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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

声劇台本

【声劇】転嫁

作者: 緑野タニシ

声劇台本


登場人物

語り手

勇者

勇者息子

やあ、傷は癒えたかい?小さな勇者くん。

……(言い淀みながら)今回は本当にありがとう、各国を荒らし回る例の魔物は君の活躍のおかげで退治できた。


…えーと、ちゃんと私の声は聞こえてるかな?

……そうか(諦め)……なあ、あの魔物は、死ぬ前に何か言っていたか?


……いや、すまない、聞くだけ無駄だな。

本当は私の手で退治してやりたかったが、見ての通り、もう戦いからは退いた身だ。若い君に任せるしかなかったんだ…情けない大人ですまない、許してくれ、こんな私達を…奴に勝てるのは、勇者の能力を持つ君しかいなかったんだ。


……昔話をしてもいいかな?君には、話しておくべきだと思うんだ。

そう、知っての通り、私は君のお父さんと、仲間達と一緒に魔王を倒しに行ったんだ。


勇「待ってたぜこの時をよぉ!俺様が勇者に選ばれる記念すべき1日を!今日は国民の祝日になるぜ!!」


あいつは国の誰よりも強く、勇敢で、そして愛される奴だった。


勇「大丈夫か!無理はするな、後は俺の能力で片付けてやる!」


そう、そして君と同じ能力を持っていた。まだ言っていなかったかな?君の勇者の力は、お父さんから受け継いだものだったんだ。


あいつは本当に強かった。

能力を使って体を強化したり、傷を治したり、常識では考えられない魔法が使えたり…まさに選ばれし者の力としか言いようがなかった。


勇「…大丈夫、ちょっと疲れただけだ…鼻血?ああ、いいよこんなもん拭いとけば」


だが、世の中そう都合よく出来てはいなくてな。あいつは能力を使う度に、その代償で体が蝕まれていったんだ。


勇「…うるせえな……頭痛えんだから大声出すなよ…あ?知らねえよ!二日酔いか何かだろ!」


あいつも異変には気付いていたはずだ、だがそれでも戦い続けた。あの能力を…使い続けた。

やがて、あいつに起こった異変は、単にダメージを受けるだけには留まらなくなっていった。


勇「クソ!死ね!死ね!騙しやがって…死ねえ!!…止めるな!魔物を倒しているだけだ!コイツが中々しぶとくて……なんだよ、離せ!何故魔物に味方をする!お前らも本当は魔物だったのか!?」


ある日、あいつは共に旅立った仲間の一人を滅多刺しにして殺していたんだ。

私達は慌てて止めたよ、この顔の傷も、その時つけられた。

そして、あいつに殺された仲間は魔物でも何でもなかった。奇妙だろ?だがあいつの言うことは間違いないってみんな信じていたんだ。

だが、この日を境に、あいつは明らかにおかしくなっていたんだ。


勇「みんな!悲しんでいる暇はない!魔物に殺されたアイツの為にも、俺達で仇を討つんだ!魔王は待ってはくれないぞ!…なぜそんな目で俺を見るんだ…お前、まさか魔王の手先なんじゃないだろうな!?」


驚いたろう?あいつは自分が仲間を殺したことを忘れていたんだ。それどころか自分ではなく魔物に殺されたと思い込んでいた。

流石にみんなで確信した。あいつの被害妄想で俺達の仲間は無意味に殺されたんだと。


疑いのない目で死んだ仲間の仇を取ろうと言い出したあいつの目は、私には正直…魔物に見えたよ。

おまけに最悪なことに、それは比喩ではなく、本当のことになった。


勇「うぐあああ痛え!痛え痛え痛えぇッ!!俺の…俺の目があああ!!」


次に能力を使った瞬間、あいつの右目が醜く変形した。能力の代償は…明らかに最初よりも大きくなっていたんだ。


流石に、私達はあいつに戦いをやめさせることにした。ははは…アレは壮絶だったなあ…魔物と戦うより手を焼いたよ。

中々言うことを聞いてくれないあいつを黙らせたのは、仲間の一人の魔法使い…君のお母さんだった。

彼女、その場で初めてあいつの子供…君を身篭っていると言ったんだ、すごいだろ?

私達は空いた口が塞がらなかったよ…二人がそんな関係だったとは誰も知らなかったからね。


流石のあいつも折れて、二人は旅から降りた。

彼らを安全な村に残し、私は残った仲間と戦いを続けた。

だが、勇者なしでは中々思うようには進めなかった。敵から負う怪我も増えたし、死んだ奴もいた。


それでも、あいつを引き戻すわけにはいかなかった…あいつが壊れたのは、情けない私達の責任でもあった。だからこそ、誰もあいつのことは口に出さず、必死で戦い抜いたが…凡人だけではついに限界を迎えてしまった。


魔王が送り込んだ竜との戦いで、全ての武器も体力も尽き、私達は遂に死ぬ覚悟をした。だが、その時だった。


勇「みんな、待たせたな!まだ生きてるか!?後は俺に任せろ!!」


突然あいつが帰ってきたんだ。その時にはもう君は生まれていたかな…君のお母さんを安全な村に残し、あいつだけが帰ってきた。

そして、能力を使ってあっという間に竜を倒してしまった。


しかし、私達は助かった喜びよりも、あいつへの恐怖心が蘇った…あいつの右目は崩れたままだったしな。だが、そんな恐怖心も次のあいつの行動ですぐに払拭されることになった。


勇「すまなかった!俺が未熟なせいで…能力を上手く使えずに…みんなにはひどい迷惑を…!」


あいつが私達の前で頭を地につけて深く詫びたんだ…目を疑ったよ。これも能力の代償でおかしくなってるんじゃないかとさえ思った。

だけど、その後も旅をする中で、あいつは何度も能力を使ったが、再びあいつが傷を負うことも、狂い出すこともなかった。


勇「魔王…完全に勇者として覚醒したこの俺には勝てないぜ!…みんなは下がっていてくれ、コイツとはサシで決着をつけなくちゃ気が済まない!!」


そうして、あいつはまさか一人で魔王を倒してしまったんだ。

あの戦いは本当にすごかったよ…能力を以前までは考えられない程に連続で使用し、魔王は手も足も出せないまま決着が着いた。


私達の旅の終わりは呆気なかった。あいつの強さに妬ましさすら感じられない程に…勇者の力ってやつは強大なものだったよ。


……まあ、ここまでが君のお父さんの武勇伝になるわけだが、この旅にはまだ続きがある。おそらく…きっと話すべきではないのかもしれない。だけど、すまない…最後まで聞いてほしい。


勇「何だこれは…何故彼女がいる村が荒らされている!魔王は倒したはずだ!!」


妻と息子に会う為、あいつと私は君がいた村に足を運んだんだが、その村は何者かに荒らされた後でな…ひどいものだったよ。村人達の死体の山…あいつは我を忘れてその山を掻き漁った…君達を見つける為にね。


そんな中、醜い呻き声を上げながら見たこともない魔物が襲ってきたんだ。


その魔物が村を荒らした犯人だと確信したあいつは、怒りに任せて能力を発動し、その魔物をバラバラにした。一瞬だったよ…だけどその瞬間、再びあいつが苦しみ出したんだ。


勇「うぅっ…ぐおああああ…!!何だ…俺の体が……!?痛い!痛い痛い!!…ぎやあああああ!!」


まるで今まで溜めたツケが回ってきたかのように、一気に能力の代償があいつの身を蝕んだ…その時の姿は…今倒したばかりの魔物によく似ていたな…。


勇者息子「ぐぅ…アアァ……フシュゥゥ………」


生き残った村の人から聞いたんだ。君のお母さん、普段から体調を悪くしながら、ある日突然言動がおかしくなって、徐々に口が利ける状態じゃなくなったらしいよ。

本当によく頑張ったんだな…魔法で夫の痛みを引き受けながら…君だけは守り抜いた。


君達親子は本当に…よく似てしまったな。


勇者息子「ゥゥゥゥ…ウガアアア!!!」


君のおかげでお父さんもようやく解放されたんだ…すまなかった、彼を楽にしてやれるのは…同じ力を持つ息子の君だけだったんだ。


勇者息子「アガアアアア!!グガギギギゲゲゲゲェェ!!!」


こんな鉄格子を挟みながらで失礼した、私一人では抱えきれなかったんだ…最後まで聞いてくれてありがとう。


……本当に、情けない大人達ですまない。

2022年8月3日 作

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