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MISSION 12 :地震、雷、火事、自立兵器……?







 本来、バリアで守られている人類生存圏の外、そこにある街の数々は、3大陣営の一つ『インペリアル』が開拓して作り出し、運用している。


 一度破産した財政の立て替えに、トラストへ外の都市の使用権や開発権をタダ同然で渡したものの、彼らは意外なほど喜んで防衛は自らの正規軍たる『インペリアルリッターオルデン』の面々が担っている。


 そう、ここクリュセ海に面する場所も、だ。




「今日は傭兵どものアリーナが騒がしいな。

 やはり、気にはなるぞバトルアリーナが」


「おいおい、せっかく未練を断ち切って守衛やってるってのに思い出させないでく……


 おい、魚群探知機に異常だ」



 港の主砲が覗く見張り台で、二人のインペリアルの兵士がモニターに映る異常を確認する。



「まずい!!自立兵器(ムシケラ)どもだ!!

 警報を出せ!!すぐにMW部隊とeX-W部隊も出せ!!」


「ああ!

 この数を見ろ、この街の戦力じゃ足りないぞ!?」


「戦力ならあるさ。

 すぐそこで戦ってる白鳥どものほほに札束をぶつけてやればいい!!」


「こりゃ生きているうちに、我がインペリアルは2回目の財政破綻を起こすかもな……!」




 警報が鳴り響く。

 同時に、海に向かって砲撃と雷撃が開始された。




          ***


「お疲れ様ですわ〜♪」


「なんでいるんですかマッコイさん」



 私こと大鳥ホノカのはじめてのアリーナ戦は、

 ものすごく悲惨な勝利をもぎ取っていた。


 そして控え室兼ガレージには、何故かマッコイさんがいたのだ!


 もちろんユナさんは早速整備してくれているけど、4つの強化された身体の腕を「なんじゃこりゃー!?」とワナワナさせて、ぶっ壊れたパルスナを見て叫んでいるのだ。ごめんて。


「いやですわね、常連様がもしもウチの店以外のパーツ使って修理でもしたらと考えたら、ワタクシもういてもたってもいられませんわよ?」


「それストーカーのサービス精神ですよね?」


「にしても酷いっすよ、ホノカちゃーん。

 コレ……君修理費出したら1000cn(カネー)行くレベルのヤバい壊れ方っすよ……

 アヤナミマテリアル製は結構頑丈とはいえ、レイシュトロームとかAI社のエネルギー武器とかと違って、強化人間(プラスアルファ)のエネルギー流入操作に耐えられるパーツはレザブレ系列だけなんすよ〜?」


「ユナさんマジでごめんて」


「1整備兵としてこれは、

 許〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ、


 しまーす♪



 いやぁ、ホノカちゃん大穴だったもんでスッゴイ懐が潤ったので〜♪」


 ずっこけー!


 いや、たしかに賭博絡むバトルとはいえさ!?

 良いんだ……ならありがとう!結構ヤバい壊し方だと思ってた!


「あ、そうそう!

 そろそろ武器も変えません?

 どうせ修理費はタダ同然ですし、整備途中ですが売却して、新しいライフルを探す時期ですわよ!」


「ひょっとしてそれが狙いか。

 いやぁ、一番怖いのはアコギなそういう精神かもねマッコイさん」


《でもそれも良いんじゃないかな?

 村雨9型(パルスナ)はピーキー過ぎるし、RM-120C(初期ライフル)は悪くないけど、悪くない止まりで良い訳じゃないし》


 ひょっこり頭の上に乗っかって、コトリちゃんがそう提案する。


「コトリちゃんもそういうかー。

 御予算そのぐらいだっけ?」


《なんだかんだ、今24000cnと少しで、売っぱらえば4万ちょっとになるね。

 これなら、良いライフルに出来るよ?》


「そっかー。

 コトリちゃん、マッコイさんにも、ちなみにだけど、私もちょっと今から言う条件のライフルって、ある?」


《あれま、珍しい》


「もちろん!

 予算さえ出せば、超兵器だって売りますわよ……どんな条件かしら?」


「まぁ、予算内でそんなのあると思わないけどさ……」



 私も、2回の戦場経験しただけだし、後アリーナも今日やったばっかだから、あんまりこんな条件はあれだけど……



「あのね、今右の奴で使ってる奴と同じ感じに使えるけど、弾がいっぱいあって、威力も高いやつ」



 という、我ながらふわふわな条件だった。



「…………コトリさん、先日のシミュレータのデータ通りなら……

 それに1001B腕なら、『アレ』ではどうですかしら?」


《やっぱ『アレ』か。要望通りなら『アレ』だね。

 予算内だし、ついでに余ったお金で適当なE(エネルギー)武器もイケるんじゃない?》


「ちょうどパルスも……レイシュトロームのレーザーライフルも良いのが」


「まって!その口ぶりもしかして……あるの!?」


 こんなふわふわな条件で!??


《あるよ。それも候補が二つも》


「ええ。多少性能が違いますが。

 この予算内であれば、二つとも買えるレベルですのよ」


「マジで!?!」


 すごいな……そんなパーツまであるのか!!

 このふわふわ条件で、即座に決められる二人がすごいのかな!?


「じゃあいっそ見てみます?

 こちらに────」




「失礼します!

 ホノカさん、緊急事態です!!」



 と、そんな声と共にかなりあわてて、オペレーターさんが乱暴にドアを開けて入ってきた。


「どうしたのオペレーターさん!?!」


「対自立兵器任務です!

 それも、この街で!!」



 ウゥ───────────……!



 鳴り響くサイレン。多分外から。

 なにこのサイレン……地震?いや海辺だし津波?


「あらら、自立兵器とは。

 ひと月ぶりかしらね?」


「アイツらかぁ……面倒なのが来ましたねぇ」


「お、落ち着いてるけど、ヤバいのでは?」


「ヤバいですね。

 すでに海辺から大量の自立兵器群が上陸しようとしているらしいです。

 すでに、第一報の時点でこの街の相当数のスワンが出撃しています」


《自立兵器か……バリアの外だと防衛難しんだよな。

 ぶっちゃけバリアあってもモノによっては、地面掘ってくるし》


「……私、自立兵器の襲撃って初めてなんだけど、どんなの?」


 みんな知ってる風だけど、私は知らないんだよねーその相手を。


「……ホノカさん、ライブ映像、見ます?」


「なんで恐る恐るなのオペレーターさん?」


《見せて。この子には早いうちに慣れてた方がいい》


 オペレーターさんが頷くと、その目が機械的に光る。

 私も強化人間(プラスアルファ)。網膜投影とかで四角い映像を映す部分が現れて、再生が始まる。



 断続的な銃声。波飛沫。

 少し高い位置なのは、多分ヘリだから。

 いつも見る鳥みたいな脚のMWがマシンガンをばら撒いて、下で兵士さんたちが銃を撃ちまくる。


 その先にいたのは───うわ、キモ!!


 あれ!機械のクモ!!脚が長いのをガシャガシャ動かす姿は間違いなくそんなの!!


 その周りの、丸い身体にカサカサする脚って……つまり「G」みたいな機械!!

 あの前見た丸っこいのとは別のやつ!!



「嫌なタイプの虫じゃん!!」


「前に見た「テラフォーマー」タイプと違い、対人間用ならびに都市蹂躙用の型です。

 公式名称はありませんが、一部では「アシダカ軍曹」と「ヨロイモグラ」と呼ばれています」


 映像では、カァオッ、って感じに聞こえるなんかのエネルギー兵器をぶっ放して歩兵のみなさんをエグい死に方にさせたり、MWに穴を開けている。

 逆に、砲弾だか銃弾だかに蜂の巣になったりして死んでもいる。


 しっかし、敵の数多いなぁ!?

 マジで虫に大群って感じ……一匹見たらなんとやらってヤツ!!



「見ての通り、インペリアル正規軍(リッターオルデン)が今は対応しておりますが、数が圧倒的に足りません。

 当然スワンの出番です。

 すぐにでも正式な依頼が来るはずです」


 ちょうど映像を終えた時に、オペレーターさんはそう言うのだった。

 正式な依頼……アリーナ終わったと思ったらすぐにアイツらと戦うってわけか……


《自立兵器戦か。

 …………マッコイ、》


「ええ……今こそですわね」


 え、なになに?なにを納得しているの!?


《ホノカちゃん、説明しておこうか。

 あの自立兵器群はね、エネルギー兵器耐性が高いんだよ。

 だから基本、自立兵器と戦う時は、実弾……実体弾、運動エネルギー(KE)弾を使うの》


「実体弾……それって!?」


「お察しの通りですわ。

 ちょうど、こちらに要望通りかつ今回の敵にピッタリなライフル達が!」




 ────アルゲンタヴィスの両腕に、新しいライフルが装着された。


「右腕部、初の実体弾タイプのスナイパーライフルであるリボルバー・リバティー社製『SR-1 ミス・ローンウルフ』ですわ!」



 それはもう、見事な形のスナイパーライフルだった。

 漫画とかで見るような綺麗過ぎるスナイパーライフルだ……


《バーンズアーマメンツ社とも関係が深い、高火力兵器といえばここと言われるリボルバーリバティー社製のあまりに普通なスナイパーライフルだね。


 あそこ普段はグレネードの破壊力とかスナイパーキャノンの火力増すことしか考えてないけど、たまに正気になってこう言うの作るんだ》


「ですが、普通と言うには少々特殊かもですわ。

 通常スナイパーライフルは、シングルアクション型の3Dプリンターマガジンですので、一発撃ったら一発弾丸を内部で生成するという方式ですが……


 こちらマガジンタイプであり、脅威の8発生成!


 発射レートも地味に高く、ほぼほぼアサルトライフルの感覚で撃てるスナイパーライフルですわ。

 少々反動が大きいので、バーンズアーマメンツ製か同じリボルバーリバティー社製の腕で無ければ射撃精度が落ちますが」


《しかも装弾数で言えば他のスナイパーライフルの中で最も多いから、地獄の総火力を持つあたりある意味あのリボルバーリバティー社製っぽいね》


「へー…………とにかくすごいのは分かった!」


「そして、左腕には変化球。レイシュトローム製では珍しい実弾兵装、それもバトルライフルと言う異端児。

 『トール SBR-2G』。意外とベストセラーなのですわよ?」


 こっちはなんか四角くてゴツい……!

 ちょっとレーザー打ちそうな感じする。


「あれ、レイシュトロームって……たしかレーザーライフルとかでよく名前聞く?」


《そうそう。

 でもレイシュトロームって、駆動系のところでバーンズアーマメンツと特許でバチバチにやり合うぐらいには競合しててさ、大昔は対立戦争してたレベルだったんだよ。

 そのせいで、「バーンズライフルに匹敵するものぐらいは作れる」って言った具合で、コレともう一個アサルトライフルを生産してるんだ》


「へー……そんな事情で生まれたのかー」


「でもそんな事情なだけあって、これの性能は高い水準で手堅いですわ。

 射程距離、威力、総火力、発射レート、どれを取っても良質なバトルライフルに仕上がっておりますわよ」


「…………ねぇ、サラッと今まで流してたけど、総火力ってなに?」


 そういえば知らない単語あったんよ。


《一発の威力×装弾数で計算する概念!

 まぁ要するに、全弾命中したらどれほど悲惨な目に合うかっていう言葉。

 コイツは、バトルライフルって言うカテゴリーのライフルで、『75mm口径の弾丸を連続発射できる』って言うのが強み。

 75mmっていうのが、eX-Wの武器の中では、かなり大きなライフルの弾で、太い弾が何発も一気にぶつかったら危ないでしょ?》


「へー……そりゃそうか」


《そういう弾を全部当てたらどんな火力なのかって言うのが『総火力』。

 コレと単発火力の仮想数値と弾数を比較して、この武器の特性を知る目安になるの。

 威力低くても総火力高ければそれだけ弾数もあるから長く戦えたりとかね、そういうの》


「なんとなくは分かった」


《まぁ、実際使わなきゃ机上の空論だけどね!》


「……ところでもう一個、バトルライフルは分かったけど、しれっと言ってるアサルトライフルってなに?

 ライフルって銃のことじゃん、なんか違うの?」



 ────この瞬間、皆が「こんな時にそれ聞くか」みたいなすんごい顔になり、そして何故か「嫌な質問来ちゃった」みたいな顔をコトリちゃんがそのつぶらなお目目だけのロボット顔に器用に浮かべた。



「ホノカさん、なんて事を……」


「え、なに?聞かないほうがよかった?

 ごめ、」


《良いや!

 どうせ武器の特性知っとかなきゃ、自立兵器で死ぬからさ!

 けど……それ聞いたの後悔しないでよ?

 今話す内容ではない反面、今話した方がいいっていう矛盾した内容だから》


 と、コトリちゃんすっごい眉間に皺が見えるような声を絞り出す。



《……時間がないからかいつまんで。

 まずライフルは、こういう長めの銃のこと。

 スナイパーライフル、っていうのはまず、遠くの敵を撃つためのライフルなのは分かるね?》


「うん」


《eX-Wのアサルトライフルっていうのは、

 あえて口径を30mmとか40mmとかで小さくして、ぶっ放す弾の威力は下がる代わりに、連射しながら撃てるようにした物なんだ》


「マシンガンと同じ?」


《うわ来たよ……あ、ごめん。


 ちょっと違うんだ。


 あの、アサルトライフルは基本的にライフルみたいに単発で撃って、でも連射できるから相手が何発で装甲が抜けるかを理解しながら撃つんだ。


 ほら、弾代の管理とか、弾の節約ができるけど、いざって時は連射が出来るって言うのがアサルトライフル。


 マシンガンは、最初から連射に特化してて、気がつけば相手をミンチにする感じ。

 歴史的にいえば、実は口径がデカいし、スナイパーライフルと同じ距離撃てるけどね。


 ただし、eX-Wのマシンガンは、基本的に近距離用なんだ》


「え、今の説明と違くない?」


《本当は、eX-Wのマシンガンは、カテゴリとしては『サブマシンガン』って言ってね、近い距離でなるべく火力を上げたいっていう思想で生まれた別物なんだ。

 昔に人は「マシンピストル」っていう表現もしたけど……


 まぁ、ここは使う時に説明するね?

 で、肝心のバトルライフルの話に戻るんだけど……》


 コトリちゃんが、珍しく唸りながら、なんだか複雑になってきた話を続ける。



《アサルトライフルは、ライフルの口径を小さくする事で、反動と射程距離が短めだけど連射もできるライフルなのは覚えてる?》


「うん。

 ……でもさー、ライフルより小さい弾ってなんか弱そう……」


《それだよ!

 君みたいな思いで、eX-Wパーツとして生み出されたのが『バトルライフル』なんだ。

 75mmの弾丸のまま、射程のまま、速射ができる。

 強いっちゃ強い……けどコレもコレで実は弱点があるんだよね》


「弱点?そんな強そうなのに?」


《さっきもサラッと言ったけど、そんなバカでかい弾を連射したら銃口が暴れまくって、当たりにくいんだよ。

 さらに、そんな大きな弾を速射する機構つけたせいで、見ての通り前のライフルより分厚いし、重いんだよね。

 まぁ、だから腕パーツが重要になる。

 1001Bフレームで良かったね。レイシュトローム製のライフルなのにレイシュトローム腕だと微妙に反動殺しきれてないんだよコレ》


「あー……なるほどなー」


 威力は高いけど、若干扱いにくいんだ。


「じゃあつまりは、大口径な連射できるのがバトルライフルってやつなんだ」


《まぁそれでいいよ。

 面倒な余談だけど、本当は私大好きO.W.S.製の75mmアサルトライフル『04AR D-Antirrhopus』っていう変わり種があってさ、唸ったのもコレが原因なんだよ。

 私は好きなアサルトライフルだよ?

 火力は高いし発射レートもすごい。

 ただ君に勧められない理由が、75mmなのにアサルトライフル扱いの理由でもあってさ……

 射程が短いんだ。

 反動も1001Bじゃちょっとキツイ》


「あー、なるほど。

 流石になんで唸ったのか分かるねそれは……」


 ふむふむ……


 改めて、二つのライフルを見る。


「……二つで幾ら分?」


「総額70000cn。

 ちょうど総資産とほぼ同じですわね」


「そっか……ギリギリ予算内で、一番いいやつ選んでくれたんだ」


 そ、とヒナちゃんの小さい頭を撫でる。


「嬉しいぜ相棒。

 ま、今ほぼ無一文だけど、頑張ってまた稼ぎまくればいっか。

 コトリちゃんが選んでくれたんなら、そのぐらいできるよね?」


《……君の腕ならね。やれるはずさ。

 ただ、撃ちすぎ注意だ。もう弾代無料のエネルギー兵器はないから》


 よしよし。

 ちゃっかり、精算の端末向けてくるマッコイさんに、私の機械のお目々から赤外線で私のお金で生産しておく。


 準備完了だ。私も、アルゲンタヴィスも!


「じゃ、オペレーターさん!

 さっさとお金稼ぎに行きましょっか!!」


「はい。では依頼の受領を─────」



 その時だった。





「待てぇ─────────ッ!!

 待ってくれ!!待ってくれそこの傭兵(スワン)!!!」




 すんごい大声と共に、なんだかすごい数の人達がやってきた。

 先頭の、全力疾走してきた必死な顔と大声の主は、意外と綺麗なお姉さんなんだけど……この赤い色の服は?


「インペリアルリッターオルデン!?

 正規軍がなんの権限でここへ!?」


「すまない!!故あってお前たちを止めた!!

 トラストのソレイユモデル、オペレーターだな!?

 時間がないが聞いてくれ!

 すまんが、今出ている防衛の依頼を受けず、我々直接の依頼を受けてくれないか!?」


 と、必死なぐらい早口で、インペリアルのお姉さんが言う。


「直接の依頼!?

 受付は可能ですが、まずは内容を!

 一体、この状況でどんな内容ですか!?」


「はぁ、はぁ…………くっ、初めに言っておく……!

 この依頼は、報酬は80000cn。


 『全額前払い』及び『弾薬費は我々依頼主持ち』だ」


「……えぇ!??」



 なにその好条件!!

 しかも、めっちゃ高いじゃん!!

 80000って言った!?



《─────おい》



 だけど、その言葉にコトリちゃんは、


 その三頭身ボディの可愛い身体に似合わない異常なまでの殺気と一緒に、


 まるで地の底から響くみたいな……そんなドスの効いた声を上げる。




《おい、お前だよ。お前に言ってるんだ、インペリアルの。




 その先は慎重に言葉を選べ。


 全額前払い……Bランク報酬平均の4倍の金額に、弾薬費持ち?


 そんな条件の依頼が、

 ヤバくないわけ、ないでしょ?


 ねぇ???》


「……!」


 あ、そっか……!!

 全額前払い。

 私、初めての任務がそれで、死にそうな目にあった。


「ッ……!!

 承知、している……!」


「いえ、分かっておりませんね?あなたコトリさんの言いたいことを全くわかっておりません。


 彼女はまだBランクの傭兵です!

 実力の伴わない任務は、トラスト側で選別されます!

 彼女を……殺す気ですか……!?」



「それも承知している!!

 この際Cランクでも傭兵試験者(醜いアヒルの子)だろうとその手を借りたい!!


 あまり流暢に話す時間はない……なんならば報酬増額も検討する!!」



「────おっけー、分かりました。

 受けさせてもらいますよ、それ」



 その場全員が、私を見て驚く。

 まー、アホなこと言ってますねー、うんうん。


「でもさー、まずはあれでしょ?

 依頼だったら、依頼の内容を言わないと。

 私も、危ないって分かってもお金がたくさん手に入るっていう任務なら、ホイホイ受けるちょっと頭はお馬鹿さんですけどぉ?


 まずは、内容ぐらいは教えてくれないと」


 どのみち、依頼は依頼。

 傭兵を辞めるための500万cnの為には、こういう事だってまだまだあるはずだから。


「……!

 ……失礼した。

 依頼内容は、今この街を襲う自立兵器群の大元……


 いわゆる『プラント』へ突入する我がインペリアルeX-W突撃部隊への随伴、

 そして自立兵器『プラント』の破壊だ」



《は!?

 マジでやばいやつじゃないか!!

 ホノカちゃんすっごい要するにこの人ら、あの虫がうじゃうじゃ出てくる巣に突撃するって言ってるんだよ!?》


「じゃ、この値段も当然か」


「ホノカさん。

 分かっているとは思いますが、明らかに今のランクでは危険な任務です。

 ですが……トラストの緊急依頼プロトコルに基づき、この場での依頼受諾を認めます。

 あとは……あなたの判断です」


 私に判断、ねぇ?


「もう判断は下したさ、オペレーターさん。

 じゃあ行きますか!!

 前払いちゃんと払ってくださいよね?」


「……感謝する……!!」


 美人の顔を崩してまで泣きそうな感じに声を絞り出すインペリアルの人。



 流石のおバカの私でも分かる。


 受けるって言っただけでここまで感謝されるような任務。




 絶対やばいじゃん!




 まぁ、お金のために……普通の生活に戻るためには、普通じゃないところに突っ込まなきゃダメか!



          ***

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