


ちなみにわたくしはデメテル様がめーちゃ怖いです・・・だってわたくしの顔を見るなり鬼の形相しながら説教して来るから。弟嫁をイジメる姉小姑・・・いえ何でもありません。


☆解説すると説教されるのは奇行に走る女神メーティスが圧倒的に悪いです。以上。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「お姉様。この子がハルモニアちゃんです」

ハルモニアを連れて女神デメテルの農園にやって来た女神ヘスティア。


「あらあら?おうおう?アフロディーテに似て随分可愛いらしいお嬢ちゃんだこと。

義理とは言えヘスティアの娘なら私の姪っ子も同然さね。なにか困った事があったらこのババアにすぐに言うんだよ?お前をイジメる悪い奴なんてババアがやっつけてやるよ」


女神デメテルは細身で清楚な容姿とは真逆の豪胆で好戦的な女神様でした。

ちなみに「屈強」の特殊神技を持つ彼女はタイマンでの喧嘩なら弟のゼウスにも負けないです。


一度、姉弟喧嘩が起こってわたくしの目の前で旦那ゼウスがデメテル様にボコられるのを見ました・・・めーちゃ怖かったです。


「えへへへへへ」


偉大なる大叔母様に頭を撫でて貰ってご満悦のハルモニア。

デメテルの妹神である女神ヘスティアも偉大な女神様なのだが女神デメテルはやっぱりランクが一つ格上なのだ。


かなり気難しい所がある女神様なのだがハルモニアのほんわかした雰囲気に一瞬でデレデレである。真なる天然の女神ヘスティアに育てられた良い所が出てるね。

それにしても女神ハルモニアって両親の系譜的に見ても凄い良家のお嬢様だよね。

オリュンポス神族のサラブレッドである。



☆この作品ではアフロディーテの母親の女神ディオーネーは大神ゼウスとは別の存在になります。


魔法世界の解説者シリーズに登場する天龍達はこの「天空の女神ディオーネー」の眷属神獣です。

簡単に龍種について解説をしますと、女神ガイヤから生まれたのが地龍、女神ティティス(テティス)から生まれたのが海龍、女神ディオーネーから生まれたのが天龍、という事です。


ちなみに眷属神獣を生み出す事が出来るのは女神のみで男神は眷属神獣を生み出す事は出来ません。なにせ男なので。

眷属を生み出せない代わりに神力(純粋な腕力)や特殊神技において男神は女神より強い傾向があります。

それでも結構、男神は女神にボコられています。女は強しですね。




女神デメテルの元での教育実習は主に農業に必要な気候変動の儀式や川の流れなどを変える地形変動の儀式などの仕事を手伝う内容だったのですがハルモニアには・・・


「うーん。残念ながらお前にはこの手の才能はない感じだね。

アフロディーテの娘だから多少は豊穣の才能があると思ったが「調和」の力に神技の才能が全振りされた様子だね」

大地の創世神の素養はなかった様子ですね。


「うう・・・足を引っ張ってすみません」


「なになに気にする事はないさ。その代わりに「調和」の力は素晴らしいもんさ」


通常、神は複数の事象を司るものなのだがハルモニアの場合は「調和」のみを司る。

目の前の豊穣を司る女神デメテルと同様にこう言う一点張りの才能を持つ神の特殊神技はメチャクチャ強いです。


「でもね?お前の調和は強大過ぎるんだよ。私や弟達だってお前の「調和」からは逃れられないだろうね。

そしてそれはお前にとって諸刃の剣になってしまうんだ。

力が安定するまでは安易に「調和」の力を使うんじゃないよ?

明日からはババアと一緒に基礎能力を上げる鍛錬をしていこうじゃないか」


女神デメテルは脳筋の側面があり修行が大好きなのだ。可愛い弟子が見つかってデメテルも楽しそうである。


「あい。よろしくお願いします」


脳筋な女神様に気に入られたハルモニア。その後はデメテルの所で基礎能力を上げる修行に明け暮れるのでした。


そして改めて分かった事なのだがハルモニアは「根性」がやたらとある。

脳筋女神デメテルが繰り出して来るどんな厳しい鍛錬にも弱音一つ吐かないのだ。


根性のある姪っ子にますます気分が良くなった女神デメテルは更に戦闘技術をハルモニアに教え込んで行く。本来の教育実習内容には戦闘技術の訓練なんて含まれていません。


「いやはや・・・お前の戦いのセンスは神族の中でもずば抜けているねー。こりゃ驚いた。

戦闘用の特殊神技もないのに大したもんさね」

ハルモニアは神技を使わないノーマル格闘技では神族中でも最高ランクの素質があったのだ。


「身体を動かすのは大好きなんです」


よくよく考えて見れば軍神の娘が臆病だったり戦闘の才能が無い訳がないよね。

ただハルモニアは、とても優しい性格でその後も戦う事など殆どなかったので高い戦闘の才能は埋没して行くのでした。




女神デメテルの元で教育実習を開始した女神ハルモニアでしたが、気が付けば予定期間を大幅に超えた「500年(人間の感覚だと半年)」もの月日が経過してました。


「もー!デメテルお姉様、早くハルモニアちゃんを返して下さいよ~。

とっくにお姉様の所での研修期間は過ぎてますよ~。次の予定もあるんですから~」

珍しく激おこプンプンの女神ヘスティア。


「いーやだね。ハルモニアは私のもんだ。もう返さないよ」

ヘスティアからの返還要求をことごとくシカトしているデメテル。

しかっとハルモニアの頭を抱きしめて「絶対に返さない!」状態である。


「もー!」


女神デメテルが女神ハルモニアの事を猫可愛いがり過ぎて自分の農園からヘスティアの庵に返してくれないのだ。


「あははははは」これには少し困った様子のハルモニア。


「まあ、半分は冗談さね。分かったよ。次の実習予定はどこなんだい?」


「半分は本気だったんですね・・・

次の実習先ですね?えーと?本当なら掟の女神テミスちゃんの所で法律のお勉強だったんですけど・・・いきなりアテネちゃんが「私の所で実習させたい」と、割り込んで来ましたね~」


「え?あのアテネがかい?・・・・・・・・・んー?」


なんか微妙な空気に包まれる女神デメテルと女神ヘスティア・・・え?うちの娘になにか問題でも?


「・・・アテネ様だと何か問題があるんですか?」

わたくしと同じ疑問を抱いて少し不安気なハルモニア・・・いやいや、ウチの娘はハルモニアちゃんをイジメたりとかはしませんよ?


「いや、あの子の個人の能力は素晴らしいんだがね?積極的に他者と何かをするとかが意外なんだよな」

あっそうですね。我が道を突っ走るアテネちゃんですからね。


「そうですね~。アテネちゃんが人に何かを教えている姿って想像が出来ないんですよね~」


「そうなんですね?」


教育実習が始まってから初めて不安になるハルモニアでした。

・・・・え?わたくしの娘になんの問題が???

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