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現代に生きる魔術師  作者: はにわ
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第二話

吉と出るか凶と出るかの一か八かの選択、どうやら俺は凶を引いたみたいだ。

俺の瞳には何が映っているだろうか、自分の目が間違っていなければ今起きている現状は一対一(タイマン)の少女たちの殺し合い(喧嘩)




二人の少女は互いに得物を持ち殺し合いをしていた

白髪の少女は細剣(レイピア)を持ち、黒髪の少女はナイフを持っている

白髪少女は表情を一つも変えず得物を振るい

黒髪少女はまるで新しい玩具を貰ったときの子供の用に笑顔で白髪少女の攻撃を避けている



「あっぶなぁい!」

「避けないで」

「避けるでしょ、ふつーに!」



物陰から見ていたが、なんなんだこいつらは、白髪は無表情で俺が目でギリ追いつけた速度で細剣の突きを放ったはず。なのに、黒髪は笑顔でそれを軽々しく避けた。

あの剣圧は人が出せる技量ではない、あの細い体躯から出せる訳ないような剣圧だ、肌でひしひしとあの白髪の強さを感じる。

だが、そんな強者に対して黒髪のあいつは余裕な表情で戦っているのだ。



白髪が細剣を突き出せば、黒髪が手に持った得物で軌道をずらし避ける。

一見白髪が押しているように見えるが、戦いは五分五分と言ったところ様だ



訳が分からん。こんな戦い見たことない、まるで人外対人外を見ているような感覚だ

でも、有り得ないだろ。ここはSFやらファンタジーの世界じゃない



クソ、悪運良すぎだろ。

来たのは間違いだったな、ここは一回下がって警察呼んだ方が得策だ、

しかし、なんだよここはよ、四方八方に『灯』がドーム状浮いている、空間。

気味が悪い。



「やっと来た、遅い」

「げ」



見つかったら面倒くさい奴に見つかった、てか、がっつり目合っているしな。

どうするか、逃げて何かといちゃもん付けられたら困るしな、かといって出たところで犬死にすることになる。

人間離れした奴らにただの一般人が出てみろ、勝負にならないしあの得物だ

ナイフと言っても中々鋭いナイフだし、黒髪の彼女はあの得物の使い方に慣れているように思える



「あれ?、おっかしいな、この空間は魔術師にしか入れない空間になってるはずなのになんでおにーさんは入れてるんですか?」



俺が色々思考を巡らせているとき、あの白髪と戦っていた黒髪少女が俺に気が付いたようだ。

黒髪の彼女は不思議そうに顎に拳を当てて何故俺がここに居るか考えていると

白髪がその隙を狙い、地面を蹴り上げ黒髪の彼女へと距離を詰める。



「戦闘中に考え事?」

「別にいいじゃん!」



だが、数秒の隙を狙った白髪の突きは黒髪の彼女のナイフで防がれる

黒髪の彼女は頬を膨らませながら白髪に文句を言ったが、白髪はその文句を無視して攻撃をする。しかしその攻撃は黒髪少女には当たらず、反撃を取られる。

黒髪の彼女はナイフを滑らせ細剣を弾くと白髪との距離を取った。



「考え事いてるときにやるとは、幻夢ちゃん。中々やるねぇ」

「五月蠅い」

「むー、相変わらずだね‥‥あと、そこの後ろのおにーさんは来ないの?ここにいるってことは幻夢ちゃんと同じ魔術師なんでしょ?」



黒髪少女は白髪の頭の上から顔を覗かせて俺に向けてそう言った。

魔術師?なんだよそれ、ファンタジーの設定をいきなり持ってこられても訳が分からないだろう、そもそも俺は『灯』という変な物体が視れるだけの一般人だ、白髪のように人間離れした技も出来ないし、二次元でよく見る魔術師のように魔法を使える訳でもない



だが、彼女は俺を白髪と同じ魔術師だと言っているのだ。

何故断定しているのは分かっている、

それは俺がこの空間に居るからだ。

彼女が言っていたようにここは魔術師にしか入れない空間であるらしい。それ以外にもここは魔術師以外は見ることもできないし聞くことも出来ないみたいだ。



なんせ、ここまでバチバチと戦闘しているのに人っ子一人見に来やしない

信じたくないがどうやら俺は白髪と黒髪が属する魔術師という部類らしいな

ファンタジーの世界でもないのにどうしてこうなった。訳が分からん



「どうしたの?もしかしてこういうの初めてとか?そうだよね、まぁこういうのは場数を踏んで行かないとなれないよね」



黒髪の彼女はナイフを器用に回しながら口を開く



「幻夢ちゃん、やっちゃったね。こんな初心者連れて来るなんて、僕が人殺しが好きだったらあのお兄さん死んでたよ?」

「私が死なせないように立ち回るだけ、」

「人を庇いながら戦うのは難しいよ」

「分かってる」



俺の口を挟む時間もなく彼女らは喋り、戦闘を続ける。

やはり、人間離れした動きだ。まるで白昼夢を見ているかのような非現実的な空間。

これが俺の空想やら想像ならいいのだが、この眼に映っているのは現実らしい

さて、どうする。ここは逃げるが得策なのだが逃げたでどうなる、白髪はどうなる



いや、そもそもこれに関しては俺には関係ない話だ。

それに白髪は今日あったばかりの名も知らぬ他人なんだ。



気にすることはないだろう。

関係ない俺に選択肢は逃げるしかないだろう

それに



魔術師でもない、俺がどうにか出来るもんじゃない



そもそも俺はあれが視えるだけの一般人なんだ。

確かに俺は魔術師なのかもしれない、ここに入れたり見たり聞いたりするのは魔術師だけらしいからな

でも、俺は何も行動出来ない、魔術師という存在になった覚えはないからな



「なにしてんだろ、来るのは正解じゃなかったな帰ろ、それにこれは俺には関係ない話だ。来るんじゃなかった」



ここは一般人が挟まるところじゃない、そう思い

俺はそのまま踵を返した。



「逃げた」

「逃げたねえ、でも仕方ないよ、初心者だしあのお兄さんは魔術使えないみたいだし」

「でも、素質はある」

「そうみたいだね」

「戦闘中にお話、って余裕だね」

「おっ、とと‥‥そんなわけないよ~、刺されたらゲームオーバーみたいな、これに余裕なんてないね!」

「ゲームじゃない」

「そうだね」



俺が帰っていく背中を見ながら彼女らは会話をしていた。










俺はあの後何事もなく家に着いた。

あの白髪を見捨ててだ。

罪悪感も後悔はないと思う、ただ今日は色々有り過ぎた一日だなと思うばかり



―――なにしてんだろ。



真新しいことばかり起きたせいで気疲れを起こしてしまい異様に身体が怠い

俺はベッドに横になり身体を仰向けにしてボーっと天井を眺めていた




―――なにやってんだろ。




今日はもう疲れた。

眠りたい、そう思えば俺の瞼は自然と落ちてくる

俺の体質なのかそれとも偶然上手くいくのか分からないが眠いなと思えば自然と眠くなるようだ。

静かに寝息を立てて少しの時間だけ眠ろうと思った矢先に家のチャイムが鳴った。



「んだよ、せっかく人が眠ろうとした時に起こしやがって」



俺は愚痴を零しながら重い目を擦りベッドから起き上がり、玄関まで歩いた。

そして覗き穴を見て外を確認するとインターホンを押した奴が白髪だと分かり、俺は急いで扉を開けて白髪の前に立った。



「今日はありがと」

「え、あ‥おう」



何か文句とか怨恨の言葉とか吐かれるかと思い身構えたが白髪の発した言葉は感謝だった。

俺は驚きの余り戸惑いを隠せなかった。



「あと、これ‥」



そう言って白髪から渡されたのはどこかの喫茶店の地図と割引券だった、俺は手渡されたそれを手に取りお辞儀をした。

でも、なんで俺なんかに渡すんだ、あそこから逃げた奴だぞ

それなのにこいつは感謝を述べてこんなものを渡してくれた、どういうことだよ一体

俺の中で疑問符が回る。



「それじゃ、私は」

「あ、おい‥‥」

「なに?」



俺はこれで帰ろうとする白髪を引き留める、

止めた理由なんて単純だ。俺はこの白髪名前知らないしこれから隣人付き合いになる奴を見た目で呼ぶのも忍びないしあと、今回のことに関しても色々言っとかなきゃいけないからだ。



「おま、いや‥君名前はなんて言うんだ?」



俺が彼女に名前を聞くと静かに少し頷いて、口を開いた。



「風華 ユメ、君は?」

「吟切 紅哉だ、そのあの風華さん‥今日はすみませんでした。」



切り出しにくい言葉で一瞬詰まりそうになったが、俺は風華に向かって謝った。罪悪感や後悔などはなかったと思っていたが、あんな状況で何もせず文句だけを吐いて逃げ帰ってしまったのだ。

謝って済む問題じゃない、それは自分自身で分かっている。



でも謝らなきゃ自分の心が晴れない気がした、俺が望むような返事を貰えないかもしれないが、俺は彼女に頭を下げた



「気にしてない」



風華はそう言ってくれた。

でも、俺は頭を下げ続ける。



「それに、これは私が、巻き込んだこと、だから、貴方は、悪くない」



彼女はそういうとそのまま自分の部屋へ戻って行った。



「俺は、悪くないか‥そうかね」



彼女が去った後、俺は静かに扉を閉めて今日の行為に関して疑問に耽った

風華があそこの近くに連れてきたのは確かだ、でもあの場所に踏み込んだのは俺自身だ。

そしてあの状況を見て恐ろしく感じて、自分には関係ないとそう思い込んで自分の行動を正当化して逃げ帰ってきた



それで俺が悪くないか‥‥

何考えてるんだろ、俺は。

何故今になって罪の意識や後悔を感じるのだろうか、自分の感情のコントロールの難しさに頭を抱える。

前髪に指を入れて髪の毛を乱雑に掻きながら俺はベッドに座る



「仮眠を取るか」



俺はまたベッドに倒れて今日のことを思い返しながら目を瞑り、眠りに付いた










「ここか」



とある日の休日、俺はある喫茶店に足を運んできた。

ある喫茶店とは前に風華が渡してくれたあの割引券が効く喫茶店だ

休日で暇だったときにこれがあることを思い出し、今俺はここに来ている。



見た目は中々新しい、良くお洒落好きな大学生とかまだ若い社会人とかが来そうな喫茶店だ。

中に入ろうと扉を押すと、ドア・ベルが鳴る。

喫茶店の中は中々小奇麗で落ち着いた雰囲気がある、洒落たお店だ。

俺は割引券とスマホをポケットに入れて、二人用の席に座り息を吐いた



周りを見渡せば結構な人数がいる、混んではないがスカスカに空いている訳でもない、知る人ぞ知る穴場スポット見たいな場所なのだろう

店内は静かで気分を落ち着かせるようにゆったりとした曲調の音楽が流れている。

いいお店だ。



目の前にレストランや飲食店でのいつも出されるお冷が置かれる。

運んできたのはこの喫茶店の指定制服を着た、身長は中学生ぐらいの女の子。

身長は風華よりも小さく、髪色は柿色で、髪の毛の長さは腰まであり、見た目はまだ幼さが残っているのだが、少し大人びた雰囲気がある。

女の子はお冷を出した後静かにお辞儀をして、厨房へと戻っていく



無口な子なのかなと思いお冷を呑みながら、メニュー表を開いた。

そこから今日の気分に合わせて適当に料理とドリンクを決めて、呼び出しベルを押す



「注文は?」



呼び出しベルを鳴らすとさっきの女の子が出てきて、注文を聞いてきた。

俺はさっき決めた料理とドリンクを言うと、女の子はそれを髪にメモしてまた厨房へ入って行った。



厨房にはさっきの女性ともう一人の顔見知りの風華が立っていた、どうやらここは風華のバイト先だったようだ。

だから、ここの喫茶店の割引チケットとか持ってたのか、

あの柿色の髪少女が持ってきたメモを風華が確認する。



どうやら作るのは風華のようだ。



それから待つこと数分、ドリンクが来た後に料理が運ばれてきた

運んできたのは変わらずあの女の子だ。



「はい、これ注文だ。」



自分の目の前に置かれた料理は、喫茶店定番料理みたいなものだ。

俺はそれを平らげた後、会計口へ足を運ぶ。

食ってみた感想だが、料理は中々ボリューミーで腹に溜まり美味しかった。



そこそこ腹に溜まって満足したので割引チケットを使い、会計して外に出る。



「待って」



外に出たら聞き覚えのある声に呼び止められる。

俺が声のした方向に振り向くとそこには風華がいた、俺は呼び止められたことに多少驚きはしたが、何か俺に用事があるのだろうと風華に身体を向ける。



「ん?」

「ちょっと来て」

「え、あ‥おう」



なんなんだいきなりこっちに来てって、

もしかして前にこれ渡してきたのはここに呼び出すための口実だったのか、いや、流石にないか。

まぁ、今日帰ってもすることないから、暇をつぶせるなら有難い。



俺は風華に手招きされてそのまま厨房の奥まで誘われた、その間変な目で見られたのは気にしないでおこう。

厨房の奥はどうやら家らしく、喫茶店の家を合体させているようだ

二階建ての家で一人で住むには広いぐらいだ。



「どこ行くんだ?」

「ちょっとしたところ」

「店はどうするんだよ」

「もう一人に任せた」

「そっか」



俺はそのまま風華のあとを付いていき二階へと上がっていく

二階へ上がると奥の突き当りの部屋に招かれた。

俺は小さな声でお邪魔しますと言って部屋の中に入り絶句した。



部屋に入って一言、汚い。まるでここはゴミ部屋だ。

物が散乱してるし、服とか色々散らかっている

真ん中に置かれている長机の上には食べ物のゴミとかもあるし、放置されている。

広々とした部屋にここが俺らの縄張りだと示すように散乱するゴミ、目も当てられないぐらい酷い。

風華はその状況にため息を付いて、部屋の比較的綺麗なソファに俺を呼んだ



「待ってて」

「おう」



風華は俺をソファに座らせた後、机のゴミを片付けて部屋を出ていった

にしても汚い部屋だ、この部屋の状況を見ればこの部屋の住人の人相や人柄は大体想像できる気がする。

それから待つこと数十分。


「おー君がユメちゃんが言ってた魔術師適正のあるという子か」


扉を開き。そう言って入ってきたのは柿色の髪をした女性。

つまり、さっき注文を聞いてきたあいつだ。

これは、予想を遥に裏切られた気がする


「申し遅れた、私の名前は鐙 紫翠、水の魔術師だぞ、そして、ここ喫茶鐙の店長だ、よろしく頼むぞ少年!」


扉をあけ放ちこの女性が言い放った言葉に俺は開いた口が塞がらなかった



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