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9話 才能 ダンジョン配信#1

「……っていう訳で、家からでもダンジョンに潜れるんですよ」


 俺は自分が引きこもりであることや、アセットにいろいろ教えてもらったこと、どうやら自分をダンジョンに呼びたがっているイレギュラーのモンスター(・・・・・)がいる事等々を簡単に説明した。


 気づけばかなり歩いていて、道中で更に五体ほどゴブリンを倒している。


【コメント】

・それ、相当高位なモンスターでは?

・そいつに狙われるのはヤバイでしょ


 俺の配信も気づけば同接が17にまで伸び、チャンネル登録者も十人に増えた。コメント欄には四人が継続的に書き込みをしてくれていて、それなりに盛り上がっていると言って良いだろう。


「人増えてますね。概要欄にハッシュタグを色々増やしたのが効果でてるのかも」


 配信開始からそろそろ三十分ほどだろうか。

 コメントでアドバイスをもらい、色々試した効果が出ているようで嬉しい。


【コメント】

・そういやこれ、配信のアーカイブ残る? 切り抜きとかって作っていい?

・フォロワー少ないけど、一応ソレイッターで宣伝してきた


「アーカイブ残しますよ。切り抜きもめっちゃ助かります。お、宣伝ありがとうございます」


 感謝しつつ、ダンジョン内を歩き続ける。

 コメントの数が多いと話が広げやすくていい。



 それから再びしばらく歩き、凡そ三十分ほどダンジョンを探索し続ける。


「おー同接二十人行ったね」


 ゴブリンの他にスライムやホーンラビットなどと遭遇し、魔石の数が二十を超えた頃、同接も二十人ほどにまで伸びていた。


【コメント】

・ペース的にそろそろ特殊部屋見つかりそうだね

・流石にまだじゃね?

・でもツーシーもちょっと息上がって来てるし見つけたいね


 コメント欄を読みつつ、俺も密かに特殊部屋をそろそろ見つけたいと心の中で願う。なんせ特殊個体を倒した後の特殊部屋は安全地帯と化すので、休める場所が手に入るのだ。


 そんな事を考えながら、俺は次こそと角を曲がる。


「お〜噂をすればなんとやら。特殊部屋だ」


 角を曲がった先で、あの大きな扉が目の前に現れた。


 顔を引き締める。食人樹との戦闘は記憶に新しい。

 一階層、二つ目の特殊部屋。同じ階層の特殊個体でも倒していくにつれて中の敵が強いモンスターに変わる仕様がある。つまりこの部屋の中には、あの食人樹より強いモンスターがいるという事だった。


【コメント】

・ついに来るのか

・ヤバくなったら撤退するのを肝に銘じろよ

・ツーシー君、なんか突っ走りそうな気配があるから怖い


「あはは、流石に分かってますよ。俺も光属性の魔法は苦手なんで、怪我したくないですから。よし、じゃあ早速……の前に一旦水飲みますね」


 ドアに手にかけ、身体を倒しかけて止まる。

 水分補給は大事だからね。


【コメント】

・謎のフェイントで草


 凍ったまま持って来たはずの水は、時間の経過を示すように完全に溶けている。

 それでも手に冷たさを感じさせるその水を、キャップを開けて口に流し込む。スッと喉に通っていく冷えた潤いが、緊迫していた内心を和らげてくれた。


「じゃ、改めて。行きます」


 パッと門を開く。

 そして素早く魔法を唱えながら、俺は特殊部屋へと足を踏み入れていった。








ーside 水野 三秋ー

 

 私はダンジョン配信を見るのが趣味だ。

 大学帰り、シャワーを浴びた後の私はベッドにダイブし、パソコンを起動した。


 今年大学に入学したばかりの私は、特にサークルなどに所属することもなく家でダラダラする毎日を高校時代と変わらず送っている。


 私は基本的にネットに生きる人間だ。

 一応だがSNSでイラストレーターのようなものをやっていて、フォロワーが三百人ほどいる。投稿するのはファンアートが基本で、仕事は受けない。というか受けれる気がしない。多分緊張しすぎて納期に間に合わなくて激怒されるところまで見える。


 私は趣味のダンジョン配信が盛んなサイト『DEV』を開き、適当におすすめ欄をスクロールする。何か面白そうな配信はないかな、と私は肩までかかるくらいの自分の髪を人差し指でくるくると回しながら探していた。


「……ないなぁ」


 目につくような配信はない。

 じゃあソレイッターでもチェックしようかな、と意識を切り替えかけたところで、ふととある配信に目が止まった。


 ツーシーという名前の配信者。

 サムネイルは自動生成されるものだし、同接も二人しかいない。


 正直全く興味をそそられない、【初配信】と書いてある通り初心者感が丸出しの配信だ。


 けれども私はそのサムネで、一点だけ気になった。


 骨格が幼い……。


 プライバシー設定を付けているのか、顔は写っていない。

 けれども背の低さやどことなく感じる幼さから、中学生くらいかなと予測が立った。


「珍しい……」


 人が探索者の資質に目覚めるタイミングは未だによく分かっていない。だが、子供の体で目覚めるのは珍しい。


 今世界で一番若い探索者が、アメリカの少女、ミリーで、十三歳だと聞く。

 日本では十四歳の少年が最年少だっただろうか。


 別に若いからといって大成するとは限らないが、魔法にも魂の老化による衰えがある。年齢は当然、若ければ若いほどいい。


 私は物珍しさに惹かれて、その配信を開いていた。

 

 初配信だし、過疎っているのかなと思いきや、意外にも一人の視聴者がコメントを送っていてその配信者は楽しそうな声色をしていた。


 試しに、私はコメントを打ってみる。

 すると過疎配信なだけあって、すぐに拾ってもらえた。


『俺はDCって略するんで……って、うおおお二人目!? いらっしゃあい!』


 熱烈な歓迎に、少しだけ嬉しくなる。

 私はしばらく、続けてその場のノリに合わせたコメントを打ち込んで彼を観察する。


 無邪気な言動、親しみやすさ。

 特別トークが上手い訳ではないけど、その配信慣れしていない様子が魅力にも感じる。


 そんな彼にすっかり夢中になっていたからこそ、ゴブリンとの戦闘が始まると、思わず危ないと叫びかけた。


 奇襲にあったツーシー君が床に転がり、カメラが激しく動く。


 けれど私の心配をよそに、それまで軽い雰囲気だったツーシー君が、雄叫びを上げてゴブリンを吹っ飛ばした。


「っぇえ!?」


 変な声が出る。初心者であるはずのツーシー君の強さに驚いたのもそうだが、先ほどまでとのギャップに、不覚にも少しドキッとなった。


 ダンジョンとは、つまりは刺激だ。

 私たちにとって全く未知な世界。その未知に人が飛び込み、命をかけて戦う様子が娯楽なのだ。


「……ってやばい、そろそろタイムセールの時間だ……」


 ふと、我に帰る。

 気付かぬうちに、少し熱中しすぎていたようだ。


「……買い物、後で行けばいいっか」


 思わずカーソルがチャンネル登録のボタンに動いた。

 その後、買い物に行くのを忘れたのは言うまでもない。



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