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異世界転生してエルフのお姉さんにお世話になったら激重感情抱かれてた  作者: 火海坂猫
二章 不純愛編

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十八話 現実を真正面から見てはいけない

「それじゃあ今日はこんなものにしておきましょうか」


 あれからしばらくしてマナカがそう告げた…………少し僕は疲労気味だ、精神的に。なにせマナカは次から次へとよくそんなことを思いつくものだという罵倒を僕に言わせたのだ。


 最初は彼女が言った通りに相手をけなさないような内容のものだったけれど、後半はあんまり関係なくなっていた気がする。


「とりあえず色々言わせてみたけど、効果はあった?」

「無い、ということは流石に無い」


 直接マナカが本人に尋ねるとタカナは憮然ぶぜんとした表情を浮かべる。


「しかし彼に対して沸き立つ感情に変化があったかと問われれば無い。お前が彼に言わせていたのはわかっているのだし、ただただその言葉に対してショックだっただけだな」

「むう、最初だしその方が負担を抑えられてちょうどいいと思ったんだけど…………そういうずれがあっちゃったか」

「負担は抑えられていたと思うがな…………お前の指示で言わされているという前提がなかったらもっとショックは大きかっただろう」

「あの子みたいに?」

「そうだな」


 二人は隣で泣きつかれて寝てしまっているアリサを見やる。アリサにも僕はタカナと並行して罵倒をぶつけていた。もちろん彼女だってそれがマナカの言わせているものだという認識はしていたはずだけど、もしかしたら本当はそれが僕の本心かもしれないという想像からの不安に押し潰されてしまったらしい。


 一応最初と同じように宥めたのだけど今度はあまり効果がなかった…………二人のその差は多分人生経験の差の大きさだろう。


「ちなみになにが言われて一番ショックが大きかった?」


 しかし一瞥いちべつで切り捨ててマナカは話題を戻した…………仮にも弟子なのに薄情だ。


「人に弱点を曝け出せというようなことを平然と聞くな」

「仕方ないでしょ、必要なんだから」


 それを知ればタカナの嫌がる傾向が把握できる…………つまりは効率よく彼女の好感度を下げる方向性も見いだせるということなのだろう。


「ショタコンの変態、だ」

「ああそれ」


 それはタカナの恋人がまだ年若い転生者である事実を突いた罵倒だった。もちろん年若いといっても転生者なのだから若いのは見た目だけで精神年齢は別なのだろう。 


 しかしこの世界ではわからないが前世の倫理観だとやはり見た目が若いと駄目なのではと思える…………まあ詳しく事情を聞いたわけではないので、タカナがその彼氏のどこに惹かれたかはわからないのだけれど。


「やっぱり気にしていたわけ?」

「当然だろう」


 タカナは変わらず憮然とした表情だ。


「でもまあ煽りはしたけど、相手は転生者なわけだし前世含めた年齢の合計的には年上だって言ってなかった?」

「それはそうだが見た目はやはりまだ小さな少年だからな」


 見た目の印象というのはやはり大きい。どれだけ理屈を並べてもその印象に引っ張られてしまうのだろう。


「連合本部内でも私を奇異の目で見るものは多かった」

「見るだけ、でしょ」

「私に文句を言えるような人間はあの場にいないからな。それに年齢差の婚姻自体は貴族連中では珍しいものではない」

「なら問題ないじゃない」

「私は貴族ではないし、貴族は家同士の繋がりを強めるために婚姻関係を結ぶだけで恋愛ではなく契約の関係のようなものだからな…………相手が問題ない年齢になるまで手を出すことはない」

「待ちなさい」


 流石に聞き流せなかったのかマナカが止める。


「手を、出したの?」

「…………やってはいない」

「最後の一線は超えてないけど手前まではやってるって聞こえたんだけど」


 意訳するならそういうことになる。


「相手は肉体年齢的には子供なのよね?」

「そうだ」

「それなのに自重しなかったわけ?」

「自重はした!」


 だから最後の一線は守ったのだろうけど、常識的に考えるならそのラインはもっと手前に引くべきだっただろう。


「しょうがないじゃないか! イチャイチャしたかったんだから!」

「イチャイチャするにしても時と場所を選びなさいよ!」


 多分タカナは一目のあるところで彼氏とイチャついていたのだろう…………それでは奇異の目で見られる事にもなるだろう。


「我慢できなかったんだ!」

「我慢しなさい!」


 どうしよう、真面目な人かと思っていたが実はタカナもずいぶんと愉快な人らしい。


「…………お前の言う事はもっともだ」


 しかし少し間をおいてタカナは平静さを取り戻したように表情を改める。


「前世を合わせた年齢を言い訳にしていたが、やはり客観的に見て私と彼の関係は良いものではなかったように思う」

「その通りだとは思うけど、急に冷静にならないでよ」


 感情の急変というのはそれが上と下のどちらに動いたものでも警戒してしまう。



「冷静になるように現実を客観視させたのはお前だろう」

「それはそうだけど…………」

「とにかく、だ」


 何かを決意するようにタカナがマナカを見る。


「冷静になれば私と彼との関係は不適切だったように思う…………そう考えると今のこの胸の内の感情は否定するべきものでもないように思えて来た」

「「え」」


 僕とマナカが思わず口を空ける。


「いやいやいやいや、問題よ。大問題よ!」


 慌ててマナカが叫ぶ。


「なぜだ? 客観的に見て問題のある関係を解消して素直に胸の内にある感情に従うだけのことだろうに」


 確かにその方が問題なくすっきりするかもしれないが…………それは僕らにとっては大いに困る話だ。


「アキはもう私がいるのよ!」


 マナカだけではなくノワールさんやアリサにイリーナもいるのだけど…………焦ってマナカも僕を独占したいという本音が出たのだろうか。


「一人増えるだけだろう!」

「大問題よ!」


 とにかくマナカは拒否の姿勢を向ける。


「色々とにかく問題だから! 今日はここまで! 帰るわよ!」


 椅子に座ったままのタカナをマナカは担ぎ上げ、僕を見る。


「後は任せたわ!」

「え、うん」

「おい、私はまだ…………」

「いいから行くわよ!」


 全てを誤魔化すようにマナカはタカナを担いで町の方へと走って行く。


「…………」


 その背中を見送りながら、僕はため息を吐いた。


 とりあえず、アリサを解放して家に帰ろう。


 お読み頂きありがとうございます。

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