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ホラー短編

夕暮れ迷子

作者: 真野魚尾

   『夕占惑ひ子』

 結構昔ね、今ぐらいの時間帯。街中で声をかけられたんですよ。

 童顔な、大人の女の人に。服装とか雰囲気からそう感じただけなんですけど。


 周りに人はいっぱい歩いてるのに、何で僕なんだろう、と思いましたけどね。気弱で話しかけやすそうに見えたのかな。

 何かの勧誘かな、なんて内心警戒しながら話を聞いたんです。


 でもその人、確かに口は動いているのに、何を(しゃべ)っているのかさっぱり聞き取れなかったんですよね。

 こっちも一生懸命耳を(かたむ)けるんだけど、一向に伝わってこなくて。


 困ってしまって、つい横目で周りを(うかが)ったんですけど、まるで誰も僕たちのことなんか見えてないみたいに通り過ぎてしまって。

 電車の時間も迫っているし、僕は一言謝ってその場を立ち去ったんです。


 悪いことしたかな、と思いつつ、ふと後ろを振り返ってみたんですよね。

 その女の人、ひどく根に持ったような顔つきで、僕をじっと(にら)みつけてまして。


 でも、仕方ないですよね。だって、どこへ行きたいのか聞き取れないんですから、道案内なんてしようがありませんし。




 それにしても、おかしなこともあるものですね。

 声が聞こえないのに、どうして道を尋ねられたのが分かったんでしょうね。

 初めに声をかけられたこと、僕はどうやって気付いたんでしょうね。


 ああ、すいません。多分、僕の勘違いですよね。

 あれ以来、僕が道に迷いやすくなったのも、きっと気のせいです。


 ところで、いい加減道を教えてくれませんか。

 さっきから何度も言ってるじゃないですか。

 そんなにキョロキョロしないでくださいよ。

 どうして口ごもって何も答えてくれないんですか。


 ああ、行ってしまった。

 近頃の人は不親切だなあ。

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