MISSION 1 :傭兵が暇なわけねぇだろぉ!!行くぞぉ!!
<カモメ>
『オペレーターより傭兵、ミコトさんにフミカさんへまずは祝辞を。
あなた方は、これまでの活躍を鑑み、傭兵ランクA帯へ昇格いたしました。
おめでとうございます。そして、
あなた方には現在ここにいる数少ない『Aランク帯』として、
ランカー傭兵、ランク9大鳥ホノカに与えられた最重要ミッションの僚機としてアサインさせていただきます。
なお、本任務以外の依頼については、現時点をもって差し止めという形となります』
<ミコト>
『強制参加のための昇格かよ!!』
<フミカ>
『人権はどこにいったの!?』
「無いと思うよそんなもん。
傭兵の権利なんて、諦めて死ぬか、殺したからには金をもらう権利だけだよ。
まぁ、それはそれとして過酷な人殺し労働中の私たちにさぁ、なんか無理しすぎじゃな〜い?
労基に言いつけちゃうぞ〜?」
<カモメ>
『ホノカさん。
傭兵は個人事業主、つまりは「経営者」です。
経営者に労働基準法は、
この火星では適応されませんよ』
「うわー!!聞きましたー?みなさーん!!
コレが本当のブラック労働って奴だよ〜??
法律なんてなんの意味もなーい!!」
さて、ひとり親方な私こと大鳥ホノカちゃんなのでした。
あーあ、なんだよこのクソ仕事!!
早く辞めたーい!!
「もうこの際ブラック環境なんて良いけどさー?
依頼内容は私がメインでしょ?
なのに何するかなーんも言われてないのは悲しいよねー??
で、私と新人ちゃん達は何をすれば良いのかな?」
ぼやくのは辞め!仕事の時間だ。
<カモメ>
『今回の依頼は、護衛です。
それも、超VIPの存在。
火星統一政府、外交使節団の護衛が皆さんの任務となります』
……やっぱ仕事の時間ヤダ!!
「護衛任務って言った!?!
うわ……イッチバン嫌いな奴ぅ!!!」
<ミコト>
『護衛とか初めてなんだけど、そんなキツいの?』
「キツいってレベルじゃないよ!
全員ぶっ殺せはちょっと面倒だけど早く終わらせられるし、一人だけ殺せもすぐ終わる。
けど護衛は別。
守る相手が到着するまで、数えるの嫌になる敵を相手にしなきゃ行けない。
しかも、私たちが無事でも護衛対象が死んだら失敗!!
神経使うし長時間だしで最悪だよ!」
<フミカ>
『確かに嫌な感じ……守るのって大変なのね……』
<カモメ>
『その通り。ですので、依頼達成率94%の傭兵、ランク9大鳥ホノカさんんが選ばれるのも当然の任務です。
護衛対象である『外交使節団』は、現在専用機に乗ってここハンナヴァルト領外縁部の『蒼鉄王国臨時大使館』へ向かいますが、
現時点で、火星統一政府の『戦争継続派』とでも言うべき勢力が、インペリアル勢力地域であるこのハンナヴァルト領への侵攻のついでに背後から追撃をしています。
現在、敵の捕虜となった傭兵が2名、捕虜交換という名目で乗機ごと護衛任務にはついていますが、お二方共護衛が苦手な方達でしてね……現在は苦戦しているようです』
誰か護衛に?
そりゃ良いけど、どの程度の腕なんだか。
<カモメ>
『また、注意事項として最も安全で最も最短なルートにおいてどうしても『敵勢力圏内』を突っ切る結果になります。
迂回ルートにおいては、敵勢力二つの挟み撃ちに合う形になるので推奨はできません』
…………ん?
<フミカ>
『最短ルートが、敵勢力を突っ切る?
ちょっと待ってくださいオペレーターさん、たしか、蒼鉄王国の大使館への最短ルートはハンナヴァルト領を直線で進むルートでは?』
<カモメ>
『ええ。
敵勢力上空を、突っ切るルートです』
あ、やっぱ聞き間違えじゃなかったんだ。
なる酷、じゃないやなるほど。
そうくるか、このカスミッション。
<ミコト>
『ちょっとまって、その言い方!!
まるで、まるで、インペリアルが敵みたいな言い方じゃあ!?』
<ヴィオラ>
『オペレーターの言う通りよ。
私たちは、今回は敵』
いつのまにか、背後でヴィオラさんの重逆関節eX-Wがスナイパーキャノンを構えている。
<ヴィオラ>
『黙っててごめんなさいね。知ってて止めないオペレーターのアンドロイドの、と言うよりトラストの立場も理解して欲しいわね』
<ミコト>
『どう言うことだよ!!
訳わかんないよ!?!』
「わけはわかんないけど、まぁ理由は分かるよ。
トラストとインペリアルで交渉決裂したね」
お得意様とはいえ、そう言うこともある。
そう言うこと、まだBランクの忙しい時期にやってたなって。
<ヴィオラ>
『我々インペリアルは、ミハエル皇帝陛下はまだ火星統一政府との外交は認めていない。
トラストととの取引は好きにしても良い、ただし!
敵をこの地に招く気はないのよ。
私も、陛下も!』
当然だよね。
不服はないね。
だって、依頼を通してそういうのずっと見てきたしね。
<ミコト>
『そんな!?!
い、今まで一緒に戦ってきたのに、そんな!!』
「あー、ミコトちゃんや、そりゃあ勘違いってもんだよ。
今まで偶然、向こうが雇い主だったってだけ。
今は、そうじゃ無い。
それだけの話だよ」
<ミコト>
『割り切れるかそんな簡単に!!
なんでそんな簡単に割り切れんのさ!!!』
<ヴィオラ>
『……割り切れなければ、インペリアルの貴族といえない。
インペリアルの皇帝陛下一族より賜った土地を死んでも守るは当然。
そして、たとえ友を殺してでもこの土地を、
侵略者、略奪者、その他あらゆる脅威から守る。
傭兵達!
今、あなた達は敵なのよ!!』
<フミカ>
『…………さっきまで味方だったのに……!!』
「…………あのさ、新人ちゃん二人。
ぐちぐち言ってると死んじゃうよ?
良いの?ぐちぐち言うことに命かけちゃって?」
さて、ティタニスを回転させて……
「傭兵なんてカスみたいな職業についた理由、忘れてんじゃ無い?
世のため、人のため?それとも正義の味方にでもなりたかった??
違うでしょ。
私たちは、金の為に動く。
とんだ汚ねぇ仕事人さ。
その為なら、普段仲のいい同業者でも、血縁者でも殺す。
金の為にさ!!
もう最初っから私ら地獄行き確定のド悪党なんだよ!!
覚悟決めな!!!向こうは、インペリアルの人として覚悟決めてんだ!!!
命かけて戦うぐらいやん無いと、割に合わない仕事の時間だ!!!」
正面火力全部、あの重逆関節機体に向ける。
「ヴィオラさんさ、私アンタとは戦いたく無かったよ。
金払いのいいお得意様だ、殺すけど死なないでよね!」
<ヴィオラ>
『私も同じ意見です。あなたには勝てない。
強すぎる……殺す想像ができない。
雇えなかった事が惜しいほどに、異常な強さね』
スナイパーキャノンがあらためて構えられる。
ティタニスの自慢の実弾防御マシマシ厚め固めの装甲でも、抜ける威力と、距離。
こちらも、右手の最強プラズマキャノンに、左手のクソデカHEATキャノンを構える。
「新人ちゃん、来るその敵さんの偉い人の護衛は任せた!!
こっちは敵勢力排除するよ!!そのためのガチタンだし!!」
<ミコト>
『やるしかないの!?』
「え、じゃあヴィオラさん相手変わってくれる?」
<フミカ>
『装備的にはこっちが良いってわけね』
<ヴィオラ>
『そうなるわよね。
ああ、最悪……!!』
「敵が言うんだ、そういうの……!」
ヒュー、という風の音だけが、外部の音を拾ったままに耳に入ってきた。
静かだ。お互い武器を構えたまま睨み合う。
剣呑な、嵐の前の静けさってやつ。
<カモメ>
『──────来ました』
網膜投影した外の景色を後ろのカメラに切り替える。
見えたね、eX-Wのブースターの光と、挟まれてるように進んでる航空機!
<オルトリンデ>
『見えたでぇ!!!懐かしい我が家やぁ!!!』
<キリィ>
『アホか!!まだインペリアル領じゃけぇ、油断すんなエセ関西!!』
そして、護衛の機体は、懐かしい白と黒の見慣れた機体!!
「わお、リンちゃんキリィちゃんおひさ!」
<オルトリンデ>
『ホノカちゃーん!?!
うっそ、ホノカちゃんお出迎えか!?!
ほんま嬉しいわぁ〜!誰よりも会えて嬉しいで!!』
白い逆関節機体、『スカイヴァルキュリア』。
それを操る自称『浪速の戦少女』ことオルトリンデことリンちゃん。
ネオ・デザインドビーイングって言う遺伝子調整されて生まれた生命体で、凄い美人でスタイルのいい長身美人の12歳。
なおこの通り、すっごいうるさいんだけど、このノリ私は好き。
<キリィ>
『久しぶりじゃのぉホノカぁ!!
ワシらアホ二人揃って敵地で墜落してしまっての!
この通り、妙な依頼で命繋いだんじゃ!!』
で、なぜかリンちゃんの相方が多い、ヤクザみたいな口調のキリィちゃん。
一応人間、と言っても強化手術受けてる強化人間で、愛機の高速型軽量二脚機『ブラックインパルス』でとっついて来るよ。
ちなみにこっちも負けず劣らず褐色肌のすっごいモデルみたいな美人さんで、実家が神社だよ。
ただ二人は、私より傭兵歴が長い上に、実力者だ。
「で、挟んでるのが護衛対象!?
気をつけて、知っての通りインペリアル側はそれ落とす気だよ!!」
2つの機体が挟む輸送用の航空機っぽいのを見ていう私。
<オルトリンデ>
『まぁそうやろうな!!
で悪いんやけど、悪い知らせともっと悪い知らせがあるんや!!
どっち聞きたい、ホノカちゃーん!?』
「1番最悪な知らせは!?」
<キリィ>
『情けねぇ話じゃが手前共も敵連れてきたんじゃけぇ、助けて欲しいんじゃぁ───ッ!!!』
瞬間、護衛対象と二人の機体の後ろから、何か黒い塊が追い越してきた。
見えた!!
巨大な航空機!?
そして、凄い速度でまず私たちのいる場所に爆弾を落としてきた!?
「どわぁぁ!?!?」
背後へわざとブースト移動。
爆弾の避け方は、降ってきた方向に避けるんだ!
<ヴィオラ>
『一体何が!?
くそ……目標変更!!対空戦闘!!!』
「え?」
瞬間、周囲の丘から、大量の砲弾が空を旋回する巨大航空機に発射されていった。
<オルトリンデ>
『あ、悪い知らせっちゅうんは、自分ら全員周りの敵に狙われとったでって話や』
<ミコト>
『なんで分かったの!?
というか、最初からなぶり殺しのつもりで!?』
<フミカ>
『酷い……じゃあずっと、狙われていたっていうの!?』
「そうだろうねぇ、時間稼ぎっぽい会話してたし」
<ヴィオラ>
『……バレてたか。1番気づいてほしくない相手に』
ヴィオラさんの機体が、スナイパーキャノンをこちらから外す。
<ヴィオラ>
『上空の敵兵!!聞こえるか!?
取引したい!』
そしてとんでもないことを言い放つ。
<敵未確認兵器>
『…………』
<ヴィオラ>
『聴こえている前提で話します。
インペリアルはあなた方との戦争継続を望む。
あなた方も、和平交渉が嫌で同族の使者を追っているのでしょう?
ならば、今だけは思惑が一致している。
そうは思わない?』
まさか、敵に協力要請をするなんて……!
<ヴィオラ>
『殺し合いなら後でもできる。
ただ、今トラストとあなた方との和平は、こちらとしても飲み込めない。
ここにいる傭兵と、その護衛対象を倒すだけならば、』
<未確認兵器>
『何を勘違いしている、旧人類……!』
だけど、返答は予想通りというか、
<未確認兵器>
『裏切り者も、旧人類も、我が仲間と家族に仇の傭兵共も全て!!
破壊する!!!!』
凄まじい数の爆弾だった。
「マジかよ!!
キレてるねぇ、あの人!!」
咄嗟の回避行動。
爆発に巻き込まれないよう、|緊急脱出用高推力推進器を起動して離れる。
皆も離れてるのをみてたけどまさか、
あの謎の飛行兵器が開いて、なにかがこっちに落ちて来るなんて思わなかった!?
「は!?私!?!」
<未確認兵器>
『そのエンブレム!!灰色の機体!!!
見つけたぞ、灰色の鳥ォッ!!!』
私の機体、ティタニスの目の前に、
巨大で黒い機体が、落ちてきた。
***