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蓮の盟約

「私達はマゼラン航路を守る為に悪魔と戦かうってこと?」


 カウンターで座っていた少女、ユキが話を戻した。


「ガウも言っていたが、5箇所の肥大化した拠点を叩くことになると思う。


 それが偶々マゼラン航路に干渉する可能性があったということだろう。


 すべてではないにしろ、だ」


 俺だって賭けの対象がマゼラン航路というのは気に食わないさ。


 ああ、愛しのマゼラン。俺が神格化された大航海時代に


 一番熱い視線を注いでくれたマゼラン。俺は今でも彼に感謝しているよ。


 航空機全盛の時代に航路とは君にお似合いの時代遅れの景品だろ。


「後ろの二人は御使いかな?」ガウは金髪の青年、ラウルとユキを


 交互に眺めながら首を傾げた。六枚の翼がゆらゆらと揺れる。


「ああ、人数制限はあるのか?」


「私の方は5名、ここにいる佐和子の他はすべて下級天使をあてましょう」


「余裕だな。お前が出ないなら、その条件でいい」


「もう、始めますか?」


「焦るなよ。時間は無限にある。太古からな」


「時間は有限です。生きている人間にとっては尚のこと」


 ガウが手を翳すと掌から青白い球体が現れ、黄緑色のオーロラが


 球体に出来たひび割れに沿って発光する。


 ガウの長髪が逆立ち、建物全体がガタガタと振動を始め、


 コーヒーカップの中の液面が細かく波を立てる。


「盟約は結ばれた。2柱のどちらの勝利でもマゼラン航路を保証。


 ただし、砂時計の神が敗れた場合、その神格位を永遠にはく奪し、


 この拠店毎地に帰さん」


「時代遅れだの散々言った割に大層な御託だな。


 俺みたいな虫けらも踏み潰さなければ枕を高くして眠れないかい」


「黙れ」


 その一言に、空間が一瞬で静まり返った。


 振動が止んだ後も、ガウの周囲には光が残り、まるで現実が書き換えられていくように、


 景色が拓けていく。


 足元に、蓮の花が一輪、音もなく開いた。白い花弁は淡い光をまとい、


 まるで時の止まった水面に浮かぶ記憶のようだった。


 目を凝らすと、店内のあちこちにも、同じ蓮の蕾がゆっくりと芽吹き始めていた。


「私に創造をさせるな」


 ガウはもはやドリップを見ず、虚空の彼方に向けて言った。


「私は恐怖を与える創造を自らに禁じている」


 佐和子そっと近づいてガウの手を下ろさせた。


「それが彼女の望みだったからだ。私は彼女が消滅するまでその約束を守るつもりだ」


「それから私は彼女の時をとめた」


――まだ私についてくるか?

――まだ殺されたくないから。


 心の底で交わされた声なき対話に、ガウは堪えきれないといったふうに肩を揺らし、


 乾いた笑いを漏らした。


「拠点を叩けなかった場合、大悪魔を活動停止に追い込むことが勝利条件。


 それも叶わない場合、与えたダメージで勝敗を決めるということでいいか?」


 ガウはレジカウンターまで瞬時に移動するとドリップに囁くように言った。


「砂時計の神ドリップよ貴殿の申し入れを認めよう」


「大天使長ガウ殿、確かに。御言葉承りました」ドリップは盟約を受け入れ、


 膝をついた。その肩越しに、なおも咲き続ける蓮の花が、


 静かに時を刻んでいた。


初回は5話投稿予定です。

ガウはここに来るまでに数千回ガチャを回しています。本来、大天使権限でSSR確率2%だったのですが、条件を付加し過ぎたせいで0.01%まで低下した為です。自業自得ですね。

演出が好きなので当たった虹色卵は割らずに四個並べています。

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