MISSION 2 : 殺してんだから恨まれもするじゃんよ
<未確認兵器>
『そのエンブレム!!灰色の機体!!!
見つけたぞ、灰色の鳥ォッ!!!』
「何そのあだ名!?」
どうも、変なあだ名をいつのまにかつけられてた系傭兵美少女の大鳥ホノカちゃんです。
目の前には、殺意とEシールド出力マシマシの謎のでっかい人型兵器がいるんだよね。
<未確認兵器>
『貴様がいる事を神がいるなら感謝してやる!!
我が姉妹たちの仇ィ─────ッ!!!』
「あー、はいはい、そういうパターンか……!」
デカい黒い知らない人型兵器の両腕から、虹色のレーザーブレードが伸びてこちらにブンブン振るって来る。
そりゃもう、動きが遅いティタニスのことケーキみたく切り裂く勢いで。
レーザー相手は苦手なのにー!!
ガチタンで華麗な回避ってマジできついんだぞ!?!
「ったく面倒くさい事になったよね。
なにさ、アンタ私ばっか狙ってくれてるわけか!
こりゃいいよ、仕事が楽になる!!」
<未確認兵器>
『ここで貴様を殺して!!あの裏切り者どもにも鉄槌を下す!!!そしてこの地の旧型人類どももだ!!!
だがまずはお前だ灰色の鳥!!!
お前さえ殺せば!!!お前だけは!!!』
………………うーん、
どれだっけ?
が正直な感想だった。
だってそうでしょ、私は殺しすぎなぐらい殺してんだもん。
地獄行き確定だね、それはさておきどの心当たりか分かんないや。
熱くなってる理由は分かるけど、どれで熱くなってんのか真面目に分からない。
うーん……だからか、何コイツここまでって感じ。
酷い感想だけど、だって……ねぇ??
「………………で、どれの仇だっけ?」
あんまりにも、あんまりにも都合が良すぎるでしょ?
このパターン、アホな私でもそう思う。
<未確認兵器>
『───は?』
「だから、いつ、どこの戦場で私が殺したやつの仇だっけ?
三日前だっけ?1週間前?
ええと、最初のヨークタウン襲撃?ハンナヴァルト防衛で、新フレームの慣らしで戦ったやつだっけ?
覚えてるかもしんないけど、正直思い出すにも私やりすぎてんだよね。
で、どれだっけ?覚えてなかったら悪いけど、いちいち思い出せるような奴じゃなかったらそんなもんなんだよね。
酷いとは思うけど、そんだけアンタら突っ込んで戦ってくるんだもん。
正直覚えてらんないよ。
で?
もう一回聞くけど、どれの仇だっけ?」
<未確認兵器>
『ふざけているのかァァァァァァァァァァッ!!!』
あの黒いのの腕で握ってる拡散ビーム兵器がバンバンやってくる。
ビームはやめろってマジで、ティタニスの装甲が意味ないじゃん!!タンクで回避行動ってマジで面倒臭いんだからね!?!
「ふざけて聞くかよこんなこと!
アンタら数だけは多いからもう、どれだけ処理してきたと思ってんのさ!?」
<未確認兵器>
『我が姉妹を!!!仲間を!!!
処理だとか数だとか、そんなもので済ませるなぁッ!!!』
ごもっとも瞬間移動。いやマジで緊急短距離回避推進とかじゃない、そうとしか思えない動きで背後を取って、でかい図体からレーザーブレード叩きつけ。
「そんなんになるでしょ、戦争だよ!?
私らだって死んだらただの数字だよ!!」
<未確認兵器>
『ガッ!?』
当たって砕けろ旋回からのアサルトブーストで体当たり。
ガチタンの質量なら、余裕で吹き飛ばせる。
「アンタも、私も、戦場に来たらただの戦力。
でもアンタは正規兵だからまだ良いじゃん。
こっちは腕が良くても傭兵。
使い捨てとか使い勝手のいい道具でしかないんだ。
仇討ちとは殊勝だねぇ?アンタマジで心底良い人なんだろうけど、私は地獄に落ちるまではそれなりに幸せに生きてやるって決めてるの。
悪いね。どれか分かんない姉妹で仲間をぶっ殺しておいてあれだけど、
アンタに殺されてやるわけにもいかないんだ」
<未確認兵器>
『〜〜ッッ!!!
そんな都合のいいことが許されると本気で思っているのかこのクズ……ッ!!!』
「うーん、だからみんなにこう言ってるんだ。
都合よく、許して♡
もしくは、死んでね♡
今すぐで良いよ?」
どうも、クズです。
クズなので、当然返答はブラストアーマー。機体のEシールドを攻撃に転換してぶっ放す衝撃波が襲ってきた。
<未確認兵器>
『殺すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!!』
「────アンタにゃ無理だね」
どんな兵器か、と様子見してたけど、ブラストアーマーとはなんと都合がいいんだろうね。
これを使うと、どんな兵器も機体をまもるEシールドが消える。
レーザー以外全部防ぐすごい防御のEシールドが消えたら、どんなすごい兵器も丸裸。
両背中のガトリングを、両肩のロケットを、右腕のプラズマキャノンに左腕のHEATキャノン、
全部ぶっ放せば数秒で、堕ちる。
ボボボボボボッ!!!
<未確認兵器>
『そんな……!?』
「何驚いてんだか」
そこに、ガチタン重量級機体を|緊急離脱用ストライクブーストを起動して、コックピットへタンク脚の重量を叩き込む。
ズガァンッッ!!!
<未確認兵器>
『ピギュ……?!』
「アンタ、殺す殺すって喚きながら殺しにかかるのアホでしょ。
本当に死んで欲しかったら静かに近づいて確実に殺してから「ぶっ殺した」って叫びなよ。
後ね、生きてるうちに言っておくけど、コレでも悪かったって思ってはいるんだよね。
アンタの……なんだっけ?まぁ親しい人、殺してごめんね。覚えてないけど。
でも私は私を殺そうとしてくるヤツの大半は殺すんだ。
生き延びて付き纏われるのは面倒でさ。
ま、一部例外はいるけど」
<未確認兵器>
『……こ、のクズ……旧人類……!!』
さて、まだ生きてるか。
じゃ、死んでもらおうかな。
<未確認兵器>
『……なんでこんなクズが、我らより強いんだ……ッ!』
「ごめんね?私アホだから分かんない」
カァオッ!!!
「死ね。復讐は私が地獄行くまで諦めてよね」
万が一もないように、プラズマキャノンで人がいそうな部位を撃ち抜いたのでした。ちゃんちゃん。
ようやく、死んだか……
「…………みんな!今護衛対象はどこ!?」
切り替えてこ。変な兵器倒した所で終わりじゃないし。
<ミコト>
『あー、例の兵器引きつけてくれてたとこ悪いんだけどさ!!
守りきれない!!助けてよ先輩ちゃんさぁ!?』
<フミカ>
『マシンウォーカーって言っても、数が多いと!!』
カメラを向けた先で、雑魚メカに囲まれてあたふたしてる年上後輩ちゃん達と護衛対象……
「守ってて偉いぞー?
今行くから!!」
<ヴィオラ>
『無理よ』
ズガガガァン!!!
マシンガン並みの連続着弾音と、砲撃同然のすごい衝撃!舌噛まなくてよかった!!
「連射型のスナキャ……!」
<ヴィオラ>
『未確認兵器の処理、見事だったわ。
もっと消耗してくれれば助かったのに、は贅沢だったわね』
「でも不意打ちはするよね。
いや、不意打ちだけじゃないか……!」
実体防御特化って言っても、その限界を超える攻撃だったんだよね。
タンクの装甲が抜けて、アラートなってる。
いや、まぁまだ戦えるけど、もっとヤバい事態がレーダーでわかった。
取り囲まれてる!!
レーダーで高度変化を見る。上下運動が激しい!?!
てことは……逆関節の動き!!
<ティア>
『こうなるだろうとは思っていたよ、嬢ちゃん』
予想通り、おばあちゃんエースの皆さんご登場!!
「やぁ、おばあちゃん達!!
腰の具合は大丈夫!?」
<マリー>
『おかげさまでだいぶ楽ですよ。
あなた、意外と孫より丁寧に腰をほぐしてもらったもので』
<マシュ>
『アタシら個人としては、思うところは色々あるさね。
でもね、この黒薔薇小隊は辺境伯家のハンナヴァルト家の、我らインペリアルの皇帝に使えし剣。
老いぼれと言えど、変えられんよ』
「知ってる。
お婆ちゃん、殺したらごめんね。正直一番辛いよ、うちのお婆ちゃんと同年代かもしれない人達を殺すのは。
でも、私も仕事なんだ。
……ごめん。ガラにもなく無駄口叩きそうだよ。
恨んじゃいないよ、それがおばあちゃん達の決めたことなら!!
こっちは仕事でやるだけさ!!私情はお互い挟まな無いって事で!!」
<ティア>
『言ったな若造!!
……殺すつもりだけど死ぬんじゃ無いよ!!』
私情挟みまくりじゃん、やりにくい。
おまけに飛んできたのハイレーザーじゃんか、やりにくいなぁマジで!!
パーツ名忘れたけど、友達の傭兵が使ってる使い勝手も威力も最高の奴だって分かる。
つまりガチタンスレイヤー。
いいねぇ、さっきまでガレージ使わせてもらったからっていうアドバンテージが向こうにあるってカス状況!!
<メイド>
《仮想装甲値、60%減少!》
バシュウ、とか音立ててコックピットの上の方に穴が空いた。
「知ってる!!
こりゃ無理、」
ズガガガァンッ!!!!
─────狙いは正確、コックピットの穴に向かってスナイパーキャノンが叩き込まれた。
レーザーでEシールドも減衰してた。
ここ短い間に、機体の守りは文字通り『溶けてた』。
<BREAK DOWN>
ようはもう動けませんって表示が、視界に浮かぶ。
<ヴィオラ>
『さようなら。
あなたが味方であったら……』
<ティア>
『……悲しいねぇ、傭兵。
若い命で、真面目だったばっかりにさ』
…………破壊された私の愛機、ティタニス機体の周りに集まるみんなの機体。
それは、弔いのための円陣って奴か
……………………
ごめんね、って思う気持ちで、
私は照準をつけた。
ズガァンッッッ!!!
<マリー>
『な……!?』
切り替えた視界の向こう、スコープの先でマリーおばあちゃんの軽逆機体が腰から折れる。
<マシュ>
『狙撃!?この精度は、』
「悪いとは思ってるよ。
最初から騙してたし」
────私は複数機体を持っている。
ウェザーリポーターっていう可愛いロボちゃん使って、普段は僚機代わりにしているけど、
そう。
今回は、あたかもティタニスに乗って出撃したフリして、
今、ずっと隠れてた荒野の丘の上、
四脚型狙撃機体、オルニメガロニクスで狙ってた。
そう、別の機体の中でずっと遠隔操縦してたのさ!!
<ティア>
『やるね。アンタ、戦闘になると頭が回るじゃ無いか』
<マシュ>
『なんだっていいさね!!マリーの弔い合戦だよ!!』
<マリー>
『死んでませんよ。まぁ、一瞬死んだ旦那が見えましたけれども』
<ヴィオラ>
『……ダメよ!!もう充分足止めはした!!
大鳥ホノカを無視して、敵の使節団を狙う!!』
「無視できるかな?
なんせ、」
視界切り替え、さて、
反転したヴィオラさんの機体へハイレーザーを叩き込む。
<ヴィオラ>
『な……!?』
<ティア>
『ヴィオラ様!?!』
「私、オルニメガロニクスに乗ってるとは言ってないよ〜?」
護衛対象の輸送機の近くの岩場から、久々の出番な私の愛機、狙撃型二脚のアルゲンタヴィスのご登場。
<ヴィオラ>
『……やるじゃない……!!』
<ティア>
『この!!!』
<マシュ>
『卑怯者!!!』
「傭兵に卑怯もクソも無いのさ。
使える手は、まぁ予算の許す範囲でなんでも使うの私」
うふふふ、さて護衛対象と合流〜。
<オルトリンデ>
『ハッハー!!久々に笑わせてもろたわ!!
こら真面目に、今回は前回の依頼失敗分取り戻せそうやで黒いのぉ!?』
<キリィ>
『また油断しとると落とされるぞエセ関西。
ホノカァ!ケツは任せるけぇ、頼むぞ!』
「そっちも、新人ちゃん虐めないでね。私の時みたいに優しくしてよー?」
<ミコト>
『お手柔らかにってやつで』
<フミカ>
『……全員調べたらすごい高位ランカーの傭兵なのですけど……!?』
<キリィ>
『気にすんな。上のやつが死んだだけじゃけぇ。
んなことより護衛だけはしっかりやれ。それ以外文句はないけぇの』
<オルトリンデ>
『せやな!!
とりま、依頼こなして報酬ゲットでウハウハや!!』
「同感!!
護衛任務なんて面倒臭いのは、さっさと終わらせるに限る!」
よし、とりあえずは全員で守りながら行きますか!!
***
「ふぅー……ここまで裏をかかれるとはね……!」
ガン、と動かなくなった愛機を殴るヴィオラ。
『ヴィオラ様!!追撃は!?』
「ティア。追撃は無用よ。
こちらも、奥の手をだすしかないもの」
さて、とヴィオラは無線機の周波数をある場所へ帰る。
「聞こえるかしら、傭兵?
最悪の事態になったわ。じゃあ、あとは依頼通りにね。
無論追加報酬は、
あなた達のお仲間を落とした上での話よ」
***