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ファミリー異世界マート  作者: ハシバミの花
ようこそファミリー異世界マートへ!
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ブッコ開放

「すみませんね、本当にすみません。またの起こしを」

 臨時閉店の貼り紙だして来店客にペコペコあやまりながら、店長がドアを閉鎖する。

 それからバックヤードで電源と灯りと武器を用意する。

「バールのようなものとか本当、石動くんはすぐに実力行使しようとするんだから、困るよ」

「口だけですよ。ふつーにビビりだし本当にやったりしませんて。本人が言うんだからまちがいない」

「逆だよね! この件で本人が言うと説得力ないよね!」

「えーあるでしょーよ」

 言いながら五万円もする固そうなガンラックを開け、中から武器を取りだす。

 ちなみにキーと暗証番号のダブルロックで、解錠ナンバーは"2564"そう、ブッコロシだ。

「まず石動ゲンタくん、レザーメールと盾と剣ー」

「はーい」

 緊急時の対応として、まずは前衛と中盤から装備は渡されることになっている。

 転移即バトルとでもなった場合、まず前衛がフル活せねばならないからだ。

「つぎに僕がフルプレートと剣とエアガンね。つけるまでまってね」

「てんちょ後ろてつだう」

「ありがとう」

 店長なんかにもアップルさんはやさしい。

 俺もなにかつけてほしい。

「ありがとう、つぎに吉田アップルさーん、ブーツとガントレット」

「はーい」

 金色の防具のヒジから先とヒザから先だけがアップルさんにわたされる。

 魔法の防具で、使ったらすごい防御力を発揮するのだが、彼女はそれを攻撃にもちいる。

「で、後衛の浅生(あそう)周防くんは弓と靴」

「はーい」

 ちなみに店長のエアガンはガチの狩猟用で、周防くんの装備は命中と連写に魔法の補正つきの業物である。

 補正なくても外さんけどね、周防くん。

 現役でアーチェリー部だし。

「店長ー矢をくださーい」

「それは後! 狩猟用の矢は高いんだから、転移してからじゃないと渡せないって毎回言ってるじゃないの! 周防くんはすぐに遊んで矢をなくすんだから……ええーそれで、鬼城、鬼城寿美さん、運動神経に自信は……?」

「……あの、ゼロですすみません。運動できてたらこの年で、引きこもるようなこじれ方してないです……」

「あははー、だよねー……じゃあ後衛についてもらって、武器はこの杖で」

「杖……ですか?」

「あーうん。それとこのローブ、使っていいよ。これ着たら、魔法で敵からちょっとだけ見つかりにくくなるから」

 といって茶色くすすけたオンボロのフード付きほっかむりを出す。

「はあ、これ……洗えてます? ちょっと臭いませんか……?」

「あ、書いてある呪文に魔法が宿ってて、洗うとそれも落ちちゃうらしいんだ。悪いけどこれですませておいて」

 店長はリセッシュもいっしょに渡す。

 ロッカーには集めた装備が色々詰まっているが、その半分ぐらいは魔法によるバフつきの貴重なモノなのだ。

 ちなみに自分だけが、魔法バフの恩恵を受けていない。

 おかげで毎回小さな傷だらけ、ときに前歯を折られたり、悪いと死んだりする。

「ちなみに死んだ方というのは……」

「もちろん南さんさ!」

 自分と周防くん、アップルさんの三人が最高の笑顔でサムズアップ。

「だから、着ておいた方がいいよ。僕らみたいに重いよりは、よっぽどマシだから」

「ヘルム系は動き制限されるから転んだり振りむけなかったりして、あぶないよ。歯も折られるし」

「あわわ……わかりました」

 鬼城さんは念入りにリセッシュしてから嫌そうにローブを羽織った。

「てんちょローソクわあー?」

「ちょっちょっとまって吉田さん、えー」

 手順にさまよいながらウロウロする店長の巨体がジャマ。

「こないだアウトレットで買ったランタン使いましょうよ。あのバッテリーのやつ」

「あ、そうだ。充電済みにしてあったよね。石動くん出して」

「はいりょっかーい」

 個人ロッカーの上の非常用持ち出し袋のわきの段ボール箱を引っぱりだして、中からランタンを取りだす。

「あーすっご、ブンメーじゃん?」

「アウトレットって好日山荘っすか? 西池袋の」

「そーそー休みに店長に呼び出されてさー、それワゴンで8800円だったんさ。てかこれ充電したの一月前だけど、バッテリー生きてっかな」

 オイルランタンに微妙に寄せたデザインの、聞いたこともないメーカーの商品だ。

 製造中国、の小さいシールが貼られてて心もとない。

「ワゴンで中華ってなんか買い物失敗のフラグがギュン立ちしてんすけどね」

「まあな! いくぜ!」

 元気いっぱい電源をオンにすると、1000ルーメンの大光量がバックヤードをまぶしく照らす。

「うおっまぶし!」

「おーブンメーの光だ!」

 元引きこもりと元キャバ嬢がキャッキャする。

「残量98%。新品だとバッテリーのもちもまだまだいいなあ」

 とりあえず光量を50%にして消費をおさえる。

 店舗の天井中央の業務用エアコンの噴き出し口に、100均のS字フックを引っかけランタンぶらさげると、室内灯のできあがりだ。

「これだけだと店内に光の死角できるから、一応ロウソクも四隅に使おう」

「てっか、なんでランタン一つなんです? もっと買やいいのに」

「まだそれが使えるかわかんないだろう! それに、ロウソクがまだいっぱい残ってるんだよ!」

「せこすぎて震える」

「……あの、もしかして、異世界に行ったらこのお店、電気消えるんですか?」

「うん。クリス・ペプラーの声なくなるから一発で分かるよ」

 口にしたその瞬間ずーっとアジアの音楽シーンについてくっちゃべってたイケボがとぎれ、ついでに明かりも消えた。


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