金色の双子の少女
設定は非常にゆるいです。
ぱらりぱらりと紙をめくる音だけが広い空間に響く。
ここはアストゥール伯爵家の書庫。数多の分野の書物が集められた部屋。
その中に二人の人影があった。
背中合わせに座る少女はふたりとも同じような容姿をしている。淡い、限りなく白に近い金の瞳。春の日差しのような暖かさを含んだ同色の髪色は暗い色ばかりの書庫で異彩を放っている。
「シリル、この本面白いよ」
「ルイス、この本も面白いよ」
互いの顔を見ることもなく親しげに言葉を交わす少女たちは、柔らかな笑顔を浮かべている。
本を交換し、再びその場に沈黙が降りる。
一定のテンポで捲られる紙の音が、静かな空間に唯一の動きを示す。
それは誰が見ても幸せな景色だろう。
片方が顔色悪く、骨と皮と言わんばかりに痩せていても。
もう片方が首から下が痣だらけ、包帯だらけであっても。
二人の少女は柔らかな笑顔を浮かべ、背中合わせに本を読む。
赤い月が二人を照らしていた。
現在時刻は日付が変わったばかりの午前零時。二人の頭上にある小さなランプだけが二人を照らし出す。
「明日は雪がふるってお母様、言ってたね」
「もう日付は変わったから、今日ふるんじゃない?」
「そうかも」
窓の外に目をやってふと思い出したように語る髪を三つ編みにした少女。
置き時計を見て言葉を否定した髪を二つに結わえた少女。
「お外で遊べたらいいのに」
「お外に出て走り回ってみたい」
ふたりの願いはいつも一緒。
外へ出たい。
「お母様、言ってたね。お外は危ないって」
「お父様、言ってたね。お家は安全だって」
本に落とした視線は変わらない。
たった六歳の少女たちは両親の言いつけを復唱する。
まだ幼い彼女らには何が正しいのかわからない。
両親の言葉を素直に信じ、いつか外に出られる日を待ち望んでいる。
「お外、きれいなお花があるんだって」
「シリルみたいなかわいいお花、あるかな」
「それなら、ルイスみたいなおしゃれなお花、あるかな」
「わかんない」
するりと手を繋いだ少女たちはふわりと微笑む。
「いつか一緒にお外に行こうね」
「うん、ぜったいね」
「ぜったい」
「一緒」
背中合わせの少女たちは膝にかけた毛布を引っ張る。
本を積み重ねて作られたような本にまみれた空間。たったひとつの書庫。
二人が唯一二人であれる場所。
「明日はお母様、私達を見分けられるかな」
「お父様、私達を見つけられるかな」
暗い感情を抱える二人はたったふたり。二人で一つの双子の少女。
本を置いて手を繋いだまま立ち上がる。二人の部屋へ戻る少女たちは、なんの感情も浮かばない、人形のようであった。
朝起きる。今年結婚するというメイドがふたりを起こしに来る。
「シリルお嬢様、ルイスお嬢様」
そう声をかけてくるけれど、ふたりを同時に呼ぶのはふたりの見分けがつかないから。
左右対称、黒子一つない整った顔立ち。
二人を見分けた人は今までいなかった。
二人は自分が分からなかった。みんなわからないから、自分がどちらなのか分からなかった。
だから二人は名付けた。
自分たちを表す言葉を。
父と母は二人に名前をつけなかった。
物心がつく頃には、ふたりともお嬢様とだけ呼ばれていた。
古くからこの家にいる執事が言うには、二人にはシリルとルイスと言う名があったらしい。
二人は顔を見合わせて、考える。どちらかなんてわからない。みんな区別がつかないから。
ルイスとも、シリルとも呼ばれたことがある。だからどちらも自身のことだと思っていた。おんなじ見た目、おんなじ名前。
ふたりとも不思議と受け入れていた。
だから決めた。
「わたしはシリル」
「わたしはルイス」
同じ色の瞳をくりくりと動かし、ふたりはお互いに名をつけた。
宙に漂っていたふたりの少女はその時初めて個として存在を認めた。
あまりにも似すぎていたがゆえに個としての名すら何処かへと飛んでいってしまっていたふたりは、ふたりで名をつけることで己を認識したのだ。
その日は青い月がたくさんの星に照らされてきらきらと輝いていた。
ふたりは六歳となった今でも、誰にも見分けてもらえない。
だからふたりでおんなじ笑顔を浮かべ、おんなじような喋り方をしていればよりわからなくなる。
ふたりは見分けてもらおうとすることをやめた。
白と黒に分けたリボンも、誰も気づいてくれなかった。
メイドにわがままを言って変えた髪型も、色違いのドレスも。何もかも、ふたりを見分けることには繋がらなかった。
一度、名札を作ってつけてみた。
そうするとみんな気づいてくれる。どちらがシリルなのか。どちらがルイスなのか。
でも、みんな名札を見てから顔を見る。それをどうしても見分けてもらえたと感じられなかった。
だから名札をつけるのもやめた。
書庫は二人だけの場所。お互いに本名とも分からないどちらかに与えられた名を名乗る。
ふたりはそれを、互いにつけあった自身の名として心のなかに固定した。
書庫は二人を自由にしてくれる。書庫の端っこにあった物語は、何処か別の世界を描いたもので“すていたす”というものがあるものもあった。
その“すていたす”にはそれぞれの個人情報が記されているらしい。
名前と年齢、性別に、持っている特技。色々なことがわかる。
その“すていたす”があれば、ふたりは誰も見分けられなくても、自分が親に名付けられた名がわかったのではないか、そう思う。
それでもふたりは名に頓着しない。もとからあやふやだったものに拘りはない。
鏡合わせの二人。
書庫は二人だけの空間。
いかにして二人を名付けられよう。生まれてから一度も切ったことのない髪はいつだってふたりを見分けられなくする。
ふたりが双子であったがゆえに外見も、色彩も瓜二つなのだ。
背中合わせに座る書庫の中。
赤と青の間を取ったような紫色の月がキラキラと煌めいている。
金の髪はふたりを見つけづらくする。
淡くて今にも消えてしまいそうで、空気に溶けてしまいそうで。
そんな二人を書庫ははっきりと認識させてくれる。濃い色で満たされた暗い空間では明るい色がとても目立つ。
だから二人は名付ける。
ドレスも宝石も、身分も。使用人も親も親戚も。与えられるものは何もいらない。
二人が二人であれる場所。そこにふたりは名前をつける。
秘密の図書館と
紫色の月はまんまるなその姿で淡く光った。
春になった。春はふたりの誕生した季節。
ふたりは七歳になった。ずっとおろしていた金色の髪をふたりでツインテールにした。かつて使っていた白と黒のリボンを片方ずつ。左右で色を変えた。
かつてのふたりは色を変えることで見分けてもらおうとした。
書庫は二人の心を映す。ふたりを見分けてもらえなかったそれは、飢えとして。
二人を見分けられなかった人の視線は傷として。
それぞれの身体を傷つける。
どちらが本物のルイスか。どちらが本物のシリルか。
それを知っているのは二人を見守る七色の月だけ。
月はふたりが生まれたときからふたりをずっと見守っていた。
“お誕生日おめでとう”その言葉がこんなにも心を傷つけるのだと、二人が知ったのはほんのよっつのとき。
あからさまに視線を惑わせながら、困惑に揺れる瞳で見つめられた。
ふたりはにこにことその言葉を受け入れた。
“ありがとう”の言葉がこんなにも空虚になるものなのだと、ふたりはその時知った。
にこにこしていればわからない。傷を見せたらみんな困る。幼くてもふたりはわかった。
「ルイス、黙っていよう」
「シリル、笑っていよう」
手をつなぐ背中合わせの少女たちは涙を流さない。
お互いがわかるのはお互いだけ。
一年はとても早かった。
ふたりは八歳になった。八歳になると神様から特別な能力をもらえるらしい。
手をつなぐ双子の少女は初めてお屋敷の外へ足を踏み出した。
お母様と手を繋いで歩く。
「お母様、あれはなあに」
「お父様、これはなあに」
ふたりの好奇心はふたりの心の内では抑えきれない。
ふと気づいたのはルイスに困ったような視線を向けるお母様。
シリルを面倒そうに見つめるお父様。
ふたりは理解した。お外ではしゃいではいけないのだと。
「ごめんなさい、お母様」
「ごめんなさい、お父様」
親の間に挟まったふたりはぎゅっと互いの手を握りしめる。
小さくなった心のときめきをふたりはそのまま消し去った。
真っ白な壁の神殿がふたりが今日行く場所らしい。
「ルイス、おっきいね」
「シリル、真っ白だね」
初めて目にした神殿は、とっても大きくてとってもきれい。
キラキラと目を輝かせるふたりは神殿の奥へと連れて行かれる。
ルイスが女神様の像の置かれた泉に足を入れる。キラキラと光った泉はルイスの心に暖かさを与えた。
シリルが女神様の像の置かれた泉に足を入れる。ふわふわと光の浮かんだ泉はシリルの心に冷たさを与えた。
太陽と月。二人に与えられた加護は初めて二人の存在を別つ物になった。
二人は聖女として神殿に住まうことになった。
緑の月が冷ややかに二人を照らす。
みんなを暖かく受け止め、言葉をかけるルイスと、静かに寄り添い側で支えるシリル。
方向性は違えど二人は聖女だった。
「ルイス、これあげる」
「ありがとう、シリル」
仲の良かった二人の関わりは変わっていく。二人を支持する者たちの中で派閥ができた。
派閥争いが水面下で始まるとルイスは外へ出してもらえなくなった。
シリルは護衛が二十人に増えた。
一人だけの護衛とともに二人で開いていた秘密のお茶会。それも段々と減って行って、やがて開かれることはなくなった。
二人に最初からついていた青い髪の双子の騎士は、申し訳無さそうに眉を下げていた。
ふたりは知っていた。ルイス付きの翠の瞳の騎士、アルスは争う人たちを止めようと尽力していることを。
シリル付きの灰色の瞳の騎士、ゼルスはふたりの関係が今までどおりに続くようにと手を回していることを。
だからふたりとも、眉を下げる双子の騎士に柔らかく微笑み、言葉をかける。
「大丈夫です」
と。
心にもない言葉を言えるようになった。
ルイスは暖かいという彼らの言葉は嘘としか思えなかった。
ルイスの心は悲鳴を上げていた。端から罅が入って今にも凍ってしまいそうなほど冷えていた。
シリルは涼やかだという彼らの言葉は偽物にしか聞こえなかった。
シリルの心は苦しみを湛えていた。芯から湧き上がる激情に、身も心も焼き尽くされそうだった。
ここは二人だけの場所。アストゥール伯爵家の書庫はいつしかふたりに根付いていた。
ふたりだけが自由に出入りできる書庫。ふたりだけの秘密の図書館。
他の誰の出入りも認めない。
その図書館はふたりの心のままに、その他の存在を拒絶する。
「一緒にいよう、ルイス」
「花畑で見つけるの、シリルのようにかわいいお花」
「花畑で見つけるの、ルイスのようにおしゃれなお花」
「一緒にいるの」
「ずっと一緒」
「うん」
二人の心は変わらない。
黒い月が真白な雲の中でぽっかりとあいた穴のように、浮かんでいた。
二人の心は段々と空虚になる。
ふたりが書庫へ行くのは夜中だけ。昼間はふたりとも役目がある。
周囲に目を光らせ、申し訳無さそうに眉を下げる二人の騎士は今日もふたりのそばに立つ。
怪我や病を癒やすルイス。
話を聞き心を癒やすシリル。
二人に本当に必要なのは、ふたりだけの空間なのか、それとも──。
「……」
「……」
廊下ですれ違う。前の二人であれば楽しげに会話をしていた。
今の二人は何も言わない。ただ人に寄り添い、癒やす、そんな聖女として。
二人は個としての心を凍らせた。
銀の月が照らす書庫の窓際。向かい合わせに腰掛ける二人はなんの感情も映さない。
「ルイス」
ふと、シリルが口を開く。
「もう、いやだ」
膝に置いた手をぎゅっと握りしめる。
「シリル」
息を吐くようにルイスが口を開く。
「消えてしまいたい」
二人の心は限界だった。ふたりだけのこの秘密の図書館は、二人を何者でもなくしてくれる。
ふたりは初めて涙を流す。
ごつりと合わせた額には聖女が身につけるサークレットがシャラリと揺れる。
静かに頬を伝う涙は今まで露出したことのないふたりの苦しみ。加護をもらって四年がたった。
両親は一度も訪れなかった。もともと期待はしていなかったけれど、その事実は二人の心に鋭く突き刺さる。
淡い金色の瞳はお互いだけに向けられる。
「逃げてしまおうか」
「逃げちゃおっか」
「ルイス」
「シリル」
手を繋ぎ合わせるふたりの少女。金色の双子の少女はもう何もかもがどうでも良かった。
「私ってなんだろうね」
「私って何者だろう」
「わたしはルイス」
「わたしはシリル」
幼いときに、自身を定めたあのときのように。
顔を見合わせて瞳をくりくりと動かす。
銀の月は柔らかく二人を照らす。
朝になる。ふたりは動かないまま。
きっと神殿は大騒ぎだろう。聖女がふたりとも行方知れずになったのだから。
この書庫は理想と現実の狭間。
心を映す二人の姿は変わらず骨と皮のようで、傷だらけで。
かつてのあの時よりも凄惨な姿は二人の心の疲弊を示す。
銀の月は現実をくれない。
二人が現実に戻るとき、周囲は変化しているだろう。良くも悪くも。
ふたりは手を繋いだまま現実に戻る。
銀の聖女と金の聖女。二人の加護からつけられた、ふたりを見分けるための名。
ルイスは金の装飾を。シリルは銀の装飾を。
消えた聖女を探して走り回る、神官と騎士。そんな姿を気にもせずにふたりは歩く。
ふたりに気づいた人々が呆気にとられて跪く。
前方には大司祭がいる部屋がある。
扉の側に控えていた騎士が扉を開く。
中では会議をしていたらしい。大司祭だけでなく司祭も大神官もみんな集まっている。
大司祭は二人の言葉に一番に耳を傾けてくれた人物。
だから一番に伝えたかった。それでも。
「丁度いいや」
「丁度いいね」
握った手に暖かいものが伝わっていく。
「聖女様、今まで一体どこに」
「いえ、そんなことより公務が」
「聖女様!」
口々に言葉を発し始める司祭と神官。
大司祭と大神官は静かにふたりに視線を向ける。
「私たちは、もうやめる」
「聖女になりたいなどと思ったことはない」
「私たちはここを出ていく」
「探さないで」
「「もう、関わらないで」」
呆然とする司祭たちを放って出ていこうとする。
その背中に声がかかる。
「ルイス、シリル。装飾を外しなさい」
柔らかな言葉は二人の心を優しく包む。振り返ったふたりは頷き合い、つけていた聖女の装飾を外す。
ことりことりと机上に装飾が置かれた。
装飾を外すと真っ白な服で身を包んだ瓜二つの少女が並ぶ。
髪型も、服装も、すべて同じ。
「シリル」
大神官がシリルの頭に手を置く。
「ルイス」
大司祭がルイスの頭に手を置く。
ふたりは目を見開いた。
「「……わかるの……?」」
大神官は金の装飾をつけていた少女にシリルと声をかけ、手を置いた。
大司祭は銀の装飾をつけていた少女にルイスと声をかけ、手を置いた。
いつもとは逆の装飾をつけていたのに。
ふたりは正確にルイスとシリルを見抜いた。
今まで誰も分からなかったのに。親ですら見分けられなかったのに。
優しい眼差しと手付きにふたりはじわりと瞳に涙をにじませる。
「よく見ればわかるのですよ。シリルはルイスよりも垂れ目なのです」
「ルイスはシリルよりも吊り目なのですよ」
大司祭と大神官はルイスとシリルに微笑みかける。
大神官の従者が司祭と神官を部屋から追い出す。そして従者も部屋を出ていく。
四人だけが残ったその部屋ではふたりの少女が涙を拭っている。
優しく頭を撫でる大司祭と大神官は慈愛を感じさせる表情を浮かべる。
「ルイス、シリル、ここを出たいですか」
「……はい」
「そうですか」
「……」
どうしょうもないほどに溢れてくる涙を拭っているふたりは、胸の中に湧き上がった感情が何なのかわからない。
「大神官殿、そういえば私は隣国に別荘を持っていましてね」
「おや、それはそれは。奇遇ですね、私は少々使う宛のないお金がありましてね」
「それはそれは」
「ええ、丁度いいですね」
にこりと微笑んだ大神官たちはふたりに提案する。
「隣国で暮らしてみる気はありませんか」
と。
ふわりと暖かい風が頬を撫でる。
季節は巡り、ルイスとシリルは十八歳になった。
あれから六年の時が経ち、当時は荒れきっていた二人の心は落ち着きを取り戻していた。
ここはふたりが生まれた国の隣に位置するフェルニア公国。
ルイスとシリルは大司祭と大神官の手を借りて、国外で暮らしていた。
国を出るとき、アストゥール伯爵夫妻には報告した。しかし、アストゥール伯爵家にはふたりの弟が生まれていて、夫妻にとってはもう二人はどうでも良かった。
だから二つ返事で了承をもらえた。
そうして国外に出た二人はやっと息を吸うことができるようになったように感じた。
身の回りのことを全て自身でやらなくてはならなくなったけれど、ふたりで一緒にいるから、それも苦ではなかった。
やっと訪れた心の平穏。時折訪れる大神官たちはふたりをちゃんと見分けてくれる。
同じ服装をしていても、同じ髪型であっても、些細な違いを見つけて見分けてくれる。初めて自分たちを見分けてくれたということに対する喜びが、大神官たちを親のように、祖父母のように思わせる。
ふたりは森にほど近い大司祭の所持する屋敷で暮らしている。
未だにふたりは書庫へ出入りする。でもそれは、かつてのような辛い現実から逃げるためではない。
幸せな記憶をふたりだけの秘密の図書館に記録しておくため。
誰も見なくていい。見つけてもらえるとは思わない。こっそりと、ひっそりと。
ふたりが生きていて、幸せだったことをなにかの形にして残しておきたいから、ふたりは度々書庫へ出入りする。
最近はずっと、秘密の図書館に浮かぶ月は金色で、かつてのようにころころと色を変えたりはしない。
でもそれは、悪いことではないように感じて、ふたりは暖かい感情に包まれる。
書庫で見ていた痩せた姿や傷も、今はない。
耐えて耐えて、限界を迎えて、壊れて溶けて、消えてしまいそうな双子の少女。
それはもう存在しない。
幸せに包まれた金色の双子の少女がいるだけ。
認識してもらえないことに苦しんだ幼少期。
感情を鑑みられなかった頃の記憶はとうに風に溶けて消えた。
今ここで笑うのはなんの役割もない、何者でもない金色の少女。
やがて大神官たちに連れられた双子の青い髪の騎士がふたりの暮らしに加わった。
金色に輝く月はこれからも二人の少女を見守り続ける。
【END】
○月で示すそこまでの大まかな話の流れ○
赤い月︰幸せと意識しない苦しみ
青い月︰叶わない願いと存在の認識
紫色の月︰見つけられない諦めと共通の幸せ
緑の月︰言葉の傷と別つ心
黒い月︰すれ違う心と変わらない本音
銀の月︰限界の訪れと決壊
金の月︰訪れた平穏と幸せの記録
読んでいただきありがとうございました。