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MERCENARY GIRLs/EXCEED-WARRIOR  作者: 来賀 玲
Chapter 2

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MISSION 16 :平和に終わるはずがない





 はい、怪しい任務を受けた傭兵系美少女大鳥ホノカちゃんでーす。

 総額160万cn越え!とっとと500万cn手に入れて傭兵辞めたい私には魅力的な額です!




「でもまさか、こんな暇とはねー」



 そう、

 目的地まで後一日らしいこの潜水輸送艦の中で、私は愛機のペラゴルニスの脇でぐでーってしてます。



《うっそでしょって思うぐらい、追撃来てないねー》


 私の頭のある辺りで、相棒の30センチぐらいの背丈のデフォルメ可愛いロボボディのヒナちゃんも、流石にグデーとしてます。


 艦内では、真面目なインペリアルの兵士さん達が真面目に訓練してたり体鍛えてたりしてます。

 私も朝晩は真面目にしてるけど、日中はグデーとサボって……だったら良かったんだけど、実はこのグデー状態立派な任務なんですよねー。


「まーまー、

 今、何かあった時出撃できるのはペラゴルニスだけなんすし。そうしたら運よければ追加依頼、運が無くても平和に到着で終わるっすよ」


 実は、こちらの頼れる4つ腕強化済み褐色整備員女子なユナさんの、それはそれはもう分かってやってた配慮で、今真面目に出撃できるeX-Wは私の新愛機、ペラゴルニスちゃんだけなのです。

 一機だけバラさずに、今も真横でその時を待っているんだよね。


《フロートは海上だとかなり強いからね。

 足場が船以外ない場所でも飛んでいられるのは強い。

 なら、何かあった時、出られるようにしておくか。

 良いね、その判断》


「あざっす、ヒナちゃん」


「…………でも不気味なぐらい順調だよねー。

 朝晩の持ち込んだ鬼畜ゲーシュミレーター制覇しそうなぐらいじゃん」


「てか、持ってきたは良いんすけど……アレ良いんすか?」



 そう、私の私物、結構お高いシミュレーター装置ですが、今や同じ艦にいるインペリアルの正規兵のeX-W乗りの皆さんから果ては同業者まで、訓練という名の暇つぶしに大人気……



「クソゲェェェェェェェェッ!!」


「人間を!!過大評価するんじゃない!!!」


「なんで敵だけ同じフレームでここまで性能違うんだよ!!!」


「キェェェェェェェェェ!!!」


 台パン、絶叫、猿叫、号泣……うーん……聞いてて心地がいいねぇ♪


「フフフ……苦しめ……苦しめぇ……!

 普段の私の怒りを知れぇ……!!

 もっと良い成績目指そうと気迷えぇ……!

 お前達の自尊心を壊し、苦行を強いるシュミレーターでもっと苦しむのだぁー……!」


《じゃ、今夜寝る前はブレードオンリーシュミレートやろうずぇ……?》


「キェェェェェェェェェイ!?!」


 嫌だー!!

 もう私はヒナちゃんおすすめとか言う全然当たらない短すぎるレーザーブレードで戦うの嫌だー!!

 あれマジでなんなん!?!使いにくすぎじゃん!!





「────とか言っている間に、その使いにくいブレードのシミュレートまで終わっちゃった……」



 今日も……平和でした。


 そして、もうそこからはローテーションみたいな動きで、いつもの格納庫の一角に一人用マットを敷いておやすみなさいの時間。


「…………恐ろしいぐらい今は平和だね。

 前払いが嘘みたい」


《でも目をつぶって、また開けたらどうなっているかは分からない。

 傭兵(スワン)ってそういう物だよ》


 ヒナちゃんを頭の上に置いて、寝る前の会話。


「地球出身のベテランさんの言葉は違うね……」


《生前の話さ》


「…………生前、か。

 ヒナちゃん、なんでそんな強そうなのに死んじゃったの?

 聞かないほうがいい話題?」


《もう聞いてるじゃないか。

 …………ま、いいか。

 じゃあ、寝る前に昔話でもしてあげるよ》


 おぉー、昔話!私昔話大好き!

 おばあちゃんに小さい頃よくねだってたもん。


《70年前、あの時ようやく強化人間(プラスアルファ)は一つの完成を迎えたんだ。

 それまでは、強化した性能によって、徐々に脳や神経がダメージを与えるせいで、強化人間(プラスアルファ)の寿命は今よりずっと短かった。

 力か寿命か。私は力を選んだ。

 でも……私は私自身を手術できる立場でもあってさ、どっちも欲しかったよ。


 それでも…………運悪く、寿命も手に入れられる寸前で、戦いの中で死んだ》


「…………」


《悔いはないんだ、意外かもだけど。

 私が死んでも、私が残した物はたくさんあったし。

 何より、戦う相手が満足いく相手だった。

 それに…………私は勝った。あの子に勝って死んだんだ。

 今頃、地獄の本人は殺した相手と仲良く焼かれてるさ。

 それで良い。私自身の記憶やら諸々の物を再利用なんてされてるけど、悔いはないよ。

 私は今は、君の頼れる相棒のヒナちゃんだ。

 そうなる前は、そこそこ最強の傭兵(スワン)で強化人間だったってだけ》


「…………結構壮絶だね……」


 こんなちっちゃい身体になる前は……ヒナちゃんはそんな人生を送ってたんだ……


《ま、過ぎたことだけど》


「すごい言い切り……」


《別に悔いを残す生き方してないしね。

 色々……話すと長くなることもしたけど》


「…………ふーん。

 それはまた別の日の聞こうかな……もう眠いや」


《…………怖くないのかい?》


 ヒナちゃんが、突然そんなことを聞いてくる。


「……何が?」


《君は傭兵をやりたくないんだろう?

 でも、そのためには危険な傭兵業をしてお金を稼ぐ必要がある。

 その捩れた生活……その果てでもある今の任務》


「……怖いに決まってんじゃん、思い出させちゃって」


《じゃあ、なんで眠れるんだい?》


「……違うよ。無理してでも寝るんだ」


 ……そう、ここは私がただ薄情なだけじゃない理由があったりする。


「あんまり言ってなかったけどさ……

 昔、初めて私の両親のことでからかわれて泣いた日、寝れなかったことがあったんだ。

 そしてら、ばあちゃんに怒られたんだ」


《……怒られた?》


「『お前が不幸になってどうするんだい?

 あのバカのせいで、不幸なままで悔しくないのかい?

 お前は、あのバカの子だからこそ、幸せに生きるんだよ。

 ちゃんと食べて、寝て、泣いた分笑って、幸せに暮らしな!

 周りがなんと言おうとお前が幸せに暮らすのは、権利だし義務なんだよ!』って。


 …………そうさ、なんでたかが怖い傭兵の任務なんかで、快眠が邪魔されなきゃならないのさ」


 ごろん、と寝返りを打つ。


「たとえ悪党みたいなミッションやっても、眠かったら8時間は寝てやるんだ。

 身勝手、薄情、なんとでも言えってさ。

 どのみち……私は、そういう酷いことしまくっていかなきゃ酷いことを辞める事はできない。

 ヒナちゃん、本当の自分は地獄行きって言ったでしょ?

 でもそれ死んだ後の話だってさ……私も同じ。


 私はさ……どんな形であれまぁ幸せでしたって言える人生にしたいだけなのさ。


 顔の知らない親の借金も、そのせいでやってる傭兵も、返してやるから足引っ張んなってね。

 私の人生の邪魔はさせない。


 適当に幸せな人生ってやつを手に入れてやるんだ。

 そのためにも……考えてドツボにはなるぐらいなら寝る。


 それが私。今は傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃんだ。

 文句ある?」



《自分で美少女とかいう辺り強いな君》



 うっさい!クラスではそこも生意気っていじめられた程度には可愛いもん!


《…………残念だな》


「何が?」


《君は傭兵の才能がすごい。

 ランク1も夢じゃないからね》


「それってそんなすごい?」


《…………確かに、別にいらないか。

 君は君か。そんな肩書きとか称号に左右されない、頭が残念な君なんだな》


 ヒナちゃん、微妙にけなしながら私の頭をわしゃわしゃしてくる。


「……褒めてるの?」


《バカにしてる♪》


「生意気チビロボめ!」


《フフフ……でも相棒が君で良かったよ。

 ま、明日から頑張ろうぜ……死なない程度にさ》


 全く、嫌な相棒だこと!

 また明日から、このスパルタで一言多い緋那ちゃんと一緒に戦うのか……


《…………ねぇ、最後にさ、

 私もトラストも、君らに肝心なこと教えてないんだよ》


 ふと、ヒナちゃんがそんなことを言う。


「……で?」


《でも、その肝心なことは任務にとってノイズにしかならない。

 私は、その時まで喋る気はない。

 …………私の事、信じられる?》


 うーん……とりあえずデコピン。


《いて、》


「今更何言ってんだか。

 どーせ私に言ったって理解できないからでしょ。

 勝手にバカにしてろ、相棒め」


《…………そっか。

 おやすみ、相棒》



 …………そこからは、すぐに寝た。

 夢も見ないでぐっすりと…………








 ───ジリリリリ!!


 目覚ましみたいなやばい警報音。

 むくりと起きて、あくび混じりに私は服を脱ぎ始める……


「……今何時……」


《2時》


「夜中の……?」


《そう……》



 いつものピッチリインナーの、パイロットスーツに着替え始める。


 こんな時間に仕事か……ふわー


「行きますかヒナちゃんや」


《顔だけは洗いなよ……》


「へいへい相棒……」



 ああ、出撃だ……



           ***

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