表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幼馴染天才子役にできない演技

作者: ハルユキ

 天才子役諸星(モロボシ)拓斗(タクト)


 国民的弟として活躍を重ね14才に成長した彼は今日も私と晩ごはん(オムライス)を食べている。


美味(うんま)〜やっぱハナと作るご飯最高!」

「うん!」

「一生食べたい!」

「うん!」

「本当!?」

 タクが勢いよく立ち上がる。

「へ? うん。タクとご飯作るの楽しいもん」

「あ、やっぱ気づいてねーか」


 うなだれるタクを覗き込んだらデコピンされた。



 タクと私は隣の家に住む幼馴染。

 仕事で海外に行く機会が多い私たちの親は協力し合い小さなときから互いの家を行き来してきた。

 家事ができるようになってからはふたりで過ごす日も多くなった。


 21時(くじ)。テレビをつける。

 タクが出てるドラマが始まるのだ。


「いいなぁ」

 ふと声に出る。

「これ?」

「うん。夢」

「夢!? んじゃ叶えてやるから風呂入ってこいよ」

「えっ!」


 お風呂上がりの私の髪をタクがドライヤーで乾かしてくれる。


「叶った?」

「うん!」

 私はソファの下からタクを見上げる。

「こうやって髪を乾かしてもらえるの夢だったの!」

「そっか」


 髪を優しく撫でられて心地いい。


「他にもある?」

「へ?」

「してほしいこと」

「じゃあ、さっきドラマで言ってた『姉ちゃん』って言って!」

「『ねーちゃんっ』」

 私は思わず拍手する。

「どうも。他には?」

「まだいいの?」

「特別な」

「じゃあ『元気にしてみせる』って」

「泣きながら言うやつじゃねーか」

「涙が綺麗だったから」

「まあいいけど。『元気にしてみせる』」

「すごい! 一瞬で涙!」

「天才子役諸星拓斗をなめんな。俺にできない演技はない!」


 その言葉に、飲み込んでいた台詞(セリフ)が顔を出す。


 悩んでいたらタクが屈託のない笑顔で私の顔を覗き込んだ。


「なんでも言ってみろよ」

「えと、じゃあ『好きだ』」



 タクの動きが止まる。




「その演技はできない」




 拒絶に、胸の奥が痛む。



「だよね」



 視界がにじむ。



「そんな()見たら、俺、自惚れるよ?」

「へ?」

 気づくとタクの腕の中にいた。


「『演技』はできない」


 私を抱きしめる腕に力が(こも)るのがわかる。


「お前には本気でしか言えねーもん」

 

 顔を上げると、タクの困ったようにはにかむ笑顔と目が合った。

 思わず背伸びをしてぎゅっと抱きしめる。

「わ! なに?」

「わかん、ない……わかんないけど、その顔は他の人に見せちゃやだ」

「あははっ。心配しなくてもハナしか見れないよ」

「なんで?」

「さあ、なんでだろーね?」


 びろーんとほっぺをつままれる。

 どうして胸の痛みが消えたのか。

 私が理解する(わかる)のはもう少しあとのお話。


お読みいただきありがとうございます。


『第4回なろうラジオ大賞』応募作です。

楽しませていただき、いつも感謝しています!

応援ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 天才子役をもってしても、できない演技=本気だから。 14歳、絶妙なお年頃ですね。 この年頃ならではの、やりとりにキュンキュンしました。
[一言] キュンキュンしました!この2人の今後が気になります。
2022/12/21 22:30 退会済み
管理
[一言] 大人の階段の上り始め真っ只中の甘酸っぱさ。 子役として人より早く社会人になった彼は、少し大人っぽいのでしょうね。 二人の空気感がとても良い物語でした!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ