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異世界転生してエルフのお姉さんにお世話になったら激重感情抱かれてた  作者: 火海坂猫
二章 不純愛編

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二話 確実にやって来るであろう騒動の種

「困ったことになったわ」


 念話を終えて戻って来たマナカは開口一番にそう告げた。


「えっと、なにがあったの?」

「なにがあった…………というか、念話が途中で途切れたのよ」

「…………それが何か不味いの?」


 いまいち僕にはピンと来ない話だった。詳しく説明されていないので想像でしかないけれど、念話というのはつまるところ遠くの人と会話が出来るものだろう。前世での電話のようなものと思えばそれが途切れても珍しい話ではないように思う。


「電話の相手は本土にいる私の友人だったんだけど…………ここまで離れていると一度途切れた念話を繋ぎ直すことは難しいのよ」


 そう言ってマナカは念話が具体的にどういうものであるかを僕に説明した。電話は電話でも魔力の糸で作られた糸電話。だから糸はあらかじめ繋いでおく必要があって、遠距離になればなるほどそれが切れた時にリカバリーも効かなくなると。


「それがいきなり切れたってこと?」

「そうなるわね」


 頷くマナカの表情は不可解そうだった。糸といっても魔力の糸で物理的に存在するものではない。だから物理的な障害や環境で切れるようなことはほとんどなく、外部から狙って切られでもしない限り途切れないそうだ。

 そしてそれを狙うにしても魔力の糸は存在自体もほぼ感じ取れない程度にはか細いものであるらしい…………考えてみればイリーナとの戦闘のさなかでもそれは切られなかったわけなのだ。


「ノワールが何かしたわけじゃないわよね?」


 この場で唯一そんなことが可能な実力持つ相手へとマナカが疑念を向ける。


「お姉さんがそんなことをする理由は、ないわよ?」

「単純に私への嫌がらせにはなるでしょ」

「そんなことは、しないわね」


 ふふふ、と微笑むその表情に嘘はないように僕には見えた。実際そんなことをしてもマナカへの嫌がらせにしかならないし、そんな意味もない嫌がらせは僕への印象悪くするだけでノワールさんにメリットはない。


「でもその糸があの子たちの部屋で切れたのは、わかるわよ?」

「え」


 その視線はアリサとイリーナが戻って行った二人の部屋へと向けられていた。


「あれ、どうかしたの?」


 ちょうどそのタイミングでアリサが着替えを済ませたイリーナを連れて戻って来る。


「あんた達…………」

「あのさ、二人の部屋でなにかおかしなことはなかった?」


 腹の座ったマナカの声に僕は先んじて尋ねる。まだ二人が悪いと決まったわけではないのだから、せめて穏便に話を聞きだすべきだと思ったのだ。


「おかしなこと? そういえばイリーナが何かにじゃれてたけど」

「何かって?」

「なにもないところというか、急に宙をひっかくみたいにしてたの…………しばらくやったら気が済んだみたいだったけど」


 それだ。多分だけどマナカに繋がった魔力の糸は二人の部屋を通っていたのだろう。平常時は気にならなかったそれに、念話が開始されたことで何かしら変化を感じたのかイリーナがじゃれついた…………そして切れたのだ。

 魔力の糸はほぼ感じ取れないものと先ほど聞いたばかりではあるけれど、状況を考えると他にないだろう。


 今のイリーナは無垢で余計な雑念が入らない状態だ。野生の勘とでもいうべきものが働いたのかもしれない。


「それがどうかした?」

「念話の糸がそれで切れちゃったみたいでね」


 僕はアリサに経緯を説明する。


「えっと…………それは流石にアリサ悪くないよね?」

「流石に責めはしないわよ」


 息を吐いてマナカが手の平を横に振る。


「確かに私はその子の監督をあんたに命じたけど、自分でも感知できないものをどうこうされるのを止めるのは流石に無理だわ」


 それはそうだ。アリサ自身に魔力の糸が感知出来ていたならともかく、そうではないのだ。そもそも魔力の糸それ自体が無秩序に放置されていたのが原因ともいえるわけで…………それでアリサを責めるのはこくだろう。


「ただ事実として報告の前に念話が切れてしまったのが問題なのよね…………私の生存報告は出来たけど事情をほとんど話せていないのよ」

「つまり…………なにかマナカの身に起こったと思われてる?」

「そうなるわ」


 そしてその誤解を晴らそうにも念話は再度繋げない。


「そうすると、どうなるの?」

「私はこれでも結構な重要人物なのよね」


 そうなのだ、マナカは本来こんな辺境の孤島にいていいような立場ではない。国家連合にとっては英雄でありその重鎮だ。


「ただ念話の相手は私の友人だったんだけど、聞けた限りでは国家連合は私の安全さえ確認できているなら当分は自由にさせてくれる方針みたいなのよね」

「ええとつまり、国家連合の軍勢が捜索にやってきたりとかそういうことはない?」

「その辺りはうまいことやってくれるはずよ」


 相手は良い友人ということなのだろう。その口調には信頼があった。


「ただ」


 マナカが続ける…………それで済むのなら大変なことになったとは最初に言わないだろう。


「本人が多分確認に来ると思うのよ」


 いきなり大ごとにはしないが、事実確認は必要だ…………ましてや友人の安否であれば確認したくなるのは当然だろう。


「元々ある程度事情は説明するつもりだったけど…………流石に直接来られると不都合なものが多すぎるのよね」


 マナカは僕とイリーナとノワールさんを順々に見やる。僕は他の異性と接触することにリスクがあるしイリーナは島を襲撃した魔族で…………ノワールさんも存在自体が規格外というかその素性を知られることは好ましくない。


「来られないようにしちゃえばいいんじゃないの?」


 そこに気楽な声でアリサが言う。


「私の友人なんだけど」

「そんな意味じゃなくて…………この島に辿り着けないようにするとか」


 答えてちらりとアリサはノワールさんを見る。確かにノワールさんであればそういうことは簡単にできるだろう。


「それをやると本腰入れて捜索隊が来るわ」


 そうなのだ。一旦は時間が稼げても状況はより悪化する。


「ええと、そもそもマナカの友達はここまで来れるの?」


 ふと根本的な疑問が僕に浮かぶ。この楽園と呼ばれる島は結構な辺境だ。正確な場所も知られていないしまともに辿り着くには過酷すぎる環境だ…………マナカのように周囲の環境を気にせず海を歩いてくるなんて荒業でもない限り容易に辿り着けない。


「間違いなく辿り着けるでしょうね」


 しかしその点に関してマナカの信頼は揺らぎないようだった。


「だから、考えるべきはあの子が辿り着いてからのことなのよ」

「それは…………マナカがどうにかするしかないんじゃ?」


 そもそもこの場でそのマナカの友人に顔を合わせていいのはアリサくらいなのだ。


「後はもう…………ノワールさんに頼むくらいしか」


 どうにかして欲しいと言えばどうにかしてくれそうではある…………が、どうなるかはわからない。ちらりと視線を送るとノワールさんは柔和に微笑んで返した。それはいざとなればどうにでもしてあげるという意味だろうけど、そこにマナカの友人への配慮があるかはやはりわからない。


「そうね、私がなんとかするわ」


 流石に友人を危険には晒せないからか、諦めたようにマナカはそう口にした。


 お読み頂きありがとうございます。

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