MISSION RESULT :戦いは広がる物なのです
大鳥ホノカちゃん、親の借金のせいで傭兵生活、3ミッション目!
なんとか達成して、ボロボロの機体だけど生きて帰ってこれました。
そんな訳で、やってきたインペリアルの輸送船の上で、生き残った先輩スワンさん達と、インペリアル正規軍のeX-W部隊の方々と一息ついてます。
「オルトリンデ、派手にやったようですね。
ツッコミ役がいない場所ではコレですか」
「悪かったって、ノルンちゃーん!
まさか、鋼鉄のAIでも心配してくれたん?」
「なんでですかキリィさーん!?
片腕なくなるなんて何があったんですかー!?」
「じゃあかしいんじゃ、イクコ!こんなん強化人間じゃ軽症じゃろ!?」
「良いなぁ……あのソレイユモデル達……個体名が付けられてて…………」
ウチの美人アンドロイドなオペレーターさんが相変わらずなのでむしろ良かったです、はい。
よすよす、生きて帰れたし、そのうち考えてあげるから今はオペレーターさんで我慢してね。
「ところでオペレーターさん、」
「はい?」
「ちょっと小耳に挟んだんだけど、本当はインペリアルの艦隊が来るはずなんだよね?
何故か、まぁ来てくれて嬉しいけど、輸送艦だけって、どゆこと?」
《何かあった臭いがぷんぷんするよ?
まぁもうロボットボディだし、臭気センサーないけど》
「なるほど。
実は仰る通り何かあったのです」
と、オペレーターさんが説明しようとしたタイミングで、
「え!?
今、我がインペリアル艦隊が、別のあの巨大不明自立兵器と交戦したとおっしゃいましたか!?」
そんな、何かにあたりそうな言葉が聞こえてくる。
もちろん、そんな気になるセリフはみんな注目するし、声の主は聞き覚えがあるインペリアルの部隊の隊長さん (名前忘れた)。
早速先輩傭兵さん達も気になる会話の中心に集まるのであったー……
「君らが倒したアレだがな、呼称を『シーサーペント』とする事をわがインペリアル皇帝陛下が決定したのだが……
君らの突入報告時、言えなかったが我が海上騎士団第2艦隊は、旗艦空母『ナポレオン1世』のトラブルで出遅れたところだったのだ」
随分くたびれた制服のおじさんが、これまたくたびれた感じの表情で頭を掻きながらそう説明する。
多分偉い人ではあるのかな?
「我々は……助けが来なかった中で、かろうじて勝てた訳ですか?」
「言い訳もできんなぁ……面目ない。
こんな面で良ければ何発でも叩き込んでも良いぐらい申し訳ない話だ。
だが、結果は出撃が遅れたおかげで反転し対処が出来た。
何より、君らが『シーサーペント』攻略の糸口を掴んだおかげで、なんとか対処は出来た。
出来たんだがなぁ……」
偉いおじさんは、くたびれた顔で余計に頭をボリボリ掻きながら唸る。
そして、非常に言いにくそうに、続きにあたるとんでもない事を話した。
「オーダー領域の海側に面しているバリアがあるだろう?
あそこが、一部だが突破された」
「え……!」
バリアが……!?
それって、つまり人類生存圏に、自立兵器が!?
「突破!?」
「確定情報だ……こちらも直ぐ近くは我々のバリア外の領域だったからな」
「それで、被害は!?」
「そこが一番酷いと言うだけで、ほかもだいぶ酷い。
我が海上騎士団第1艦隊も、半数が中破、3隻は大破轟沈だ。
海側から、ここも含め4箇所から攻められた。
この馬鹿でかい海蛇は4機あった!
内一機は、バリアに突っ込んだんだよ。
頭から……!」
なんてこと……!!
じゃあ私達が必死にぶっ壊したこれ……その為の装置だったんだ!!
文字通りバリアを食い破るための……!!
中にびっしり自立兵器も積んで……!!
私達が、倒した相手の大きさが、今初めて実感となってのしかかってきた。
周りの先輩方も、生き残った二人も隊長さんも……そんな顔してる……するでしょそりゃ……!
「…………オーダーは、どうなりました?」
「……被害が軽いとは言わんが、君らの見つけた弱点をつたい、倒せたそうだ」
「流石はオーダーか。
ユニオンよりはマシと言うべきか」
「いや────どうもオーダーはこの事態も『予定通り』だったらしい」
え?
「────我々の艦隊の支援は速かった。不自然なぐらいに、な。
オーダーからの依頼で、傭兵5名が各地に即派遣されて来たのだ」
「5名?
我々は、正規兵10名で、同じ数の傭兵がいて初めて一体倒した!
5名で何が出来ると!?」
「第1艦隊を救ったのは、我らが『ブラッドハントレス』
第2艦隊は『オールドレディ』『童子切』。
オーダーの突破された場所には、『ハピタン』、
そしてあの『フォックスファイア』がいたらしい』
何者、かは私は分からない。
ただ、近くの傭兵の先輩方は大変驚いた顔をしていたから、もしかしてすごい人達……?
「オイ、おっさん!
滅多な事じゃそろわん名前ばっかりやんけ!?」
「後、『ハピタン』じゃなか。『ハピ☆タン』じゃ、ありすちゃんさんのeX-Wは」
「先輩方、一体何者なんですか?その人たちって?」
「新人、少しは覚えときぃ?
傭兵ランク、
1から5の、最強のトップランカーたちの名前ぐらいは」
な……!!
ランク、1から5!?
アレだよね?
私がいるまぁそれなりーな傭兵ランクBの上のー、
実力も経験も良い感じーな傭兵ランクAの上のー、
傭兵全体で50人しかいない、ランカーと呼ばれたらその人たち!の中でもー……
「え、あの、オルトリンデ先輩が、」
「ランク18ー」
「でしたよね……キリィ先輩が、」
「ランク23で文句あるか?」
「で、トルペードさんが、」
「そうだよ!!これでもランク10よ!!10!!
任務達成率は高いし!!生き残りまくってんのさほぼ生身で!!
アリーナは!その5倍の数だけど、だけど!!」
最後半泣きで言うトルペードさん、二人の先輩に「ロケット外せば行けるって」「ノーロック武器オンリーは舐めすぎじゃけぇ」と口々に言われていた……
考えても見れば、
私はほとんどこの3人の後ろくっついていっただけ。
サージェント・トルペードさんが一番内部をぶっ壊していたし、オルトリンデさんの的確な指示、キリィさんの土壇場の活躍で、ほぼあのシーサーペントとかいうバカでかい自立兵器が倒せたんだ。
そうだ。生き残ったのはある意味、この人たちが強かったから。
あれ以上の……?
この人たち以上の実力者。
一体どんな化け物なんだろう?
やっぱり、この仕事嫌だわ。
調子に乗るなんて事、一切できないんだ……
怖い…………もっとゆるく適当に、たまにしか人に迷惑をかけない仕事で生きていきたいよ……
改めて……私はこの短い間にそんな思いが強くなる。
「……あんな相手を……私達より少ない数で……?」
エーネちゃんも、右に同じってヒシヒシ伝わる恐怖におののく感情が漏れてた。
「そうか……ここの傭兵は、新人もいたかぁ。
恐ろしいだろうが、問題は、なぜそんな恐ろしい実力者をすぐ用意できたか、だ」
偉いインペリアルのおじさんの言葉。
考えてもみたら、おかしい話だよね?
だって、そんな凄すぎ傭兵がすぐに集められる?
オーダーは確かに、3つの陣営じゃ私のいたユニオンなんかよりお金持ってそうだけどそれだけですぐ集まってくれる?
凄い傭兵。強すぎても暇してる事も多いって聞くけど、それにしたって集合速いよね?
つまりは……
「まさか、オーダーはこの事態を予測していた。
そう、陛下や元老院はお考えに?」
「十中八九、そうだとのお考えらしい。
お前ら傭兵にも、当事者として隠し事なく教えておこう。どのみち噂はもう止められん。
我がインペリアルは、少なくとも我らが皇帝陛下は今回の事態をオーダーの『管理者』は知りながらも、事態が起きるギリギリまで見逃していたのだとお考えだ。
そう、奴らの管理地域のように、
全ては、『予定通り』だったと言う事なのだ」
────コンビニの漫画の棚にたまにある世界の陰謀とか宇宙人の証拠みたいな本の話だ。
でもなんだろう、数日前の私にとっても思い出深い、オーダーの任務の前後で会話した管理者AIの一機を思い出す。
ああ、そういえば、なんか『世間話』もしてたな……
「だが、気に食わないオーダーよりも問題がある!
ユニオンだ。
ユニオンが、数十分前外交ルートを通じて、バリア外の我々の開拓した土地の一部の売買を交渉しようとして来た!
今更どの面を下げてか!
「な……!!
ユニオンめ……散々我々のバリア外部開発を邪魔して来たくせに……!!」
…………私の地元の陣営の話である。
こりゃ、最初から自分らの手で外を開拓して来たインペリアルの皆さんが怒るのも無理ないよね……
もっと他に金かける場所あるでしょ……えぇ……?
というか、このタイミングで??
何考えてるんだよ……
「おーおー、随分火種が多い話やな。
こら、ウチら忙しくなるで。『繁忙期』や」
「……傭兵が忙しいとか、碌でもないなぁ」
「ワシら選んで殺しとるといえのう。
なんとも複雑な話じゃけぇ」
「お前ら傭兵でも、仕事が増えて喜ぶどころかそんな顔をするか。
まぁ、ロクデナシにも良心ぐらいはあると言うことか」
酷い言い方ー。
まぁ否定できないけどね、おじさん。
私たち、ある意味で金次第の中立勢力なんだし。
「…………そうだ。仕事といえば、そろそろ仕事の話をしないとな。
傭兵たち、追加報酬はすぐ振り込む」
おっと、そうそうこっちが私たちにとっては肝心な話。
勢力争いも人類の威信を賭けた戦いも、私らにとっちゃ、お金儲けの種なのだから。
「お前たちがいなければ、我々は勇敢なだけの突撃部隊としてその死を笑われただけになっただろう。
私も、生き残れた。礼を言う。
だが、お前らロクデナシは礼だけでは満足しないだろう?
全員に10万cn、すぐに振り込もう」
「待て、ブロイルズ三等尉官騎士!
まさか、部隊の予算5ヶ月分から出す気か!?」
「我々の勝利に比べれば。
払わないのも、我々の威信に関わるでしょう?」
「違う、払うなとは言わん。
仮にも君らは、インペリアルの英雄なのだぞ?
我がリッターオルデンの特別会計はこう言う時のためにある。
上に押しつける事も考えろと言うのだ」
あらまぁ、太っ腹。
でも確かインペリアルって一回財政破綻してなかったっけ?軍拡で。大丈夫?
「まぁ、払ってもらえるなら、なんでも良いですけど」
一応は、私はこう言うしかないけど。
「心配するな傭兵!
お前達も、勝利に貢献したのは理解しておるとも!
よくやった、このロクデナシども!
追加報酬は当然の権利だ。振り込んでおくから確認しておけ」
なら、この件は終わり。
周りの先輩達も、納得した顔でいるみたいだし。
「毎度ありでーす。
で良いんでしたっけ?」
「そういえば、お前はアリーナにいたただの新人だったのにな。
良い腕だよ。次回は敵じゃないことを祈りたい」
インペリアルの隊長さん、意外と嬉しいこと言ってくれるね。
「そう言ってもらえて嬉しいですけど、まぁ私も傭兵始めたてなので。
次は弾薬費修理費かかっても良いのでもうちょい楽な任務お願いしますー」
「それは約束できかねるな。
また、前払いかもしれないな。この情勢では」
ぐえー。
それは評価高いと言われるべきか、それとも面倒を押し付けられてる系と思うべきかー!?
「新人ちゃーん、まぁお互いこっから忙しくなる身で大変やなー?」
「ま、ええ腕は間違いないのぉ。
死なずに頑張れ」
そして気がつけば、先輩二人に両脇からガッチリホールドされてわしゃわしゃ頭をいじられる私であった。
見た目こそモデルみたいな人なのにやっぱ中身が言動通りだよこの人ら!
「あはは……がんばりまーす」
「あ、そうや。
どうせ全員機体がめっちゃくちゃで、すぐ仕事も出来んやろ?
他に用ないなら、打ち上げでも行こうや。
割り勘やけどな!」
「あ、いいじゃーん!!
焼肉でも行く?ここはビールで乾杯っしょ!」
「トルペ姉さん、ワシら未成年が大半じゃ。
せいぜいドリンクバーで乾杯が限界じゃろ」
「あ、じゃあ、いつもの「お好み焼き真拳」いかへん?
あそこ食べ放題やし、ウチみたいな小学生は安いし」
「身体だけは成熟しとるネオ・デザインドが何言っとるんじゃ!!大人料金払え!!」
勝手に盛り上がらないでー!
というか、普通に自炊で安く済ませようと思ったけど……これ強制参加系の空気??
やだなーもう……はぁ
「あ、エーネちゃんはお兄さんのところ行かなくて良いの?」
「うん?
……そうだなぁ、今日はレンくんには悪いけど、打ち上げしたい気分かも」
あ、外堀埋められたわ。
……まぁ、食べ放題なら、元取りに行くのも良いかたまには……!!
私は大鳥ホノカ。
顔も忘れた母親の借金のせいで傭兵になった女の子。
楽しい事もあるけれど、結局命のやりとりの辛いお仕事。
辞めるためにはもうとっくに返した借金以上の額を払う必要がある。
その額500万cn。
1cn=ユニオンの通貨の円で1万円のレートのすごい額。
だから、今日みたいな戦いをまた何度かしないといけない。
まぁだから、今日ぐらいは。
打ち上げって事で、食べ放題行っても良いじゃん?
また明日から、戦場だ!!
───MISSION COMPLETE.
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