ヴァイスヘルムのダンジョン
迷宮攻略左手の法則でゆきつもどりつしながらマッピング領域ふやしてると、鬼城さんが声をあげる。
「あれ? ここ変じゃありません?」
そこには壁があるだけ。
「変って?」
すこしもどると、壁に穴があく。
「え、うそでしょなんだこれ。キモ」
「なんかスライドドアみたいに穴空かなかった?」
「それ、みとーしのブレスレットのチカラ! みとーしのブレスレットがちかづくと、かくれたツウロがみえる!」
賢者が言う。かくし通路か。
「へー。おおほんとうだ通路ある」
「石動さんがはなれると穴が見えなくなる」
「近づくと?」
「心がひらくように穴がひらく。うわ石動さんえっろ」
俺はえろくはない。
エロいのはあやしい数珠。
「どうしよう。この穴ぬけたほうがいいよね」
「そうですね。隠してあるなら、それはなにか大事な物があるんでしょうから」
壁の穴をぬけるとすぐに、床の穴が見えた。
「えー。あやしすぎるけど、いくよね」
「行かない選択肢はないですなあ。あやしすぎるけど」
「――いきましょう!」
穴にはハシゴがついてたので、一人ずつそこをおりる。
「ダンジョンだ」
古びた地下の石づくりの通路。
「ハリポタのセットみたいだねー」
「としまえんのハリポタは地下なかったっす」
「そうなの? USJはあったよ」
「まじすか。あのブサカワメガネのトイレの花子飛んでんのかな」
「すっごいブサイクあつかいされてたけど、けっこうかわいいよねあの子」
「『嘆きのマートル』ね。二人はマニアックだなあ」
「シ! 敵です!」
ギムさんが警戒する。
前から金色のヨロイ着た人がやってくる。
「ヴァイスヘルムよ! モンスターよ! なかなかつよいよ!」
ブラウマイスがさわぐ。
敵か。
「さっきの赤いのとどっちが強いの?」
「おなじつよさ!」
「同じかー」
「じゃあニョロスキーとは?」
「ニョロスキーよりつよいよ!」
「吸血鬼より?」
「バンピアーデーモンよりはよわいよ!」
「じゃあみんな、そんなかんじで」
「りょー」
せーのでみんなでボコした。
ヴァイスヘルムは左ききで、むかって右にポジショニングする俺は剣でいっぱい切りつけられてちょっとたいへんだった。
「ほんとうに中間ぐらいの強さだったね」
「ちょっと弱めかな。でも、こいつダンジョンのボスじゃないよね」
「うん。ムゲンわきする」
いやだああ俺だけしんどいのいやだああ。
「石動さんわがまま言わないで」
「はーい」
鬼城さんにしかられた。
「ここにはカギがあるのよ! カギはとらなきゃダメなの!」
「へーなんのカギ? ブラウマイスの心のをあけるカギ?」
「イスルギてきとういうな! くどくならちゃんとしろ!」
「ごめん」
ブラウマイスにまで適当対応をしかられる。
「カギはデーモンキングのしろのカギ! ないとはいれない!」
「そっかー。それは取らんとだわ」
「とりあえず進みましょう。左手の法則で」
「りょ」
ぼくらは電車の車両ぐらいある地下道を、あてどなくすすんだ。
ダンジョンは一本道の、ながーい通路だった。
「あ、祭壇みっけ」
「あった。カギだ」
とちゅうの駅ホームぐらいある広間の祭壇で、ぼくらはカギを見つけた。
「デーモンキング城のカギ、ゲットだぜ」
「さあ、このままずっとすすんで、いちばんおくからだっしゅつよ!」
直線がおわると、、今度はえんえんらせんの通路になってて、出くわすヴァイスヘルムをそのつど倒し、どうにか出口にたどりついた。
「うわ、足元悪!」
「うわ高い! なんだこれ!」
「え、なにここ怖い。いやですう」
出てみておどろいた。
「岩山じゃん」
そこは岩山の頂上だった。




