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異世界転生してエルフのお姉さんにお世話になったら激重感情抱かれてた  作者: 火海坂猫
一章 純愛編

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エピローグ 終わりは次への始まり

「とりあえず予定通りには収まったわよ」


 町での後始末を頼んだマナカは翌日の朝にアリサと一緒にやって来た。彼女によると当初の予定通り魔族の襲撃とその排除という話で町民たちは納得してくれたようだ。

 死体がないこともやはり最初の爆発の大きさが印象に残っており、それで疑う事無く信じてくれたらしい。そのあとマナカは集会所の倉庫や爆発の衝撃で壊れた家屋の一部などを手早く修復し、一晩町長さんの屋敷で休んでからやって来たということのようだ。


「あいつの様子は…………確認するまでもないようね」

「…………あはは」

「あー! ずるーい!」


 床に座り込んで僕の膝の上に頭を寝かせるイリーナを見つけてアリサが叫ぶ。


「私もするー!」

「やー!」


 同じように僕の膝に頭を乗せようとするアリサにイリーナが抵抗する。


「ああこら、二人とも仲良くして!」


 アリサも子供だが今のイリーナはもっと子供だ。どちらもその欲求に我慢が聞かない。聞かないのだろうけど聞いて! 僕の膝を奪い合わないで! 大人しくして!


「で、どうなの? 育てられそう?」

「…………見ての通りだよ」


 イリーナもアリサも僕の膝の上を奪い合っている。幸いというか二人とも互いをどかそうとしているだけで相手を傷つけるような方法をとっていないことだけは救いだ。

 子供は残酷というけれど、そういう点では二人の性根は大丈夫そうだった。


「ほら、仲良くね」


 仕方なく僕は二人の頭に手を置いて両膝にそれぞれ頭を置いた。二人は狭くて不満そうではあるが、優しく頭を撫でてあげると大人しくなった。


「結局その子はアキが面倒見るのよね?」

「僕と離れると泣いちゃうからね」


 中身は子供でもイリーナの体は成熟した大人だ。僕に全て責任があるとはいえ流石に度y居には躊躇いがあったのだけど、僕が見えないところに移動するとイリーナはものすごく泣くのだ。それもものすごく悲しそうになくの出罪悪感を抉られる。


「それであんたもここにいるわけね」

「そう、なるわね」


 僕らのやり取りを横で見守っていたノワールさんがマナカに頷く。


「アキ君では少し恥ずかしいお世話も、あるのよね」


 そうなのだ、イリーナは体が大人だけど心は子供。もちろん子供といっても赤ん坊ほど幼くはないようだけどアリサよりもずいぶん子供で言葉もつたない。こちらの言葉をある程度は理解しているような仕草はあるけど、日常に必要な動作も一から覚え直しているところで…………つまるところ一人じゃまだ着替えなんかもできていない。


 だからそういうお世話はノワールさんに頼むしかないのだ。


「でもノワールだってずっとこの家にいるわけにはいかないんじゃないの?」


 ここは僕の家でノワールさんの家は別にある。確かにずっとこちらにいるわけにはいかないだろうし、そもそも寝床だって僕の分しかない。よくよく考えてみればイリーナの分の寝床だって作らないといけなかった…………昨日みたいに僕のベッドで毎日寝るわけにもいかないだろう。


「だから、ね。お引越ししようかと、思うのね?」

「え、初耳なんですけど」

「今、言ったかしら」


 にこにことノワールさんも答える。


「え、でも引っ越すってこの家はそんなに広くはないですし…………元のノワールさんの家はどうするんですか?」

「だから、家ごとお引越ししようと、思うのね?」

「え、家ごとって」

「アキ君の家とくっつけてしまえば、全部解決よね?」

「…………」


 滅茶苦茶言っている気がするけれど、考えてみればノワールさんの家も僕の家も彼女の魔法で作られたものだ。やろうと思えばできるのだろう。


「私の部屋はあるのよね?」

「…………仕方、ないわね」


 尋ねるマナカに渋々といた様子でノワールさんが請け負う。


「えっ、ずるい! アリサも一緒に住む!」

「却下…………と言いたいけど仕方ないわね」


 アリサは僕に会うためにマナカの直弟子ということになっている。マナカがここに住むつもりであればアリサもここに住まなくてはその建前が無くなってしまう。やむを得ないというようにマナカは頷いた。


「あの、僕の意見は?」

「アキ君は嫌なの、かしら?」

「嫌じゃないでしょ?」

「アリサと一緒に住みたいよね!」

「うー!」


 拒否したかったわけじゃない、わけじゃないんだけど…………僕に拒否する権利はなさそうだった。


「…………まあ、いいか」


 僕がこの世界で生まれ直した十年前であれば嫌だったかもしれない。


 でも今は、この騒がしさを少し心地よく感じていた。


                ◇


「イリーナとの接続が断たれた…………」


 考える。魔王たる余は考える。その理由を考える。今や貴重な戦力であったはずの魔族の一人を失ってしまったその理由を。


「確か、マナカといったか」


 余を討伐に来た転生者共の生き残りの一人。捨て置けと言ったそれをイリーナは殺しに向かったのだ。それは現状の方針に反した行動ではあるが最悪逃げかえることは出来ようと見逃していた…………それにマナカが向かったという場所が気になったのも事実だ。


 余の鎮座する地よりも遥か遠い地。長くこの世界の生物を滅ぼさんとして来た我らが情けなくも未だに踏み入ることのできていない地だ。そこに人種のこれまでの抵抗の鍵があるのやもと期待してしまったのだ。


「それがまさかこのような結果になるとはな」


 魔王である余は全ての魔族と繋がりがあるがその行動を全て把握できるわけではない。しかしその感情や意思は伝わってくる…………あの時イリーナからはなぜか宿敵である転生者共を殺したくないという意思が伝わってきた。理由はわからぬがそのことを強く拒絶する感情だった。


 それは魔族であればありえない感情であるがゆえに余は洗脳系の力を疑った。だから余は魔王として命令を下したのだ。転生者を殺せと。魔王である余の命令は魔族にとって絶対の命令となる。ゆえにいかなる洗脳の力であっても余の命令が優先されるのだ。


「しかしイリーナとの繋がりは途絶えた」


 世の命令に従い死んだと考えるのが自然ではある。余の命令は絶対ではあるがそれゆえに融通が利かぬ。転生者を殺せと命令を下せば殺すことに固執して分が悪いから逃げるという選択肢も失われてしまう。

 ゆえに命令には常に選択肢を残す余地を残さねばならぬのだが、あの時は洗脳を疑ったせいでそんな余地を残す余裕がなかった。


「確かめねば、ならぬな」


 死んでいるなら残念だがそれですむが、死んでいないなら新たな脅威がそこに存在することになる。


「ふむ、しかしなんだ?」


 余は胸中の違和感を覚える。イリーナが向かったその地、その場所のことを考えると心中が騒めくのだ。一瞬イリーナとの繋がりを通じて余にもその洗脳の力が伝わったのかとも考えたが、そのような力の残滓は何も感じない。


「気のせいか」


 胸のあたりの不思議な温かみを、余は無視することにした。




 とりあえずこれで第一部完となります。続きはぼちぼちと書いておりますので年明け以降に投稿出来たらと思っております。ただ流石に毎日投稿ではなく週二回くらいになりそうです。


 お読み頂きありがとうございます。

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