北々のペチカ
はじめまして。
nejimakiっていいます。
いきなりですが、みなさん
一杯のコーヒーはいかがですか?
それくらい、
たったそれくらいの暖かさを感じてもらえたらいいかなって。
よかったら飲んでみて...おっと、
読んでみてくださいね。
パタンカタン
このお店には秘密がある
パタンカタン
並ぶ品々は小物から、時には洋服まで
パタンカタン
それはとてもかわいらしい
パタンカタン
とても、とても。
パタンカタン
少女が織るもの作るものすべて
パタンカタン
まるで魔法を使っているようだ
カタンッ
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ちりんちりんと音を立て牛乳屋のお兄さんがポストへ
カコっと牛乳瓶を入れる音で目が覚める。
まだ日が昇らない夜明け前。
眠い眼をすこしこすり、ベットを降りると少し伸びをした。
「にゃあ」足元にいた猫が鳴く。
「おや、起こしてしまったかい?」
少女は申し訳ないと言う気持ちより先に体が動きせっせと部屋の中を動き回る。
ポムっと三面鏡に腰掛け鏡の自分に
「おはよう、今日も眠たそうだね」
と話しかけてみる。
...返事はないようだ。
サッサッサ
ざっくり髪を整える。
この程度でもかなりしっかりみえるのだよ。
「にゃあ」彼女がまた、何かを言いたげにこちらをみる。
「お、そっかそっか、まだあるかな」
たったった
くすんだキッチンの前へ立つと何やら下の棚を漁り
ガサゴソと音を立て
「まだひとかけら・・・あったあった」
取り出したのは1枚のクッキー。
「おたべ、私は忙しいからまたあとでね」
少女は彼女の目の前にそれを置いてやると待ってましたと言わんばかりに食べ始めた。
「うみゃいうんみゃい」
お?今うまいといったかな?
嬉しい限りだ。
朝の習慣を済ませ、歯磨きも終わり
カラカラカラーっとうがいをし、流す。
「これであとは・・・っと」
独り言を重ねながらクローゼットの前に立ち洋服を選ぶ。
「・・・」
これじゃない、つぎ
「・・・気分じゃない」
つぎ
「・・・ま、いっかこれにしよう」
妥協したのではない、私の服が多いから迷うのだ、と虚勢を張ることにしよう。
「ふふ」
思い出し笑いというやつだ、気持ちが悪い。
なんで笑ったかって?
なんてない、ただ彼の顔を思い出しただけだ。
昨日はあんまりに面白かったものでね。
「っと時間かな」
チリンチリーン
ガランと扉の開く音と共に若い男性の声が聞こえる
「「ペチカー!おまたせー!」」
まったく声が大きい。
まだ夜明け前だというのに。
まったく、まったく。
部屋を後にしようと鏡を通りかかる自分の顔がちらっと横目に入る。
「・・・別に嬉しくないんだから」
声の主の元へドシンドシンとわざとらしく階段を下り
「今日もきたのかい?ユールも暇人だね」
しれっとご挨拶。
ユールはむっとした顔を見せたがすぐにすまし顔。
「おはよう、ペチカ」
「おはよう、ユール」
窓ガラスから少しづつ光が入り始める。
彼女のお店に今は二人。
すこしほほを赤らめたペチカの顔。
その赤みは一段と冷える外の寒さから?
「いつものたのむよ」ユールは”いつもの”ものを彼女に注文する。
まったく、と肩を落とし軽くため息をつくペチカ
店のカウンター奥にそっと見える大きな織物をするカラクリに座り、
パタンカタンっ
昨日の続きを織りはじめた。
その音を聞きながらカウンター前の椅子に座ると、ユールはそっと目を閉じほっぺに手をついてその音に浸っていた。
パタンカタンッ
それは魔法にかかったように、心地がいい音だ。
昔ペチカに聞いたことがある。
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「すごい!これは君が作ったのかい?!」
テーブルの前に敷かれたクロスが朝日に当たる。
緻密に織られた模様はその光を浴びてより一層輝いて見えた。
「・・・っ」
普段言われ慣れない言葉に、彼女の顔が薄桃色に染まる。
僕は興奮が冷めず、俯くペチカの肩をがっと掴む
「君ってすごいや!これをあの、はた織り機でおったのかい?!」
勢いに任せついた言葉に、
少女は、んん~!っと言葉にならない顔をしたと思いきや熟れたトマトの様に、かぁぁと真っ赤になり、少し右に首を曲げる。
「まるで魔法つかいみたいだね!」
本当に彼女の織るものは繊細で美しく、まるで魔法の様だった。
その言葉にペチカはうるさい!とこの上なく照れた様子で軽く少年ユールをこついた。
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パタンカタン
「・・・ル」
ん、何だろうペチカの声が・・耳元で聞こえる気が。
「ユーール」
少し強めに言葉を発し、丁寧に織られた小さなコースターをユールの顔へ乗せた。
「・・・ペチカ?」
まだ頭が回らない。
部屋に入る日差しが陽に照らされキラキラと輝く。
「まったく。寝ていたみたいだよ、ほら出来上がり」
どうも自分の顔にのっているそれが注文の品の様だ。
「あ。うん」
あっという間だ、幼いころの夢を見ていた気もする。
「ありがとうペチカ、やっぱり君の織る物は最高にかわいいね」
素直に出た言葉に、かぁぁと真っ赤になるペチカ。
「まだ寝ぼけてるのかね!いいから早くおばあさんに渡してあげなさいな、お代はまたでいいよ」
追い出すように手をひらひらと振る。
「そんな追い払うように言わなくても・・」
素直に言葉を受け入れてもらえなかったことに、少しいじけてみせ渋々と席を立つと
「・・・また、明日もいらっしゃい」
ぷいっと壁を見ながら話しかけてくる。
可愛らしい。
「わかった、ではお代はまた明日」
「ええ、また明日」
チリンチリン
ユールが出ていくと、途端に店内はしんと静まり返る。
時刻は朝の7時といったところだろうか。
「・・・さて、開店前に朝ご飯」
そして彼女の一日が今日も始まる。
end
最後まで二人の小さな、とても小さなお話を読んでいただきありがとうございました。
私の話になりますが、文章を書くのがとても苦手で苦手で...
それでも気に入っていただける方が一人でもいたらいいなって思っています。
反応次第ではペチカたちの物語を紡いでいこうかな。
こんな調子の作者なので、ペチカは今頃
「やれやれ」と、していることでしょうね。
機会があればまたお会いしましょう。
「おい」コツンッ