第一話
なろう初投稿です
いつ頃だったか、
確か記憶が正しければまだ俺が小学校の頃だったはず、
ある日を境に俺の目には不思議なものが見えていた、幽霊とかオカルト的なものじゃなく別のモノだ
空気中に点々とあるもの、触れることは出来ないただ感じること目視するそれだけの謎のそれ。
自分にも、友達にも、家族にも、先生にも、動物にも、植物にも、それはあった。
それは身体の内側で微細な光を放ち、形状は丸く形で光とかは小さかったり大きかったり色が変わっていたりと様々だ
こいつは一体何なのか、なんて子供の頃の俺にはわかりはしない。
不思議でしょうがなかった。なんせこいつは名前もなく、俺以外には視えなくて、意識があるようには思えない、ただ空気を舞っているだけ。
分からないことだらけのそれに名前が無きゃ不便だと思った俺は小さなガキの知能を生かして自分なりの恰好の良い名前を付けてみた。
こいつの名前は『灯』ガキのころにしちゃいい感じの名だなと今でも感じる。
これは子供の時に見た幻覚とか、小学生で中二病を患って頭の中で創り出した嘘なんかではない、そう断言できる。
何故なら現に今でも見えているし講義中なのにこいつが目の端に映ったりしてして辟易している。
邪魔だと思ってそれを払い除けようと手を出すが、実体がないので通り抜けるだけ
めんどくさい、この一言に尽きる
「あ、今日バイトあるのか、怠いな」
そんなこんな、いつも通りに灯に邪魔されながら講義を終わらせて教室の窓から見える夕焼け空を横目に荷物を腰に抱えここを出ていく、午後、夕時になればサークルやらバイトやらに耽る奴が多い。
俺は一人暮らしのため無論バイトを頑張らないと生活費が賄えない。
生きるためには働かなきゃいけない
「生きるってめんどくせぇ、手軽に稼ぐ方法とかねぇかよ」
ボヤっと社会人が誰しもが思う願いを考えながらバイト先まで歩く
相も変わらず灯は色々なところで光っていた。
「あー疲れた。」
時刻は夜の11時過ぎ、6時から11時までの計5時間のバイトを終えて、自分の住むアパートまで歩く、あと途中でコンビニにより家帰ったあとに食べる晩御飯と飲み物を買った。
右手にスマホ左手にコンビニで買った晩飯、いわばこの状態は二刀流だ
何言っているんだろ俺。
ズボンの右ポケットにスマホを入れて財布を取り出す。
財布を開いて札を見る、金はそこそこで諭吉が1枚と野口が2枚
結構あるな。
「ただいま」
家に着くころには疲れがたまって早く寝たいが、家帰ったら色々やることが多い。
早く飯食ってベッドにダイブして眠りに付きたいのだが、皿洗いと洗濯を貯め込んでいるせいでやらなきゃいけない、
ため込んじまう癖をどうにかしたいな
そこから一通り終わらして飯にありつける、バイト終わりは疲れて帰ってくるから大体コンビニ飯だ。
晩飯を食い終わり、ゴミはゴミ箱へ、シャワーは今日は面倒臭いので明日に後回しにする
やっと眠りに付ける。
「明日は午後の講義だけ、取ってるし昼頃までは寝れるな」
疲れた後の柔らかいベッドに倒れるのは最高だ、風呂入った方が疲れが取れやすいらしいが、睡眠の方が大事だ。
それにさっきから瞼が重い、疲れが完全にピークに達しただろうし、
俺は重い瞼を瞑り、静かに寝息を立てて眠る
「ふぁーあーぁ。朝か」
朝かと呟いてもスマホの時計を見れば昼近く、だが午後の講義には間に合う時間帯だ。
眠い目を擦り、下着と今日着ていく服を手に取り風呂場へ直行した
どっかの雑学で聞いた覚えがある。
朝風呂は健康に良いが危険であるとか、ネット記事眺めてて見た雑学だが内容は全く覚えていない。
目覚めにいいはずだが、眼を覚ますには水浴びたほうがいいらしい。
確かそんな感じだったと思う。
「ふぃー、寝起きのあとのシャワーは格別だわ」
風呂から上がるとちょっと遅めの朝食を作る、今日の朝飯は適当にトースターで焼いた食パン1枚にバターを塗って食べた。
味は美味かった。
朝食を済ませた後は少し時間があるのでベッドに横になりながらスマホでネットニュースを見る
「うげぇ、また行方不明事件かよ。」
物騒な世の中だ、特に最近。
今日も10代前半の少女が行方不明になったらしい、一週間前にも同じ行方不明事件が起きてたな。
警察は何やってんだか、早く本人とっ掴まえて子供たちを親御さんに届けてやれよ。
生きてるか分からんけど。
しかし今回行方不明になったの大学の近くなんだな、大学行く前だって言うのに気分下がるわ
豆知識で言ってたな、朝はなるべく暗いニュースは見ない方がいいって
確かにそうだわ
「さて、そろそろ行くか」
大学行く前に暗いニュースを見たせいで俺は起き上がり必要なものをバックに詰めて重い足取りで自宅を出た。
外に出れば相変わらず『灯』は呑気に空中に浮かんでいるがだが今日のは少し様子が違った。
今日暗いニュースを見て気分が下がって幻覚症状でも起こしたかと、思ったが‥‥
それは多分ないだろう、だってこいつらが俺の気分に左右して見方が変わるって言うことはない
だから多分これは幻覚ではなく、本当だと思う。
と言っても、『灯』の数が前よりも多くなったな程度だ。
(こういうときもあるか、さっさと行こ。)
そんなことを考えながらスマホを片手に俺は玄関のカギを絞めて大学に行こうとすると、隣の扉が開いた。
前まで隣は居なかったはず、また新しい入居者来たのか
適当に挨拶して大学行くか。
「‥‥!」
驚いた。隣に新しく入った入居者がまさかの女の子だとは
この辺りは危険だと知られているのによく住めるな、
ここは意外と好物件だけど、その代わり事件に巻き込まれやすいから家賃が安い。
生活費がかつかつの俺みたいな奴にとっては安くて日当たりも良く住み心地のいい部屋なんだが、女の子一人で住むにはちょっと危険がある気もする。
気にしても仕方ないか
「こんにちわ」
「あ‥‥こんにちわ。」
さてと、挨拶済ませたことだし行くか。
しかし、幼そうな見た目で可愛らしい子だな。
絹のような綺麗な白い髪色で、背中まで伸びた髪、片目を隠していて、薄い丸眼鏡を掛けていて。目の色は蒼色。
でも、どっかで見たことあるような‥‥。
「‥‥‥?」
違和感、
新しい入居者は外人さんか、でも流暢な日本語話すな
如何にも事件に巻き込まれそうな感じがする。
―――違和感。
なにかちょっとした違和感、モヤっとした感じだ。
いつの間に引っ越してきたのだろうとか、そう小さいことじゃないもっと別の何か。
なんだ、そう思い違和感の原因に目を凝らす
「なんだこれ」
そう声を漏らしてしまう、驚き。
それは彼女の周りだけやけに『灯』が多い、一人一つしか見えないそれが、彼女の周りには数えるだけで十個ある。そして何よりも彼女自身の『灯』の放つ光の量が初めて見るぐらい大きい、こんなの生まれて初めて見た気がする
まだ、幼い見た目の子に尋常なほどの『灯』の光の量と数、そして初めて感じる威圧感。
なんだこれ。
「あの、どうしたの?」
「あ、え‥いや、なんでもない」
不思議そうに俺の顔を覗く彼女、俺は無意識に後ずさりをしながら目を逸らした
彼女から漏れ出る『灯』の威圧感、なんなんだ。なんなんだ、この少女は‥・
感じているのはただの威圧感、彼女からは敵意は一切感じない。
彼女は一体。
「それじゃ、俺はこれで」
「待って」
緊迫感と威圧感によって塞がれた口がやっと開き急いでこの場を立ち去ろうと足を一歩踏み出そうとすると、彼女に声を掛けられた。
今すぐにでも逃げ出したいが逃げたら逃げたで面倒臭いことになりそうだ。
だから、極力相手に嫌な思いをさせまいと作り笑顔で彼女に振り向く
「なんだ?」
「視えてる?」
「え?」
「視えてる?私のこれ‥」
彼女は首を傾げながらその子は『灯』に指をさして疑問を投げかけてきた。
今まで俺だけにしか目視出来なかった『灯』は彼女には視える。
突然の出来事で頭が可笑しくなりそうだ、
なんだよ、なんなんだよこれ、、クソ
適当に言葉を並べて発しないと
「あ、ぐっ」
駄目だ、上手く言葉が発せない
それもこれも妙に感じるあの圧迫感のせいだ。
「答えて、視えるの?視えないの?嘘は駄目‥絶対、YESかNO‥どっち?簡単。」
狭まれた選択肢の中で、答えるのはYESかNO。
YESを選択すれば、まず何か変なことに巻き込まれることは確定だろうな、嫌なことに巻き込まれるのは真っ平ごめんだ
でもNOを選択すれば、何をされるのかが分からない。
考えろ、考えろ。
正しい選択肢はなんだ、ただの二択だぞ‥‥
そもそもなんで今日に限ってこうなるんだよ
「俺は」
「うん」
YESかNO、ただそれだけの答えに尻込みするな
気楽に考えろ、楽観的にだ。
別にバレたってこの『灯』が視える同士話が合うかもしれない、
嘘ついて何になる、、ただ本当のことを言えば良いだろうが
「視える」
「そっか」
俺が発した答える彼女は短くそう頷くと、少し口角を上げて微笑んだ
「それじゃぁ‥俺は、これで」
「あ」
これで終わりだ。そう結論付けて彼女にお辞儀をして歩き出す
また何かありそうだが面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だ
だから俺は足早に大学へと向かった。
「午後の講義だけでも疲れるな」
と大きく背伸びをしながら俺は呟く。
高校時代50分の授業で根を上げていた自分をぶん殴りたくなるぐらい
大学の講義は長い。
社会人になるために少し時間が欲しくて大学を選んだが、選択肢を間違えた気がする
この大学生活と社会人生活どっちをやりたいと聞かれたら前者を選ぶだろうがな
社会人の辛さは見てきたから知っている。
(今日はバイト無いし、家帰ってゲームするか)
今日は楽な日だ、バイトもないし講義も午後だけだ。
やることは昨日全部終わらせたし、家でのんびりゆっくりする日があってもいいじゃねぇか。
今日の出来事は全て忘れて楽しもう。
「見っけ」
「え、あ」
運がいいのか、悪いのか。幸か不幸か、いや、俺にとっては不幸だし運は悪いほうだがな。
どっかで見たことあるような気がしたと思ったら
「まさか、同じ大学にいるとはな」
「意外」
「んで、なんでお前も付いてくる」
「同じ」
「そうだったわ」
まさか、同じ大学で出会うなんて思いもよらなかったわ
それに、大学生ってことは彼女は俺とタメか近い年齢って訳だ
見た目で判断するものじゃねぇな
しかし、部屋がお隣同士で大学同じとかどんなラブコメ展開だよ
でも、ここはラブコメ世界でもないし、エロゲやらギャルゲーの男が旨い思いをするような世界じゃない。
帰り道が一緒ってだけ、出会って数分で何か、話が盛り上がることもなければ、話す理由さえない。
そもそもあいつも今日初めて出会った赤の他人の奴に何か話す内容もないだろう。
何を期待してんだ馬鹿馬鹿しい
今日は少し変わった一日だったな、特に昼頃は変わりすぎていた。
まさか、俺と同じ『灯』が視える奴に遭遇するとはな。
ただこれは『駄菓子屋でアイス棒を買って当たりが出た』みたいな、ほんのちょっぴりの人生で起きる一日の変化。
そう思ってもいいだろう。
「視えた」
「視えたなんだよ?」
急に何言ってんだ、こいつ。
視えた、ってなんだよ。灯のことか?
そりゃぁ視えるだろうな、視えるもの同士だしな、でも視えたからなんだよ。
あと、俺の服掴まないで欲しい
「戻る」
「おう、そうか」
「来て」
「は?ちょっとま 」
俺は出会ってまだ数分の付き合いの名も知らぬ少女に手を引かれ踵を無理やり返される。
手を取られたとき俺は理解できた、この後に災いが自分に降りかかるなと。
自分に降りかかる火の粉は払っておきたいのだが、どうやらそれは無理らしい
これは決して女慣れしていないからとか、こういう青春の人ページを開いて嬉しかったとかではない。
ただ単に彼女の力が強すぎて抵抗が出来なかった。
あの華奢な体躯や腕には到底想像のつかない力量差
どういう鍛え方すればこんな力を得られるのかぜひ教えてもらいたいとこだ
結果無理やり道を引き返されることになった。
「はぁ、はぁ、はぁ‥‥何故戻ったし、最近ここら辺で行方不明事件起きてるからあんま長居したくないんだが」
「‥‥‥」
「おーい、話し聞いてるか?」
「あっち」
「は、あっちって‥‥何もない。ってどこ行きやがった!」
どうやら今日は変な一日になりそうだ。
昨日から一変して俺の今までの日常から、非日常へと変化を遂げているような気がする。
いや、気がするんじゃなくてしているんだ。
「『灯』の挙動が可笑しい」
そう気が付いたのは彼女が居なくなってから数分のことだった。
彼女とあっての一度目の違和感。
そしてここに来てからの二度目の違和感。
どうして視えていたのにこの挙動に気づかなかったのか
何故彼女が大学近くに戻って来たのか今理解できた
それはこの挙動が視えていたからだ
この俺が『灯』というのは一定の動きをしない、風に吹かれ空に舞ったり、まるで意思を持ったかのようにフラフラとどこかへ行ったりと。
不自然な動きしかしないのに
どうする、この『灯』を追っていけば原因に辿り付けるかもしれないが、着いたとしてもそこで身を危険に晒すことになったら俺はただじゃすまない。
最近ここの近くで行方不明事件も起きていたせいもあり、リスクを背負う行動になりそうだ
でも、その可能性があるってだけだ。
『灯』をあとを辿れば事件に巡り合わせるという確証はない、
確証もないのに、何かがある そう決めつけるのはよくないだろう
「別に何もなかったらでいいんだ。それでいいはずなんだ」
俺は意を決して歩を進めた。
夕暮れ時、人気もない物静かな道の真ん中で睨み合う二人の少女がいる。
一人は白絹のような純白の髪を持つ少女。
もう一人はまるでカラスの濡れた羽のような美しい髪を持つ少女。
「なはは~!やっぱり邪魔しに来たね、幻夢の魔術師ちゃん。」
「いい加減にして、何度やれば気が済むの、幸運の魔術師」
「え~、いいじゃん。」
「良くない、さっさと大人しくやられて」
「やだね、僕は幸運だからそう簡単にはやられないから」
‥‥‥どういう状況だよ
これは