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MERCENARY GIRLs/EXCEED-WARRIOR  作者: 来賀 玲
Chapter 3

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MISSION 5 : まじめに修行するとか思わなかった





 傭兵系美少女大鳥ホノカちゃんは、強化人間(プラスアルファ)である!


 彼女を改造するよう勧めた辛辣マスコットロボのコトリちゃんの猛プッシュなおすすめにより、全身ほぼ機械の身体となって傭兵(スワン)業に勤しんでいるのだ!



 そしてこのVR訓練場、なんか闘技場っぽいステージで、突如等身大のちっちゃい美少女強化人間(プラスアルファ)となったコトリちゃんに今散々虐められているのだ!



『うぉぉぉぉぉ!?!??速い速い速い!?!』


《遅い遅い遅い!!》


 日本刀みたいな武器、高周波ブレードを振るう私を、鎌みたいなナイフ、カランビットって言うやつを模した高周波ブレードで斬りつけてくるコトリちゃん。


 なるべく高周波ブレードで受けてるはずなのに、速すぎて腕が輪切りのハムみたく切り裂かれる。

 VRの出来事だけど、神経接続の影響で痛いんだよね!!


『ぐぁ……』


《遅いよ。すごく遅い。

 もっと早く振るっていればそうはならない》


『無茶言わないでよ……!

 人間がそんな早く動ける!?』


《人間?違うでしょ。

 君は強化人間(プラスアルファ)だ。

 人間の基準程度では当てはまらない》


 えぇー、なにそれぇ?


『おいコトリちゃん!

 先誘ったのはワシじゃ!!

 先生交代なら、ワシを納得させるぐらいやらんかい!!』


 と、先にこのVR空間でチャンバラを誘ってきたキリィちゃんが、等身大のコトリちゃんに斬りかかる。


 良いぞやっちゃえ!!


《へー、まだ行ける方か。場数違うしね》


 すごい速いキリィちゃんの高周波ブレード捌きを、カランビット型高周波ブレードで迎撃するコトリちゃん。



《でも足りない、足りないんだよ!》


 だけど、即座に弾いた高周波ブレードから隙をついて、キリィちゃんの身体に傷をつける。


『ガッ……なんじゃと……!?』


《君に足りないものは、それは……!》


 白い人工血液を流しながら、それでもまだ速い大ぶりな一閃を放つキリィちゃん。

 でもそれを上体を逸らして避けたコトリちゃんが、なぜか逆関節の脚で蹴り上げて、キリィちゃんの正面をガラ空きにさせて一気に近づく。



《情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ

 そして何よりも、》


 キリィちゃんの懐で、コトリちゃんの手の中のカランビットがヒュンヒュンヒュンと動き回る。




《速さが足りない!》




 遅れて、バラバラになるキリィちゃん。

 VRと言っても……すごい映像……!


《冗談で言ってるんじゃないよ。


 君らには本当に速さが足りない。


 いつまで、人間の速さで満足しているんだ?》



 ピシャリとカランビットの白い人工血液を払い除けて、VR空間で復活するキリィちゃんと私を見て言うコトリちゃん。



強化人間(プラスアルファ)は、人の枠の速さで動いている程度の物じゃない。

 君が望むなら音速にだって挑める。

 弾丸を掴み、レーザーを見て避ける。


 それが出来ず、なにが強化人間(プラスアルファ)だ!!


 時速100kmで走れる脚力!20mm口径の砲を振り回せる腕力!!

 それに追いつけるよう脳に補助コンピュータまで突っ込んで!!

 高周波ブレード以外は防げる身体で!!


 その体たらくはなんだ!?!


 遅い!!弱い!!

 そんな身体まであって、人間の感覚のままでいて良いわけがない!!》



 …………そうか……

 そうだよね……この身体……もう人間じゃないって分かってたのに……!



《立てよ。見せてみろ……君らの可能性を》


『……やって、やるか!』


『負けっぱなしはやっぱ尺じゃぁ!』



 ────壮絶なチャンバラが始まった。


 とにかく、技とかそんなのなくて、ひたすら高周波ブレードをぶん回す!



《遅い!!遅すぎる!!

 機関銃の発射レートぐらい打ち込んでこい!!》


 にしたって等身大コトリちゃんは滅茶苦茶でクッソ強い!!

 今も真っ二つにされた……袈裟がけに。VRじゃなきゃ悲惨な事になるに何回目!?



『これで遅いんか!?』


 食らいついてるキリィちゃんも、すぐバラバラになる。


《言ったでしょ!?

 毎分500発叩き込める速さで!!

 君らの腕は、eX-Wのフレームに使われている人工筋肉素材で動いているんだ!!

 その上軽量……ならばそんな速度も、夢じゃない。


 邪魔しているのは君らの脳の『思い込み』っていうリミッターだ。


 捨てろ、そんなもの。


 そうすれば、出鱈目な剣技でも相手を細切れにできる。


 やれるはずだ!》



『無茶苦茶いうな、相変わらず……!』


 ちょっとこっち息上がってるんだけど……!


 ……息か……この毎回揉まれたりする私のでっかい胸の中の心肺も、もう強靭な機械なんだよな……!


 …………私は、強化人間(プラスアルファ)


 やれるはずか……コトリちゃんは、嘘をつかない!!


 床を砕くつもりの力で一歩踏み込んで、

 遠慮はいらない……地面ごと切り裂くつもりで、高周波ブレードを振り下ろす!


《それだよ!》


 受け止められる。小さな体で。

 小さい……?コトリちゃんだって、生前は強化人間(プラスアルファ)だ!!


 握る高周波ブレードを引いて、適当に振るう。

 外れる。でも戻す感じでまた切る。


 ───もっと速く。


 コトリちゃんのいう通りに、出鱈目で良いから振り回す。


 速く、速く……もっと速く!!


 そう、マシンガンみたいな勢いで!




 キキキキキキキキキキキキンッ!



 見える。こんな速さで振るって斬りまくっても、相手が動く速度も見える。


《その速さだ!

 知覚だってもう人間の頃のレベルじゃない!!

 ここの伸び代は元の人間としての才能もあるけど……

 このぐらいの速さならできる!違うかい?》


『違わないみたい!』


《じゃ、君にはレッスン2!》


 弾かれた!?

 空中に高周波ブレードが舞う。


『脚で掴め!!』


 は?

 脚で……!?


 と、思った瞬間、落ちてきた高周波ブレードの柄を、回し蹴りみたいにコトリちゃんはその逆関節の脚先のクローで掴んで私の目の前で刃を止める。


『へ……!?』


《言ってなかったけど、そのパイロットスーツの足の部分、踵と爪先でこんな感じにクローみたく稼働するんだ》


 マジで、と思って片足上げて、なんか集中したら、靴に見える部分と四角くて厚いヒールが、パクパクする口みたいに本当に動いた。


《ほら、人間の身体じゃないって便利だよ意外と?》


 器用にコトリちゃんは足先のクローを動かして、高周波ブレードの柄を向けてくる。


 手で掴もうとしたら弾かれた……あ、そういう事?


 私の体柔らかいんだな、と思いながら振り上げた脚でブレードを掴む。


 結構しっかり掴めるぞ、これ。


『わお……』


《ちなみに、本来の用途は、こう!》


 ジャンプしたコトリちゃんは、その脚で闘技場から垂れ下がっている懸垂台みたいなのに脚のクローで掴まってぶら下がる。


『おー……!』


《君らはもう良くも悪くも人間じゃない。

 Lv.4まで強化された身体なんだ、これぐらいできる。

 そして、これぐらいできることを知覚できるからこそ、君らが神経接続を通して操るeX-Wも、その真の性能を発揮できるようになる。


 じゃ、続けようか。

 キリィちゃんもどうする?》


『よう分かった!

 後はワシも実地で覚えりゃ良いわけじゃ!!』


 と、早速キリィちゃんもジャンプして、脚のヒールっぽいクローでぶら下がって、等身大コトリちゃんに斬りかかる。


『火がついたけぇのぉ、ぶった斬るまで終わらんぞ!?』


《そうこなくちゃ。

 ホノカちゃんも来いよ、頭で覚えられないところまで身体に叩き込んであげる!》


『うへぇ…………ま、私もやられっぱなしは嫌か!!』


 という訳で、私もジャンプして上下逆の戦いに参加だ!






 その後のコトリちゃんのVR訓練、チャンバラ以外のなかなか厳しかったよー。


 100mを2秒以下で走れとか、4トントラック持ち上げて引っ張れとか。


 中でも、機関銃を撃たれる中全部の弾丸高周波ブレードで切って防げが一番ヤバかった。


 でも、出来てしまった。私もキリィちゃんも。


 改めて、ただ死ににくくなったってだけじゃない。

 身体の大体を売って手に入れた強化人間(プラスアルファ)Lv.4ボディ……元と対して変わらない見た目なのに、そうなってもう長いはずなのに、どこか舐めてた。


 というよりコトリちゃんの言葉を借りれば、


 思い込みというリミッターがあった。


 そう……実感できる訓練だった。

 だいぶ映画みたいな動きだったけど……私はそんなこともできるんだ。





 VR訓練終了。ここは人と変わらないけど、良い汗かいた。

 だるーんと就寝するのかなと思ったら、





<コトリ>

《という訳で、ブレード訓練行こうか》




「コトリちゃーん!?!?」




 コトリちゃんはスパルタでした。

 今、あの鬼畜シミュレーターの、一番鬼畜な訓練。



 ブレード戦闘訓練、phase5

 対eX-W戦闘。



「ガチタン相手でブレード一本とか無理じゃん!?

 しかもこのアルゲンタヴィス、内装以外初期フレームじゃん!?」



 鬼畜条件である。しかもまたなのだこれ。


<キリィ>

『頑張れホノカぁ!ワシは高みの見物しとるぞ!』


「畜生、いいなー!」


<コトリ>

《あの子はむしろ得意だし、もっと難易度高いとっつきクリアだぞ?》


「そんなこと言ったって!

 相手はガトリングモンスターみたいな両肩ガトリングガチタンで!


 こっちはなんか、ちっちゃいレーザーブレード一本じゃん……」


 おててには、湾曲した柄の手持ちタイプのヤーツ一本……


<コトリ>

《正確には、荷電粒子ビームブレードだ。

 私のだーい好きなO.W.S.製、『03PB T-cheloniformis』。

 テリジノサウルスの名前を持った通称……》


「『短剣(ダガー)』でしょ!!

 それ何度も聞いた!!でも知らないもん!!

 なんでこんな短い奴でやるんだよ!」


 バシュンとレーザーだかビームだかのピンクの光を放つんだけど、メタクソいつものレーザーブレードより短い。


<コトリ>

《短いけど》


「威力がすごい!それも聞いた」


<コトリ>

《じゃあ、始めようか。今日はクリアできるかな?》



 いーやー!


 って言っても『START!』の文字と共に、あのガトリングモンスターガチタンがくる!!


 来た!!

 雨霰のガトリング弾だ!!

 回避しな……きゃ……?



「───え?」



 あれ?遅い??

 あんだけ雨霰のガトリング弾達が、遅く見える。

 遅く見える速度の中で、私の操るほぼ1001Bフレームのシミュレーター用アルゲンタヴィスは、動けた。


 右にアサルトブースト、上へジャンプ……

 コイツ……こんな簡単に近づけた??


<コトリ>

《これが本来君が無意識に使っていた強化人間(プラスアルファ)の、本当の知覚速度だ》


「え?」


 あの食らうと動けなくなるバズーカが、本当遅くて……もう目の前に機体がいる!


<コトリ>

《言っただろう?思い込みっていうリミッターがあるって。

 君は、弾丸が速いだとか、避けられないって思い込んでただけ。

 実際は、内装こそまともなヤツでも、重装型な中量2脚の1001Bフレームの動きなら、なんとか避ける事もできるし、》


 ブレードを振るう。

 荷電粒子だかなんだかの高エネルギーな刃で、ほぼ一撃でタンクが斬り裂かれる。



<コトリ>

《タンク相手じゃ遅すぎるのさ》


「…………!」


 勝った。

 一発も当たらず、ほぼ一撃で。

 …………あのコトリちゃん相手に散々やった、私の本当の身体のスペックを使った動きの感覚で、eX-Wが動かせた。


「…………すごい」


<コトリ>

《身体を魔改造させたんだ。

 このぐらいの性能は約束するって、前も言ったじゃないか?》



 あはは……こりゃ確かにすごい!


<コトリ>

《にしても、何度も言うけど才能あるよ君。

 傭兵(スワン)辞めても身体そのままにしたら?》



「……何に使うのさ日常で」


 ただ、あらためて思った。


 強化人間(プラスアルファ)、そりゃ傭兵(スワン)やってたらみんな、この力にお世話になる人増えるよそりゃ……!



「…………次に何が現れても、なんかいける気がする」



 強化人間(プラスアルファ)、やっぱりすごい。

 次の任務がなんでも、なんとかなるよ多分……!




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