The Chess 番外編 あさぎさんが読んだもの
「八月の間、夜は異界の夢を見られていたのですか?」
エーデルは私室で寛ぐスターチス王に気になっていたことを尋ねた。王は楽しそうに答えた。
「ええ、そうですよ。あちらの世界の女学生は、朝から夕方まで勉強をして、夕方から楽団で音楽を奏でていました。その音楽はこちらの世界を思い出させるような良い曲ばかりでした。八月の末に演奏会があって、夜は遅くまでその準備を楽しそうにしていました。エーデルはどうでしたか?」
「あちらの私の夢を見る方は、図書館で子どもたちを集めて紙芝居をしていましたよ。白の読者を集めて集会をした時は、リーダーとなって読者たちをまとめていました」
「あちらでもロッドの夢の主に救われましたね」
「ロッドの夢の読者が王の読者と近しい人で良かったですね」
スターチス王はにこりと笑った。
「エーデルもありがとう」
「夢の中の話ですよね? ロッドの夢の読者とクイーンの読者が知り合いで良かったですよね」
スターチス王はエーデルと会話がすれ違っていても、気にせず言葉を続けた。
「私に時間魔法を掛けて夢使いの負担を減らしてくれて感謝しています」
スターチス王はそっと感謝の言葉を贈った。エーデルはベッドで腰掛ける王の隣に座って応えた。
「私は長年あなたと共に過ごしてきました。あなたの望むことや考えが分かってきています。お礼など受けなくても大丈夫ですよ」
スターチス王は静かに微笑んだ。そしてエーデルの肩を抱いて口付けをした。情を交わす二人はゆっくり夜を過ごした。