エンジェル・リング発動!
仁はドリップの姿を認めると即座にラウムに進言した。
「奴の強さは異常です。アンブラフォールが
機能している内に撤退すべきです」
「ここで撤退してしまえば、
天界は……またSSRガチャを無限に引き続けるぞ!」
ラウムは声を荒げ、配下の仁へ怒鳴りつけた。
怒りは空間を震わせ、黒い瘴気が地を這う。
しかし仁は一歩も引かず、冷静に答える。
「……無限ではございません、ラウム様」
その言葉に、ラウムの赤い瞳が細められた。
「事実――佐和子を筆頭とした“SSR天使”たちは、召喚を繰り返す度に年齢が低下し、
志津香など肉体の最盛期を迎える前に召喚されている」
「なに……?」
「魂の選別が追いついていないのでしょう。
あのような高位存在を支え得る魂が、天界側でも枯渇しつつあるのです。
次に来るのは、志津香以下の“幼き子”か、あるいは――召喚そのものが不可能かと」
静寂が満ちる。
ラウムはやがて、小さく舌打ちした。
「……ふん。天界も、追い詰められているということか」
だが、ラウムには決定的な制約があった。
――アンブラフォールに他の大悪魔を呼び寄せるには、
自らの瘴気のみでその異空間を安定させ、
天使を誘き寄せる「主宰権」を示さねばならない。
それが、盟約の条件だった。
つまり、ラウム一人の力でこの地獄空間を創り出し、維持せよというのだ。
その為、ラウムの瘴気はその大半を失っている。
過去の戦での負傷、術式の代償、今回は他の大悪魔に戦闘を任せ、
ひたすら止めの一撃を加える為の魔力圧縮を繰り返していたのだ。
二人が会話している間に恵は意識を取り戻し、ユキが応急処置を行っていた。
「上手く傷が塞がらない。天使である貴方達はもっと影響を受けたでしょう」
夏樹はぶんぶんと首を振った。
「私達は五人揃えば無敵なんです!」
恵は、ふらつきながらも紗耶香のもとに駆け寄る。
「早く、佐和子さんのところへ!」
だが、その声に静かに応える声があった。
「その必要はないわ」
振り向くと、満身創痍の佐和子が、血に濡れた黒槍を携えながら歩み寄ってくる。
「佐和子さん!」
「ごめんね、遅くなっちゃって」
佐和子はかすかに涙を浮かべながら笑った。
「志津香は?」
「ここにいるわ」
志津香も肩を貸されながら、それでもしっかりと立っていた。
* * *
「このまま行かすかものか!」
ラウムは止めを刺す為にひたすら溜め込んでいた魔弾を解き放った。
だが、進路上の泳いでいた鯖助がびくりと身を震わせると空間が歪み、
看護師天使達の右に逸れて着弾した。圧縮された魔力が解き放たれ、
すさまじい轟音がアンブラフォールを揺らす。
「貴様、何をやっている!?」
「精霊を先行させすぎました。私の落ち度です」
仁はすぐさま膝を付いた。
敵の足並みの乱れを尻目に五人はしっかり手を繋いだ。
「さあ、行くわよ!」
夏樹の羽の生えたハンマーが輪の中心で高速回転を始めた。
「エンジェル・リング!!」
天に向かって光が駆け上がり、五人を繋ぐ巨大な光輪が現れる。
その輝きは暗いアンブラフォールをも押し返し、雷雲すら裂く。
「力が……戻ってる!」
佐和子が歓喜の声をあげた。
「私から礼は言わないわ。勝負だから」
そう口では言いながらも、佐和子も一度深々とドリップに頭を下げる。
ドリップは肩を竦め、にやりと笑った。
「全員転移するわ!」
五人を中心に光の輪が拡がり、空間を構成していた
魔素の網を次々と焼き切っていく。紫の雲が破れ、空間に亀裂が走る。
その隙を突いて、ドリップは最後の仕事とばかりにグレモリーを踏み潰した。
「ぐあああっ!貴様ァ……!」口だけ残ったグレモリーが尚も叫んだ。
「お前はやり過ぎたんだ」
口笛を吹きながら、ドリップは消えゆく空間の中へと後ずさる。
転移の光が五人を包み込み、アンブラフォールごと崩壊していく――。
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