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MISSION 0 : 傭兵が暇なのは良いことだ












 ─────ここ火星にとって、案外傭兵(スワン)と言うのは必要な仕事だった。


 機動兵器『イクシードウォーリア』、略称『エクスダブル(eX-W)』を操る女傭兵達、通称『スワン』。


 この機体の真価を発揮するには、大昔から女性がいいとのことで今も女の仕事な傭兵稼業。


 訓練なんて碌にない、実戦で成果が出れば御の字な、殺しがデフォでまずい仕事が大半の汚れ仕事人(ダーティーワーカー)


 貧乏な女が稼げる仕事なんて、身体を売るか、

 機動兵器に乗って命をかけて戦う以外にはない。





 この星の戦場を基本支配しているのは、3つの勢力。


 多分太陽系唯一の皇帝が治めてる軍事と農耕の勢力『インペリアル』、


 自由民主主義と経済力の力で何とかするけど傭兵やる貧乏人の出身も多い『ユニオン』、


 不気味な暗い静かで安定したAIによる完全統治勢力の『オーダー』。




 そんな勢力が内外にひしめき合う人類生存圏って呼ばれてた、高い壁とバリアで守られた土地は、


 今じゃ、本当に戦果に巻き込まれるとヤバい食料を生産する畑か、暴動が週一で起こる貧困渦巻く街と、一部の力ある企業の安全な本拠地になっている。


 ちょっと前まで私が住んでたそこは、昔は『自立兵器』とかいうのに襲われない安全地帯ってだけが売りだったんだって。


 ま、今じゃその自立兵器の親玉の……なんだっけ?


 ああそうそう、この火星のテラフォーミングのために身体を捨てた人間の意思、コンピュータ上の人格達『クラウド・ビーイング』の皆さんが停戦してくれたそうで、


 土地の価格が暴落したんだって。


 まぁ、傭兵やってると基本外が多いから、あのバリアのある空が懐かしいねぐらいだね、私はね。


 株とかやってる人は大損とかなんとか。

 まぁでも、それも今は持ち直してる。



 なんせ、また戦争中。

 今の相手は、自称『火星統一政府』。


 昔本当にあった火星の政府、3大勢力に追いやられた勢力は、中身が人工人種『ネオツー・デザインド』達によって建て直されて、彼女らによって運営ってヤツがされた勢力としてこっちに攻めてきた。



 火星の支配者の取り合いは、少なくとも人類と人類から派生した命同士でまた始まった。


 あ、あの火星で生まれた金属製ナノマシン生命体群『レプリケイター』の国家、『蒼鉄王国』は中立として様子見だって。


 資源的にはどっちにも輸出してるとか。何だっけ、技術力が無いから経済今二つの陣営と渡り合ってるってヤツ?

 とはいえそういう手段もあるんだなって。



 まぁ、長くなったけど、この世界には傭兵(スワン)の飯の種はいっぱいあるということ。



 戦争が終わる日があるんだろうか?

 悲しいね、でも、









「だからこそ、


 楽だよねー!!

 こうやってeX-W立たせてるだけの任務って!!」






 私こと傭兵系美少女な大鳥ホノカちゃんは、

 心の底からこういう見守り任務って楽だって思うんだよねー!!




 ポテトチップス食べちゃおwwwwwwwww





<コトリ>

《狭い所でポテチ食うのも論外だし、

 のり塩とか正気?海苔まみれにする気か、コックピットを?》




 はい。

 いつも真面目な相棒AI、コトリちゃん静かにブチギレー。



「もう海苔まみれでも良いじゃんか。

 なんだかんだ、最初の機体の時から乗り慣れて、何度も修理したこのコアとももうすぐおさらばなんだしさ」



 この機体、こと『ティタニス』は、各部パーツを組み替えられるeX-Wの中でも、人型兵器という言葉を投げ捨てたガチガチに重装甲にしたタンク型脚部のすんごい硬くて強い機体構成(アセンブル)なヤツ、



 つまち『ガチタンアセン』なんだ。

 狭い割にちょっと余裕ある気がしないでもないなか、頑張ってのり塩味をパリパリしてるのだ。



 そして、このコアは、かつて借金のせいで身体売ったら傭兵になってしまった私の思い出、


 最初のカスの試験を乗り越えてから何度も乗った支給された機体の、いわゆる初期コアなのだ。



 思い出深いなぁ……まぁもう直ぐお別れ。




 あ、そうそう。

 実は私ねー、もうすぐ傭兵(スワン)辞めるんだー?



 やっと貯まったんだよ!!!

 傭兵契約の解約金500万cn(カネー)!!!!


 1cn=ユニオン陣営通過で1万円するんだよ!?!!




「いやー、1年ぐらい死地に飛び込んでたっけぇ??


 ようやく人生買い直したー!!!

 長かったー!!!」




<コトリ>

《けどまだこの星が戦争中で、傭兵辞められないじゃんか。

 良いのそんな弛み切った態度で。


 死ぬよ?》



「ゲフゥ!!嫌なこと思い出させちゃてー……」



 そう。


 今は戦争中で、私はもうお金を稼ぐ必要もないのにまだここにいるんだって。


 他人事にしたいー!!!!!!!!

 やーだー!!もう戦いはいーやー!!!!

 人殺しはいけないことじゃんか!!

 それ以前に面倒臭いんだよねー!!!!!

 面倒くさいんだよねー!!!人殺しってさー!!!


 だから私は人殺しは嫌いです。

 簡単に殺せても、簡単な時は大抵数をこなす必要があるしぃ?

 殺しにくい奴を相手にするのは……とにかく面倒臭い。


 もうババ抜きで戦争の勝者決めてよね。

 暴力反対。殴ってもなかなか死なない相手をなんで死ぬまで殴り続けないといけないのか。

 先に私が死んだらどうすんだよ。



 あーあ、貧乏が悪いのかー?


 貧乏の原因の顔も知らないお母さん、とある事情を知ったせいでそんな恨み辛みを向けるにはちょっとこう恨みきれないもんでさ……育ての親のおばあちゃんと同じ墓に入れちゃったし。

 人殺ししまくって稼いだお金で建てた墓ってのは気になるけど、そこは許して二人とも。


 ま、金は金だし汚かろうと関係ないか。

 一応正規の仕事だしね。傭兵業。




「あー、マジで突っ立ってるだけだしサイコー!!

 もう正直戦闘とかしたくなーい!!」



 そして、これが私の心の底からの本音だったんよー!




<ミコト>

『コイツ、これでこの世の傭兵(スワン)で頭から9番目に強い傭兵って本当なの??』


<フミカ>

『コイツって言い方は良しなさいよ、歳下でも先輩なのよ?』



 あ、隣に2機いる二人の後輩傭兵ちゃんたちに後ろ指刺されてる。

 うん、威厳ないもんね。



<ヴィオラ>

『雇い主として言わせてもらうけど、コイツこれで依頼達成率9割以上なのよね。

 実際我がハンナヴァルト領を何度も救ってる。


 コイツが』




 さらに奥の機体、重逆タイプのeX-Wに乗ってる雇い主さまヴィオラ辺境伯様にまで言われる始末。


 ま、しょーがないね。



<コトリ>

《コイツが、腹立つの実力でランク9勝ち取ってるところだと思うよ》


「相棒にまでコイツ呼ばわりじゃんよー。

 まー、私もなんでこんな強いのか知らないけどさー」



 強化人間(プラスアルファ)だからとか、なんか色々理由があって欲しいけど、

 強化人間なんて傭兵で沢山いるし、そこの新人ちゃんも数日前に強化手術受けたばっかだし。


 まぁ強いおかげで生きてるから良いか。




 ………………はぁ。



 そう、何を隠そう、隠してないけど、




 私は、凄腕の傭兵系美少女な大鳥ホノカちゃんなのだ。









「…………でさ、」


『?』


「こう言うこと言いたくないけど、

 そろそろ、本当の依頼話してくれないかなって、ヴィオラさんさ?」





 なので断言するけど、


 簡単な哨戒任務とか、突っ立てるだけの警備任務受けさせてもらえる訳ないでしょ??





<ミコト>

『は?』



<ヴィオラ>

『……アホ呼ばわりは改めるべきね。

 その勘の良さが、生き残』



「冗談だって言って欲しかったぁ!!

 適当に言ったら当たっちゃったー!?」



 うわーん!!今の無しにできない!?できない??



<ヴィオラ>

『勘の良さを恨みなさいな。

 ……トラストのオペレーターAI、アレを』




<カモメ>

『了解』




 そして無線に出てくるは、一応私担当の凄腕オペレーターなアンドロイドちゃんのカモメちゃんである。




<カモメ>

『では、これより企業連合体『トラスト』からの真のミッションを通達いたします。


 これより公開される映像記録は、トラスト並びにインペリアルの秘密情報です。


 時が来るまでは口外禁止ですので、お気をつけて。


 HUD並びに脳深部情報デバイスへ情報を映します』





 頭の中のコンピュータに映像が来る。



 フォンと出てきたウィンドウには、目が細い一人の女の子……虹色の角が2つ生えた、ネオツー・デザインドの子が、机の上で手を組んでこっちを見ていた。





『はじめましての方は改めてはじめまして。

 私は、火星統一政府の行政官代表のカヨコ・ヒーリア。


 いわば、あなた方人類生存圏全ての勢力並びに企業の敵の代表、という立場のものです』




 なんと、偉い人?

 私とタメ歳ぐらいじゃね??



『中立国蒼鉄王国経由で送った物理データ故に、届けられるまでの時間を考慮した上で、要件は最初に言います。


 我が軍の一部が、私の意思を離れて勝手にそちらへ侵攻をはじめています。


 目標はハンナヴァルト領、奪われた超弩級歩行型移動要塞『フォートレス・オブ・ホーネット』の奪還。


 休戦に向けた交渉を申し出ている身でありながら、この様な事態を招いたことをまずは謝罪します。


 つきましては、恐らくインペリアルとしてはこの件で我が国家との全面衝突も辞さない覚悟を決めてしまうでしょう。


 しかし戦争延長行為とも言える彼女らのクーデター行動は、こちらの過半数の意見としては不本意であると伝えたい。


 なので、我々はかの戦力の正確な情報と同時に、企業連合体トラストへ向けて『依頼』をしたいのです』




 依頼。


 ────用は、金か何か払うから、いつものやってくれってことなのかな?




『企業の皆様におかれましては、利益がなければ動かないでしょう?

 しかし、国交のない我々の貨幣は価値がない。


 なので、報酬は『土地』とさせていただきたい。

 前払いで、我々が調査はしたものの今はまだ採掘をしていないレアメタル鉱山の座標を同封させていただきました。


 この報酬を持って、あなた方トラストの最大戦力、


 そう、傭兵の皆様を雇いたい』




 予想通りだ。

 アホな私でも分かりやすい。




『依頼内容は簡単です。

 インペリアル戦力ではなく、あなた方トラストという第三者の主戦力で、我が方の独断行動戦力を叩いていただきたい。


 あくまで、私達火星統一政府が雇った、あなた方トラストの戦力で、です。


 我々は敗走した独断行動戦力を叩けはしますが、現在の前線を超えて行くのでは、人類生存圏外縁部の多くの土地を持つインペリアルにとっては気が気ではないでしょう?


 そのまま攻め込んでくるのでは、と思わせて交渉が不可能になることはこちらとしても不本意です。


 なので、我々火星統一政府があくまで主導であり、

 なおかつ、インペリアル勢力ではない一時的な味方の戦力が必要なのです。


 これはいわば、報酬に見合うか分からない土地を担保にした状態で傭兵を雇いたいという無理なお願い同然です。


 しかし、もしもトラストが各勢力の政治的配慮をしている上で、あくまで企業の本質である『利益の追求』を目指すものなら、


 どうでしょう?販路を広げる気はありませんか?



 返信は不要です。どう転ぼうと、こちらは血を流して不利に転ぶ。


 ただそちらが依頼を受けて頂けることが、こちらとしてもトラストの受け入れという要求が通りやすくなるよう世論を誘導できるチャンスとは思っていますがね。


 そろそろ、この戦争はそちらの勢力にとっても割に合わない中でももっとも割に合わない戦いになっているはず。


 色良い返事を、どうか行動で示していただきたい』




 そこで、動画は終わり。



「…………クオンさん達のトラストの社長さん方、受けたんだね?」


<カモメ>

『ええ。レアメタル鉱山の裏付けも済んでおります』


<ヴィオラ>

『金が絡むと話が早いわね。

 ただ、インペリアルとしては手出しはしないけど、見張る中でこの依頼を受けて欲しいの。

 皇帝陛下も、皆の手前強い抵抗姿勢は崩せないけど、きっとこれ以上の戦火は抑えたいはず。


 交渉の窓口のために、中立国だけじゃない、この火星で3大勢力と渡り合える、そして3大勢力にもっとも逆らえない企業という仲介役を置くのは、恐らくユニオンもオーダーも非公式ながら既に陛下と合意は済ませてるはず。


 で、ここからは火星で一番フリーな戦力のあなた達の出番です』



<ミコト>

『嘘でしょ!?

 楽な任務って言うから、私らジャンケンしてまでとったのに!!』


<フミカ>

『詐欺でしょこれは!!』



「新人ちゃんさぁ……

 忘れた?


 楽な内容の任務に、割りの良い任務なんて、


 大抵は『騙して悪いが』から始まるもんなんだよ。


 私なんて夕飯ポテチだけだよ、まだマシでしょ?」





 水飲んだタイミングで、空が赤くなって遠くから爆発音が響く。


 もう、説明もいらない戦闘開始の合図だった。




「まったくさ、せっかく傭兵辞められる金貯めてるのに、こんなの詐欺ってのは世界に行ってやりたいよね」



<コトリ>

《じゃ、話し相手にしかならない私じゃなくて、本来の『ティタニス』専属のAIに変わるから》



 そして相棒は冷たーい!!



<メイド>

《変わりましたがご主人様?

 出番の様で》


「よろしくメイドちゃん」



 AIユニットの2頭身ボディが、メイドちゃんっぽいからメイドちゃん。

 そんな安直な今日の相方のAIに変わりまして、戦闘準備はOK。





「それで?

 私達何すれば良いわけ??」



 と言うわけで、まずは本当の依頼内容の確認だね。





 どうせろくな依頼じゃないさ!!!






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