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MERCENARY GIRLs/EXCEED-WARRIOR  作者: 来賀 玲
Chapter 2

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MISSION 6 :アニメじゃないけどもっと良い流れあるよね??










 大鳥ホノカ、傭兵(スワン)辞めるための傭兵(スワン)生活、驚きのまだ二週間目、




「こ、こんな事が……あって、良いんすか……??

 救いは無いんすか……??」



 脚が撃ち抜かれたアルゲンタヴィスを前に、

 そして昨日の、クソユニオン依頼のクソ収支の話を前に、ユナさんは4つの腕を震わせて、思わずって感じに言葉が漏れます。



「トラストは、傭兵と依頼主との間にいかなるトラブルがあったとしても干渉はしません。

 しませんが……これは、その……私が言うのも変ですが、心が痛みます……」



 美人ロボットでもあるオペレーターさんですら、本当に心からそう言葉をかけて目を逸らす。


《…………チッ、クソが……》


 コトリちゃんのデフォルメ30cmロボボディから発せられたと思えない、罵倒が妙に響く。


 そりゃそうさ……


「なんで……真面目に戦って勝ちまでして……

 バカな友軍が勝手に死んだ補償までさせられて……

 誤射で、私のアルゲンタヴィスが壊されて……自腹で修理しなきゃいけないの…………??」



 私の率直な疑問に、皆が俯き目を逸らす。


 ダメだ。

 ダメだ、もう耐えられない、私もうムリ!!




「こんなの……こんなのっておかしいよ!!

 弾薬費が自腹なのは分かる!

 修理費が自腹なのも……でもね!?

 これ、敵に撃たれたんじゃ無いよ!?味方だよ!?

 なのにその味方の無能で出た損害を私の報酬から引かれて……

 半分以下の報酬ってなんだよ!!

 やってらんないよ!!!

 ねぇそうでしょ!?!」



《…………ねぇ、ホノカちゃん。

 今、どうしたい?》


「どうしたい?

 どうしたいだって!?!

 決まってるよ…………ねぇオペレーターさん、ユニオンへの襲撃依頼はない?

 なるべく損害を出せるようなの!!」


「…………現在、インペリアルとユニオンの小競り合いはオーダーが介入した事で小康状態です。

 あれだけあった依頼が落ち着いております」


「……あーッ!!」


 ガン、と蹴ったゴミ箱が、強化人間のパワーのせいでガレージの高い天井まで飛んで引っかかる。

 …………とりあえずゴミ箱代はユナさんに無言で渡して、でもまだモヤモヤした気持ちのままの私がそこにいる。


「…………たしかに、ゴミ箱よりはユニオンに当たるべき物っすね。

 にしても、ケチとは聞いてたんですがユニオン、思った以上のドケチっぷりっすね」


「ユニオンは、経済的・財政的には安定して成長している勢力です。

 ただし、内部の貧富の格差はご存知の通り激しく、一部の大企業勤めや上場企業のグループの庇護を受けた方々が大きく資産を増やし、その下の大多数が今日も生きていける程度の経済を回す事で勢力の資金が増えております。


 ……ただし、今までは軍事力に関しても、内部のあらゆる思想……特に平和主義の過激派が足を引っ張るせいで、3大勢力の中ではあまり強く無かったはずですが……ここにきて我々トラストが本来は受け取っていた人的資源を確保し、軍備を増強しているようですね」


「…………もう少し早ければ、私もユニオンの軍で安定した公務員生活出来たのかな。


 何もかも今更なんだよ、ユニオン」


 あーあ、前から嫌な場所だったけど、今はもっと嫌いな感じ…………



「あらあら、ちょうど最悪な話題の途中でしたのね」


 と、そんなタイミングでマッコイさん登場……


 したのだけど、なんか浮かない顔です。見て分かるほどに、へそ曲げてるって感じの表情をいつもの黒髪美人な顔に浮かべてます。


「……どうしたんですか、マッコイさん?」


「……ああ、顔に出ておりましたのね。

 まずは、最初にごめんなさい大鳥ホノカさん。


 どうも、すぐにはアルゲンタヴィスの脚が直せそうにありません」


 なんだって!?

 みんなも驚くとんでもない言葉が出てくるとは思わなかったよ、もちろんみんな!



「何あったんすか!?」


「それがねぇ、ユナさん?

 どうも、小競り合いの結果の軍拡で、全陣営が自軍のeX-W部隊編成のために、そして運悪くトラストも大量の新人傭兵(醜いアヒルの子)達を確保しているせいで、初期機体の2大巨頭フレームが足りないみたいなの。

 特に1001Bの脚が。

 二週間は、部品も入らないそうですわ」


 そんな……!

 アルゲンタヴィスの脚がないの!?


「何やってんすかマッコイさん!!

 アンタ、そういうの確保するぐらいしか取り柄無しなんすからなんとかしてくださいっすよ!」


「だからここまで申し訳なく頭下げるしかないのよもう!

 ごめんなさい、ホノカさん。

 金さえ払えば、などと言っておきながらこの体たらく……お恥ずかしい限りです」


「……最悪だ……あー、これじゃあ傭兵家業辞めるための金が遠のくよぉー……」


 まさか、せっかく色々新しくしたアルゲンタヴィスが、そんな理由でもう出撃不可能とはなー……


《…………元気出しなよ。ムカつく気持ちもあるけど、まだ生きてるんだ、チャンスあるさ。

 チャンスといえば、どうせなら脚変えちゃおうよ。

 2脚にも色々あるしさ、ちょっとお金心もとないけど、修理費は出してるんだし、今の壊れた脚下取りに出してさ》


「ホノカちゃん、オイラからもこの通り、うちの店が追い打ちかけてすんませんっす。

 まぁアレっすよ、ホノカちゃんの腕なら、次はがっぽり稼げるっすよ!!」


「だと良いけどなー……」


「そうですね。

 金策というのなら、アリーナもトラストは一般市民の心の安心を守るために開催しておりますし、


 一応ホノカさんは使えるフレームパーツなら一式持っておりますしね」







 ………………………………






「え?そんなの持ってたっけ??」


 私記憶にございませぬが??


「あれ?

 たしか、先日、ガレージに運ばれてきたはずですが?」


《え、何それ初耳?》


「ホノカさん、もしや他のショップで!?」


「そんな暇なかったからマッコイさん落ち着いて!」


「んなもんありましたっけ!?

 ホノカちゃんのとこのガレージ、共用で狭いっすし多分パンパンでこっち回ってきてるはずっすけど!?」


「こうしちゃいられませんわ!!

 一体ワタクシの目の届かないところで何がやってきたのか調べないと!!」


 私もめっちゃ気になってきた!!

 探せ!!私が持ってるらしいフレームパーツ!!






 なんと、二時間後、



「こっちは、あの最初にもらったコアしかない!!」


「1001Bコア以外にフレームないって!?」




「ぅありましたぅわぁぁぁぁぁぁ!!

 こぉんなところにぃぃぃぃぃ!!!!」




 キエーと奇声を上げるマッコイさんの声に釣られて、みんなでそこへ向かう。


 見ると、少しだけ整理途中のショップのガレージの一角に、ガンガンマッコイさんが藁人形でも打ち付けるかの如く叩くでっかいコンテナと……アレは!?


《あ、サングリーズル!

 私のだーい好きな、サングリーズル!!》


「さっきの任務で拾ったやつ!!」


「なんですってぇぇぇぇ!?!?」


 と、くるりと振り向いたマッコイさんが、四つん這いのまま凄まじい速度でこっちにきた!?怖い!!


「なんでそんなもの拾ってきますのぉ!?!

 ワタクシのお店はたしかに!!1001Bは入荷できませんでしたが!!それ以外は全て品揃えも在庫もありますのにぃ!!」


「分かったから怖いって!!

 逃げるよその食い気味で呪殺しそうな目は!!」


 この人、このホラーな性格なかったら普通に優秀で美人な商売人なのになぁ!


「マッコイさん、アンタ……また拾ったヤツの記憶飛ばしたんすね?」


 ふと、コンテナに右腕の片方の掌を押し当てていたユナさんが言う。

 途端、びくりと動きを止めるマッコイさん。なになに??


「……アンタ、いつもそうっすよね。

 他の傭兵(スワン)の拾ってきたブツも、こちらにとって不都合だからガレージに来るもんならすぐ奇声をあげて気絶して記憶を飛ばす……

 はぁー……ったく、だから優しいホノカちゃん以外利用しないんすよ、ここの店ぇ!?」


「だって、だってぇ……!!

 拾うなんて卑怯ですわ……うぅ、ワタクシのお店の商品だけで出撃してほしいの……」


 ガチ泣きするマッコイさんを、とりあえずはよしよしと頭を撫でなだめてはおく。

 まぁでも、そこまでしなくても良いじゃんはこの場誰もが思うし、自分から忘れるレベルなのか……怖。



「さて、開けますか。

 誰も知らなかったホノカちゃんの、もう一機」



 おぉ、いよいよ……!


 コンテナの扉に屈強な4つの腕を近づけるユナさんに近づいて、その時を見守る。


 重いロックを外して、ギギギと扉が開いた。



「…………あ!」



 それを見た時、私はこれをいつ拾ったかを思い出した。


 巨大な自立兵器、小型を生み出すプラントでもあった、あの巨大な海蛇のようなもの。


 アイツを倒そうとした時現れた、eX-Wのパーツをまとった自立兵器。


 アイツは、

 戦車(タンク)だった。


 そして、それと戦う前に、私たちは敵がeX-Wのパーツを解析しているのを見た。

 そこにあった、一番大きなコンテナに、フルトンマーカーを撃ち込んだ。


 アレだ。間違いない。



 ───コンテナの中には、

 戦車(タンク)があった。



 大砲は乗っかってない、タンクのキャタピラがあった。



戦車(タンク)だ……!!」


 思わず呟いてしまう。そんな迫力というか……魅力があった。


《あー……エンフィールド製じゃない……

 リボルバーリバティー社製、》


「TLT-01『モンスターマシン』……!!

 リボルバーリバティー社、唯一のタンク脚にして……!

 大傑作の一つ……!!」


「…………すごく、おっきいっす……!」


「……それだけではないみたいですわね……皆さん、奥を見てくださいな」


 マッコイさんに指さされた先には、

 頭と、腕、

 それもなんだか、堅そうで大きいのがあった。



「…………ホノカちゃん、アルゲンタヴィスは修理できそうに無いっすし、コレ……組み立てちゃわないっすか……?

 内装、アルゲンタヴィスから組み込んで……!」


「…………うん」



 ユナさんの提案通りにして、一時間後。





「うぉ……これは……!!」




 ───それは、機動兵器(エクシードウォーリア)というには、あまりにも戦車(タンク)すぎた。


 大きく、分厚く、重く、そしてガチガチすぎた。


 それはまさに『ガチタン』だった。


 ガチガチの重装型タンク脚eX-W、



 ガチタン、だった。



「コアパーツは、傭兵が最初に配られる中量級の癖に、手堅い防御とコックピットの『CMM-1001B』。

 脚はご存じ『TLT-01『モンスターマシン』』

 腕は、エクレールメカニクス標準フレーム、『MGN-01Z LOCKET-PUNCH』。

 重すぎるしエネルギードカ食いの代わりに、実防、エネ防、Eシールド出力全部が高い、防御に特化した腕っす。

 頭は脚と同じくリボルバーリバティー社製『QH-01『レーザーポインター』』。

 カメラ性能も良いしセンサー系全部入ってるしレーダーも内蔵……同社から言わせれば柔らかいっていう頭ですけど、十分硬い頭っす……


 いやぁ……とんでもないガチガチに防御固めた重装甲タンク……ガチタンが出来上がったもんすね……!」



《しかもさ……サングリーズル持てちゃってる。

 いや、これはレイシュトローム製だけど、元は分離前のエクレールの技術の流れの武器か……しっくりくるね》



「…………戦車じゃん、まさに……!!」



 もう何度も言うけどね、戦車じゃんこんなの。

 これをeX-Wと言うのか……!



《…………決めた。

 たしか、一人5機分ぐらいはeX-W登録できたよね?

 アルゲンタヴィスの脚決まるまで、この2機目の機体を使おう》


「2機目……そっか、内装さえ交換しちゃえば、2機目になるか……!」


《だから、コイツの名前も決めた。

 ティタニス。恐竜絶滅後、地上を闊歩した巨大な鳥、『恐鳥』の一体。

 今日からこのガチタンは、ティタニスだ。

 多分、今のままでも適当に戦って勝てるぐらい強いぞ?》


「ティタニス……!!」



 昔のアニメだと、こんな情けない理由と経緯で新しい機体を手に入れるとかしたら、ネットは炎上したのかもしれない。


 でも現実は、意外な展開で私に新しい機体が手に入った。


《ティタニスはサングリーズルをメインに使っていこう。

 エネルギー武器は弾薬費かかんないから、案外お金も貯まりやすいし。

 ガチタンアセンなら、ちょっと脚の速さが必要な任務はキツいけど、大体はなんとかなるしね》


「……いいね。最悪色々使ってダメなら売っちゃえばアルゲンタヴィスを強化できるし!」


 よし。じゃあ、



「よろしく、ティタニス。

 しばらくで終わるかもしれないけど」



 ちょっとの間は、この新しい機体に頼ろうか!






 ……そんな決意をした中で、ちょいちょい服を引っ張られる。


 見ると、オペレーターさんが服の端を引っ張りながら、ちょっと泣きそうな顔でこちらを見ている。




「…………次は、私のお名前もお願いしますね……?」






 ……ごめんて、オペレーターさん。



          ***

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