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異世界転生してエルフのお姉さんにお世話になったら激重感情抱かれてた  作者: 火海坂猫
二章 不純愛編

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四話 誤魔化せない相手だから誤魔化せない

「旦那様がお呼びです、あなたへのお客人が参られたと」


 動きがあったのは私が町長から屋敷への滞在許可を貰って二日目のことだった。


「その客人は私の知っている相手かしら?」

「申し訳ございません。私にはわかりかねます」


 尋ねると使用人の女性は頭を下げてそう答えた。やや年配の彼女はこの街では数少ないアキに面識のある女性だという…………つまりアキが訪ねて来たわけではないのだ。


「訪ねてきたのは女?」

「はい、その通りです」

「わかったわ、ありがとう。すぐに行くと伝えて」

「承知いたしました」


 使用人の女性は頭を下げて去っていく…………ほぼほぼ間違いなく訪ねてきたのは私の友人であるタカナだろう。アキ達を除けばこの島で私を訪ねてくる人間なんていないのだから他に思い当たらない。


「…………予想の何倍も早かったわね」


 早くても一週間はかかると私は推測していた。タカナとて軽々に動ける立場ではない。上の説得に移動手段の確保を考えれば最低でもそれくらいの時間はかかると私は判断していたのだ…………よほど早い移動手段を彼女は手に入れているらしい。


「とりあえず、待たせるとまた怒らせるわね」


 私は息を吐いてすぐに部屋を出た。


                ◇


「久しぶりね」


 屋敷の応接室で待っていた彼女に私は気まずげに声をかけた。町長の応対を受けていたからかマナカの表情は柔らかい…………しかし得も知れぬ重圧感のようなものがあるのを私は感じ取っていた。丁寧に編まれた二つの三つ編みに眼鏡。これが学校であれば委員長を想起させる彼女の容貌はその内面も表している…………真面目だし、頑固だ。


「久しぶり…………そうだね、久しぶりだ」


 答える彼女のその表情は、そんな期間を連絡なしでいたのだと私を責めているようだった。


「私がいては話しにくいこともあるでしょうから、私はこれで」

「ええ、すみませんが場所をお借りします」

「お気になさらず。終わりましたら使用人を呼んで頂ければ」

「そうさせて頂きます」


 面倒ごとに巻き込まれるのはごめんとばかりに町長さんはこの場を辞する。まさか緩衝材として残って欲しいとは私も言えないのでそれを見送るしかなかった。


「座りたまえよ」

「…………座るわよ」


 促されて私はタカナの対面のソファへと腰を下ろす。


「で?」


 こちらから話すことを促すようにタカナが私を見る。


「まず連絡が遅れたこととその連絡が途中で途切れたことを謝らせて…………ごめんなさい」

「受け入れよう」


 鷹揚おうようにタカナは頷く。


「だがもちろんその説明はしてくれるのだろうね? 流石に私も念話が途中で途切れたことには焦ったよ…………それは私がこの場にいることで理解してくれてると思う」

「それは本当に悪かったと思っているわ」


 不可抗力とはいえそれはそのまま大騒ぎになっていてもおかしくない事態だった。それを恐らくは自分だけに留めて、しかも単身でこの辺境までほとんどすぐに駆け付けてくれたのだから私としては頭が下がる思いだった。


「それで原因は?」

「子供が魔力の糸にじゃれついちゃって」

「…………それが事実なのはわかるが説明が足りないね」


 いきなりこんな言い訳を聞かされればつまらない冗談と思うところだけど、タカナは私が事実を言っていると理解したうえで適切な突っ込みを入れてくる…………だからこそ彼女に嘘は吐けないのだ。


「実は有望な子供を見つけて弟子にしたのよ」

「ほう、念話用の魔力の糸が見えるのならそれは有望どころのレベルじゃないね」

「それがそれは弟子にしたのとはまた別の子供なの」

「そうなのかい?」


 私の会話の意図が掴めないようにタカナが首を捻る。


「まあ、なんというか…………弟子にしたのも子供なんだけどそっちはもっと子供なのよ。それこそ弟子に取ろうとするにははばかるくらい」


 嘘ではない。イリーナは生まれたて子供のような相手でありとても弟子にできるような精神年齢ではないのだ…………もちろん一番の問題は魔族であるという点なのだが、それに関しては言う必要はない。


「でも、だからって放置しておくのは惜しいでしょう?」

「それはその通りだね」


 タカナは私の言わんとしていることを理解したように頷く。


「つまり弟子の育成を名目にこの島に滞在してその子を見守りたいと」

「もちろん必要があれば本部には顔も出すつもりよ」


 当然国家連合だって私が弟子をとったというならその弟子の実力を直接確認したくなるだろう。最低でも一度はアリサを連れて島を出る必要がある。


「恐らくだがその言い訳で通るだろう…………念話でも言ったが国家連合は当面の間は君を休ませてあげたいと考えている。そのついでに有用な戦力が育つのなら文句は言うまい」


 タカナの話では私は精神的に心配されていたらしく、今回の有用な戦力を見つけるための探索も療養旅行として見られていたらしい。そのついでで本当に戦力が増えるのならそれは歓迎されることだろう。


「ただもちろんそう報告する以上は本当に戦力となる人材でないといけないが」

「だから一緒に顔は出させるってば」

「それならこれから私に会わせてくれても問題ないな?」

「…………もちろんよ」


 不安はあるがアリサであればタカナに会わせても問題はない。


「魔力の糸にじゃれついた有望株にも会わせてくれるんだろう?」

「そっちは駄目よ」


 私は首を振る。流石にイリーナに会わせるのは問題があり過ぎる。


「なぜだい?」

「…………人見知りなのよ、その子」


 我ながら下手過ぎる言い訳だと思った。


「そうか、人見知りならしょうがないな」

「そうよね、しょうがないわよね!」

「…………なんてでも私が言うと思ったのかい?」


 一瞬期待した私を批難するようにタカナが厳しい視線を向ける。


「茶番はこれくらいでいいだろう…………いい加減隠していることを話したまえよ」

「…………わかったわよ」


 私は諦めたように頷く。元々念話の時点ではかなりの部分まで明かすつもりに私はなっていたのだ。それが一旦途切れたことで再度最低限で誤魔化せないかと試してみたけれど、やはりタカナには通じなかったらしい。


「念話でも言いかけたけど、かなり荒唐無稽な話よ?」

「問題ない。私はそれを正しいか正確に判断できる…………それは君もよく知っていることだろう?」

「そうね」


 だからこそタカナを私たちは魔王討伐には加えず、あえて本部へと残したのだ。彼女のその能力を失うわけにはいかないがゆえに。


「それならまあ正確に、私の話が正しいかどうか判断してもらうわ」


 私ですら、第三者として聞いたとしても信じられないような話を。


 お読み頂きありがとうございます。

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