ヘスティア先生の解説。その3
学級崩壊から時は流れて500年・・・教師として百戦錬磨のヘスティア先生のおかげで教室内も随分と雰囲気が変わり学校らしくなりました。
どうやってクソガキ共を抑えた?その辺は先生らしく「生徒1人1人と500年間に渡って地道なお説教」を続けたからです。
と言うかヘスティア先生が実力行使なんかに出たら魔法世界なんて文字通りの粉々になります。
「「皆さん!今日も元気に立派な龍になる為に頑張りましょう!」」
ヘスティア先生の元気な掛け声と共に今日の授業が始まる。
今日は何の授業?と言われるとかなり高度な宇宙物理学からです。
自他共に認めるクソガキ共だが全員とても優秀な龍の集まりなのです。
「「今日の授業は天体物理学についてです。
恒星・銀河・星間物質などの天体の物理的性質(光度・密度・温度・化学組成など)や天体間の相互作用を皆さんと一緒に協議して行きましょう!」」
想像以上に専門的で難しい授業でワロタ・・・
そして意外な事にこの手の研究関連に異常に強い才能を発揮したのは地琰龍ノイミュンスターだった。
今度わたくしがマッドサイエンティストの心得を教授して差し上げましょう。
「「お前、乱暴者のくせに頭は良いよな・・・」」
ノイミュンスターの書いた恒星進化論についての研究資料を見て感心しているアメデ。
「「そうか?恒星進化論なんて普通じゃね?」」
「「全然普通じゃないわね・・・何の研究なんだか、わたくしにはさっぱりだわ~」」
魔法学関連には強いが物理学はてんでダメダメなアメリア。
「「うーん?でもノイミュンスターが研究に使いまくるからノートの消費量が莫大だな・・・」」
教材の管理は委員ちょうのクライルスハイムの仕事だ。毎日凄い勢いで消えて行くノートを見て渋い表情である。
「「そりゃ龍の体格に合わせてるからね・・・ノート1冊作るのに大木が五本も必要だもんね」」
龍が使うノートのサイズは縦に10m、横に7mになります・・・デケェな。
「「もう完全に森林環境破壊レベルだよね・・・その内、木材不足になってドライアドの大森林の木まで伐採するハメになりそうだわ」」
手先が器用なシーナとラーナ姉妹が製紙を担当している。ちなみにシーナの方がお姉さんである。
「「さすがにそうなるとドライアドから苦情は入るよな?」」
「「実はもう龍種による過度な木材使用量の危険性についての意見具申が出てます」」
「「これでも可能な限り頭の中で暗算して使用量を抑えてんだけどな・・・」」
「「お前、天文学的な数値の暗算とかどんだけ頭が良いんだよ?それで何で乱暴者なんだ?」」
頭の良さと性格は比例しないものである。
「「んー?それなら、皆さん「人化の法」を覚えて見ますか?
先生の居た銀河では結構使われてました。先生は質量的に人化は無理ですが皆さんなら可能だと思います。
ちょっと習得するのが難しい術ですが人間サイズのノートを使える様になると紙不足問題は一気に解決しますからね」」
「「おー?なるほどー?」」「「わたくし、ちょっと人間に興味あります」」
先生の提案に生徒達の反応はまずまずと言った所かな?
よもや学校で使うノートが不足した事が「龍人」の誕生のきっかけだったとは後世に住む誰にも想像出来ないだろう。
「人化の法」のエピソードは他で詳しく書いてるので今回はバッサリと割愛します。
それからまた500年近くの月日が流れて・・・
想像以上の苦労を重ねて全員無事に人型になる事に成功して紙の消費量も落ち着きました。
「やっぱり人間はコンパクトで良いわね~」」
「人化の法」の恩恵を一番多く受けたのはアメリアである。
海龍の性質的に身体がとても大きくなり陸上での行動に制限があったのだか人間の姿になって全ての制限が解除されたからだ。
「そうだな。それに人間の書く読み物は斬新で面白い」
人間の書く本にハマったアメデ。荒っぽくて傲慢だった性格も今ではすっかり落ち着いて本の虫、読書が趣味のインテリとなっている。
「髪の毛を触れるのもヘスティア先生のおかげだよね~」
手鏡を見ながら鼻唄混じりに金髪を梳くラーナ。
龍の時では想像もつかなかったお洒落をする事に目覚めたシーナとラーナ。
「ね?ね?ね?この髪飾りどう?アメデ?」
この頃になるとアメデとシーナは婚約者同士になっている。毎日イチャイチャしてます。
ラーナと同じ長い金髪を揺らしてサイドに付けた銀製の薔薇の髪飾りを婚約者のアメデに見せている。
「似合ってるが・・・ソレどうしたんだ?人間の街まで行って勝ったのか?」
「私、人間のお金持ってないよ?これはね?クライルスハイムが作ってくれたのよ」
「へー?クライルスハイムって意外な才能があるんだな?綺麗なモンだな」
「いや・・・我とて工芸に特化している地龍だぞ?」
人間の姿になって細かい銀細工が出来る様になり密かに喜んでいるクライルスハイム。
この場に居ないノイミュンスターは・・・言うまでもなくノートを自由に使える様になって大喜びだ。むしろそれが目的だったからね。
この頃からノイミュンスターは変な研究に熱中する様になって研究所に引き篭もる事が多くなった。今日も別の教室にて研究三昧である。
本格的な研究者になると乱暴だった性格も綺麗さっぱりと完全に消えて周囲の者達を驚かせた。
特に次代の地龍王にクライルスハイムが決まるとクライルスハイムに臣下の礼を取る様になったのだ。
単純に幼龍期から成龍期に突入して大人になって来ただけなんだけどね。
それぞれ人間の姿での生活を堪能している生徒達を見て「人化の法」を教えきったヘスティア先生もご満悦である。
教室の様子も授業開始初日の混沌からは想像も出来なかった落ち着き具合である。
「「うふふふふ。そろそろ皆さんも先生から卒業ですかねー」」
教え子が旅立つ寂しさを感じて哀愁を漂わせるヘスティア先生・・・
だが心配しなくても彼らの卒業と同時に次から次へと新クソガキ共が入学して来ますよ?
何なら次の世代の龍達が歴代でも一番タチが悪いかも知れませんね。
次こそがクローディアにニーム、ジャコブ、スカンディッチの変人ラインナップですからねー。
魔法世界の教師であるヘスティア先生には立ち止まる事など許されないのだ。
ちなみにヘスティア先生の「岩琰龍」の字名は、「「我が先生にあだ名を付けてやるよ!」」と、暴れん坊やんちゃ坊主だった地琰龍ノイミュンスターが考えたらしい。
自分の字名から一文字取って岩を付けただけの子供が適当に考えた字名で岩琰龍に特別な意味は無い・・・・・・・え?!無いの?!
いや、高位存在の渾名(この場合は蔑称では無く愛称)とは魔法儀式的には大きな意味が有るのだが、ヘスティア先生クラスの超絶龍種ともなると、ほぼ全ての魔法儀式を省略する事が出来るので意味が無いのだ。
「「岩琰龍ですね?分かりました!これから先生は岩琰龍ヘスティア先生と名乗りますね!素敵なお名前ありがとうございますノイミュンスター君」」
「「えへへへへ、先生が気に入ってくれて良かったぜ!」」
そしてやっぱりアッサリと「岩琰龍」の字名を受け入れたヘスティア先生なのだ。
ちなみにノイミュンスターの「地琰龍」の字名は海龍王アメリアが付けた字名だったりする。何だかんだ喧嘩してても仲が良い古代龍達なのだ。
「「そう言えばクライルスハイム君?」」
それとは別にヘスティア先生がどうしても気になっている事がある。
「「はい?」」
「「ハルモニアちゃんをご存知ですか?」」
「「?・・・いえ?知らない方です。どちら様ですか?」」
「「おかしいですねぇ?先生は子供と出会うのは得意なんですけどねぇ」」
それは魔法世界に来た理由、肝心なハルモニアちゃんに会う事が出来ないのだ。
ヘスティア先生の特殊神技に「他者との邂逅」と言うのがある。
これは「望んだ相手と出会う事が出来る」のだ。
思い返せば道に迷った時の女神アテネとの邂逅も魔法世界に到着して一発目からクライルスハイムと出会えたのもこの神技のおかげで偶然の出会いを必然に出来るぶっ壊れ神技なのだ。
一見すると便利そうだがハッキリ言って諸刃の剣の神技だ。
例えば「拉致したい相手や殺したい相手に会いたい」と願ってしまったら相手がどんなに自分から逃げていても出会うのが必然となってしまう。
間違えた使い方をすれば暗殺や拉致のし放題と言う訳だね。
しかし神技を保有しているのが真なる天然である。
ヘスティア先生が間違えた方向に神技を使う事は絶対にない。
むしろヘスティア先生だからこそ獲得出来た神技なのかも知れない。
しかしその神技をもってしてもハルモニアちゃんと出会えない・・・なぜ?
女神ヘスティアより受けた「ハルモニアちゃんを助けて欲しい」との依頼。
しかし魔法世界に来て早いもので1000年。待てど暮らせどハルモニアなる女神の気配を感じないのだ。
実はこれには理由があって女神ヘスティアは「予知」の特殊神技を持つ。
その「予知」が「ハルモニアちゃんが魔法世界で大変な目に遭う」との未来を予想したのでヘスティア先生にハルモニアちゃんのサポートをお願いをしていたのだ。
要するにまだ魔法世界で酷い目に遭ってないハルモニアちゃんをヘスティア先生が助ける理由がなく「他者との邂逅」が発動しないのだ。
前提条件である「かわいそうなハルモニアちゃん」が現状とは違うと言う事だね。
真なる天然は大切な説明を丸っと忘れる事があるのだ。
実際に女神ハルモニアが魔法世界へと派遣されるのは「ここから1000年後」になる。
神様の時間感覚だと1年後くらいの感覚かな?
現在のハルモニアちゃんは人間に例えると小学生くらいで来年小学校を卒業する予定の児童なんですね。さすがに天界も小学生を働かせるほど鬼畜ではありません。
「「そのハルモニア様とはどの様なお方で?」」
「「先生にも分かりませんねぇ」」
次回のヘスティア先生は「ハルモニアちゃんとの邂逅」です。




