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MISSION 5 : 生きているならお腹も空く










「おごれー、おごれー!クレープぐらいおごれー!!」


「焼肉ぐらいは許されると思うなー?そう思うなー??」




 えー、負けた側についた友達の傭兵二人に挟まれて、ガレージでたかられてる傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃんなのでした。



「…………ったく、だったら私が肉焼くから。

 BBQで我慢しなよ!!」


「「おー!!」」


「ここらへんカルビ売っとったか?」


「取り寄せときゃええんとちゃう?」


「ご飯炊かなきゃ!!!!」



「オイそこぉ!?そっちも食う気かこんちきしょー!!」



 人の金だからってすぐたかりやがって〜……!!







「まぁ焼くけどさぁ。

 ほれ、カルビー」



『わぁい♪』



 現金な返事しない傭兵はいません。

 後我が妹ルキちゃんや、育ち盛りは分かるけどお前そのモデル体型のお腹にご飯五合炊き炊飯器丸々入れる気??入れる気??なんで小脇に抱えてるの??



「コーラ貰うでー!

 ゴクゴク……カーッ!勝ってついでに人の金で飲むもんは美味いわ〜!!」


「そりゃ美味いでしょうね!!!」


「ったく少しは遠慮せい!

 ホノカが焼いた肉なんぞ美味いに決まっとる、食うまでも無いんじゃ。

 食うけど」


「食うよね!!

 オラ、美味しいとこ食え!!!」


 さっきから焼きに徹してるね炭焼きの網の上でさぁ!!

 私も食べたいのに〜!!!


「おねーちゃんロースとタンも!!」


「自分で焼くことを知らない人工生命体か〜??」


「ホノカちゃん私も!」


「私もー」


「はーい、ありすちゃんにエーネちゃん二人に美味しいとこ〜……アムッ!

 あげまふぇ〜ん!!自分で焼こうねぇ〜????」



「「あー!!やったなこのー!!」」



 なんだその顔は!!自分で焼けぇ、敗者どもめー!!



 結局、私が金出して焼肉バーベキュー状態だよ!?

 そんぐらい自分でやれ!!あ、ありすちゃんデカい肉持ってった!!アイドルの癖にダイエットしろぉ!!




「…………アンタら元気というか、良く肉食えるよね……」



 この声は、新人傭兵ミコトちゃん。私並みにおっぱいでかい子。


 そして他の面々もこっち見てる。




「お?羨ましいか、羨ましいか??

 肉食べたいか新人ちゃん達や」



「喉入らないよホノカちゃん先輩」


「なんでそんなに食べられるのかしらね」


「さっきまで殺し合ってたんだろ?

 気持ちの整理つかねーし」



「は?気持ちの整理つかないとか何言ってんの?

 お互い仕事でしょ、殺し合いなんていちいち恨んでられる?


 生きてるだけでハッピー!でも弾薬費・修理費自腹でアンハッピー!!


 でも私は依頼達成でガッポガポ!!

 まずは食べて次に備える!

 負けたけど同業者にたかって次に備えてお腹を満たす!


 そっちの方が重要でしょ?

 恨むのは死んでから化けて出てやれば良いじゃん。


 生きてるなら、いちいち恨んだり妬んだりしてる暇あったら、次の仕事に備えるか探すのさ!」




「んな簡単に割り切れるかよ!?!

 昨日までお互い笑い合ってた間柄で殺し合うことになったんだぞ!?!」



「それが嫌なら、私みたいにさっさと金貯めて、辞める準備すれば?



 ……傭兵(スワン)が異常な仕事っていうなら、そうに決まってるでしょ。


 頭がおかしい戦場で、お互いいつ敵になるかわかんない鉄火場で、正気と正論、正義と友情だけで生きていくってんなら、




 それでこそ、イカれてるでしょ」




 あー、ちょうど良い焼きになったのみっけ。

 すんごい睨んで震えてるミコトちゃんを尻目に、パクリとうまあじ。



「……イカれてる自覚はあんだね、アンタは!」


「……何?もしかしてよのため人の為、正義の為にでもこんな仕事した?


 違うでしょ。

 私達、どこまでも自分の為に生きてる。

 自分のためだけに人殺してお金もらってる。


 第一、敵だから好きなだけ撃って良いだなんてもし思ってるなら、

 それこそヒトデナシでしょ?


 敵を殺す時はね?

『ごめんね敵さん。二束三文の金のため、あなたの人生、未来に全て、奪った上で、

 私は稼いでそこそこ幸せに生きる為にその命を換金させていただきます』

 って申し訳ない、気持ちで殺すんだ。


 そして、その金で供養しようがこうやって肉食おうが、文句は言わせない。


 あ、焦げたし狙ってたタン!!

 あーもう、余計な時間使っちゃった!」



 何か、ミコトちゃんが言いかけた時、


 ぐぅ〜、とお腹が鳴る音が聞こえた。本人から。



「〜っ!?!」



「…………食べる?」


 なんか文句を言いかけて、後ろの3人もグゥグゥ鳴るのである。


 身体はお肉を求めている。


「………………ハッ!

 ま、ホノカちゃんの言うことは正しいんや、この異常な仕事の上ではな。

 なぁ、新人のお姉さん達。どうせこのムカつく天才傭兵の金の肉なんや。

 ええやん、むしろそんなヤツ利用して食う肉や。

 せいぜい、たらふく食うとこうや?」


「うん、リンちゃん後でお肉とかの費用の1/3出してね?」


「ええで。1/10やな」


「は?キリィちゃんも含めて1/3ずつでしょ」


「ちなみにワシは出したけ。諦めろ」


「ハァ〜????裏切りよったなこのクソカス傭兵どもがゴラァ!?!

 あー、分かったわ、あーあー分かりまーした〜???


 こうなったら元取ったるわ!!!

 掟破りの一気喰いじゃボケカスゴラァ!?!」



 あーー!!!焼いてたお肉一気に持ってかれたぁ!?!



「てんめぇゴラエセ関西ィィィィィィィ!?!

 他のやつのはともかくワシの狙ってた肉かっさらうとは死んだぞアァン!?!」


「はぁ〜????この肉に名前でも書いてあったかぁ〜???いつ黒いのの肉になったんやぁぁ???

 何時何分何十秒火星が何回回った時ぃ〜???」


「小坊か貴様わァッ!?!」


「小坊じゃ黒ババアァッ!?!」


 はい、キリィちゃんとリンちゃんリアルファイト発生です!!

 突きの速さ比べしてる間に……追加で焼いておこうね。



「新人ちゃん、これだけは覚えておいて」


「へ?」


「何事も、

 ああやって隙を見せる方が悪いんだよ?」


 そして、焼き終わったタンを新人ちゃんに紙皿に取り分けておくのだ。


 ちょっと高いやつ!



「「ああ!?黒毛和牛タン!!!」」


「ほれ。キツいこと言ったからね、最初は良いの食べて」


「え」「あ……」「うん……」「ありがとうございます……」



 とりあえず、食わせておこう。

 新人ちゃんが使えなくなったら困る事あるかもだし。




「─────何してるかと思えば、肉を焼いていたのね」




 ふと、すんごい冷たい声。

 振り向いたら、私並みに爆乳な青い髪の美人さんこと、ここの領主のヴィオラさん。



「あ、ヴィオラさん」


「どう言うつもり?肉を焼くなんて」


「え、なんかまずかったんで?」


「冗談じゃないわ……ここはハンナヴァルト領と知って私に無許可で焼いていたの!?」



 え、何その剣幕!?

 さっきの戦いで敵に回った時より殺気だってない!?



「いい?教えてあげる。この領地でバーベキュー並びに焼肉するなら、」








 数分後、

 網の上には、サザエにホタテにおっきなエビとかがあったのでした。




「海鮮焼きをしなさいと言っているの!!!

 私の土地が地下に人工の海を再現して、内陸部でも魚が美味い場所なのよ!?!

 ひとこと言いなさいな!!!

 ほら!!ホタテ食え!!!」



「ごめんなさーい♪ありがとうございます〜♪」



 ホタテ、アチアチ……でもうまーい!!

 バター醤油最高〜!



「後そこの米ばっか食ってる銀髪娘!!お米よこしなさい!!」


「え?あ、はい……」


「はぁ〜、やってらんないわ真面目にね!!

 あ、肉も貰うわよ」


 と、ヴィオラさんなんとガツガツやけ食い始めました。

 なになに、めっちゃイライラしてません?


「……コーラもらうわよ」


「良いですけど、何荒れてるんで?

 私がコテンパンにした事?」


「それも腹立つけど、そんなこと霞むぐらい腹立つ事起こってるのよ。

 何が腹立つって、良い!?

 それが最良の結果だって事!!」


 缶コーラあげたら一気に飲み干しちゃった……



「…………ま、傭兵に話しても良いだろうから言うけどね、

 要は、領土返還交渉が相当ギリギリな所になったのよ」



「はえ?」


「ほら、アンタら有能なロクデナシが分捕ったヨークタウン級移動要塞の返還と引き換えに、占領されてる領土を取り返せたは良いけどね、


 アイツら、そのヨークタウン級の射程内に我が領土が入る場所の領土主張してきやがったのよ!」



 あー……なんかアホな私にも分かるー

 結構ヤバいやつだ。



「陛下が直々に来て、その交渉力でこの程度で済んだのは、運が良かったのっていうのは分かる!

 けど、コレじゃあ……!

 ここはいつでも戦場になるって事じゃない!!


 …………辺境伯は辛いわよ」



 カリッと焼けたエビを頭から食べるヴィオラさんは、いかにもイライラしている顔だった。



「……お酒ないの?」


「一応未成年の集まりですし」


「……海鮮は奢るわ!

 みんな食え!!どうせアンタらも忙しくなるのよ、どっちに雇われるかは知らないけどね!!


 ほら食え!!付き合え!!

 もうヤケよ、ヤケ!!

 後誰か!!金は出すから私用にビール買ってきてビール!!」


「みなのものー、雇い主様の命令じゃー!

 ビール買ってこーい!!」


「オメーがいけ」


 そりゃそうなるか。

 まぁ良いや、そう言う催しだったし。





「ビールならあるぞ。しこたまな」




 と、この気だるげな声は。


 再び振り向いたら、銀髪ショートヘアーの美人さんこと、



「あ、クオンさんお久しぶり!」


「ちょうど良かった。酒の肴が無かったんだ」


「おーおー、誰かと思えば企業のトップじゃないの」


「所詮1企業のトップで、面倒な役割の長だ。

 ついでにだが、酒の代わりにもう一個面倒を持ってきてしまったんだがな」



 ふと、そう言って後ろを見るクオンさん。




 ………………そこには、なんか知らないけどヴィオラさんがすごい顔になる、ちょっと背が低い人物がいたんです。




「おや!バーベキューとは中々良いですね。

 私もおじゃゃましてよろしいですか、傭兵の皆さん?」



 なんて、ほっそい目に胡散臭い笑顔。

 白い制服は、なんか偉い立場っぽい。



「誰さん?」



「あなた方の半分にとっては、護衛対象と言った方が分かりやすいでしょうか?

 それとも、撃破対象と言った方が半分の方や、そこのハンナヴァルト領の辺境伯の方は分かりやすいでしょうか?」



 あー、

 火星統一政府の人。



「回りくどい表現は辞めなさいな。

 カヨコ・ヒーリア。火星統一政府、代表」



 ……ん?



「もしかしてすごい偉い人?」



「もしかしなくてもすごい偉い人ですよ、傭兵さん?

 まぁでも、敵がどの面下げてとは思われるでしょうが、私も見てみたかったんですよ。

 我々を撃破した、旧型人類とは思えない最高戦力……トラストの傭兵の顔を」



 一瞬、ちょっと目が開いたその敵の偉い人。


 笑ってるのに、目は真剣だ。



「……それで、お邪魔してもよろしいですか?」



 にゃーん。何も言えねぇ

 断れる雰囲気でもないけど、私たち楽しくバーベキューで焼肉してたのに。



          ***

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