MISSION 19 : なんか物騒なの来ちゃったんですが
ついに弾体を亜光速まで加速させて撃ち出すUFOキャノンにより、強固な守りの移動要塞フォートレス・オブ・ホーネットの一角がが破壊されて、一時的に機能を停止した。
<ハルナ>
『死んだー!!私死んだー!!』
<ティア>
『バカだねぇ、死んだらそんな元気なもんかい!!』
そして、ほぼ足元にいた傭兵たちも生きていた。
それは賭けだった。
襲いかかる精鋭機体達、防御に優れると噂される量産機達を咄嗟に盾にして、姿勢を低くし衝撃波に耐えて生き延びたのだ。
<ヴィオラ>
『武器が無事ならそのまま突撃よ!
ぶっ壊れたなら無事なやつを拝借しましょう!!』
折れたスナイパーキャノンをパージし、背部ハンガーのライフルに切り替えるヴィオラの機体。
<ミコト>
『お次は何さ?』
<ヴィオラ>
『見なさい。察しのいい傭兵はさっさと動いている』
上空へ頭部カメラを向ける仕草を追って、周りの機体達も上へ頭部を向ける。
そこには─────
***
<火星統一政府軍精鋭9>
『クソッ!!この、こんな非道な真似を!?!』
「生きてるから良いじゃん。それに、戦場でそんな良い子ちゃんが生き残れるわけ?」
<ルキ>
『気持ちは分かるわ。だから脱出はさせてあげる。
だって、役目は終わったでしょ?運良く生きてるもの。あははは♪』
私こと大鳥ホノカちゃんのグレートアークと、妹のルキちゃんの乗るバルチャーグリフィスの脚の下。
あの爆風の盾代わり、今はサーフィンの板みたいになってる敵の機体の人にそう言ってから、蹴り入れて地面に叩き落とすのだ!
<火星統一政府軍精鋭9>
『な、貴様ら!?
このクズ人間どもめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
ああああああああああああママァ!!落ちるのこわいよぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!』
<コトリ>
《上に上がったのは正解だね。
爆風に乗って、あえてダメージを逸らす。
そして、同じことを考えた敵を盾代わり。
私の人格データの元ネタが生きてるころ、地球でも良くやったよ》
<エーネ>
『ごめんね敵さん。
悪いとは思ってるんだ。死にたくないだけで』
<ケルヴィ>
『すまんな。弔いはしておく』
<ドミニオ>
『死んでないかもなのにこりゃ酷いね〜』
『『『『ああああああああああああああッッ!?!』』』』
同じくボロボロの敵を足蹴にするみんなと共に、さてと言いながら下の要塞を見る。
<ルキ>
『対空砲は撃ってこない……どころか動いてすらないみたいね』
「やることはひとつか」
<コトリ>
《…………あんまりこう言う、ノリのいい事言うキャラじゃないんだけど……まぁいっか》
コホン、とコトリちゃんは電子音声で咳払いして、左腕部をライフルごと上げる。
<コトリ>
《───突撃ィ〜〜〜!!!!》
『おーーーーっ!!!』
何故か無線でラッパの音を響かせて、みんな揃って大急ぎで要塞の方へ駆け足ブーストで向かっていくのだった!!
ほら下でもヴィオラさん以下新人ちゃんやらおばあちゃんやらみんなで要塞に登ってる!
突撃の時間じゃー!!!
わーーーー!!!
***
─────甲板が一個潰れただけじゃありません!
───内部電装系があちこちお釈迦になってる!!
「……うっ……!」
外の騒がしさと、全身の痛み。
火星統一政府軍中将、カナデ・グレインの目覚めは最悪だった。
「機関長、動かせるか?」
『逃げるようにするだけで精一杯ですよ!!
もっとも今、相手に砲塔の一個や2個破壊されたら間違いなく有爆で死にますがね!!』
「そこはなんとかしよう。
ホーネットを失うわけにはいかない」
ようやくはっきりした意識の中、今のいる場所がCICなのを思い出す。
酷い有様だった。
一応は最も被弾した際のダメージがない場所にあるはずのここが、あちこち火災の後やら壊れた機器やらで酷いことになっている。
「……ホーネットは、どうなった……?」
「!?
中将、目覚めましたか!?」
艦長であるノアは無事だったようだ。
どうやら、情けない目に遭ったのは自分だけらしい。
一応はオペレーターも操舵も人員は生きているようだった。
「見ての通り酷い有様です。
どうやら、私はやはり一つの艦を任せられるだけの知能はなかったようで」
「……攻める気は、ないさ。
特攻まがいの作戦、それを成功させるだなんて……ぐっ!」
立ち上がり、軽く痛みにうめきつつもノアの隣に歩み寄るカナデ。
そこでふと……ノアの格好が違うことに気づいた。
「……いつパイロットスーツに……?」
「今しがたです」
スーツの前のファスナーを上まで上げ、ふとノアがカナデへ姿勢を正し向き直る。
「そう言うわけで申し訳ないですが、この艦を危険に晒した無能なりに只今より艦を守る為の行動をとります。
それで申し訳ないのですが、カナデ・グレイン中将閣下。
このホーネットの指揮をお願いしたい」
まさか、とカナデは青ざめる。
「君は……あの部隊は退役したはずだろう!?」
「役立たずは役立たずらしく、役立たずの方法でケツをふく以外できないと判断しました。
なので、本来の任務に復帰します!ご心配ありがとうございました。それでは」
答えを聞く前に、すでに踵を返して立ち去り始めた。
確信犯め……とすぐにカナデは声をかける。
「『B1』!」
「は!」
「頼んだ」
「……頼まれました!」
敬礼もそこそこに走り去るノアを見て、仕方がないとため息をつきながらも、艦の指揮を引き継ぐカナデだった。
***
「突撃ィィィィィィィ!!!!!」
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!』
無線のノリにとりあえず合わせて叫ぶ!
そんな空気が読める傭兵系美少女なホノカちゃんです!
と言っても、今乗ってるグレートアークは多分一番早いから、ストライクブーストもしてないのに一番乗りで、おっきな要塞に着地!!着地でいいっけ!?
<イオ>
《ささ!ぶっ壊しちゃいましょう!
カモメさんから来たターゲットマークを表示します!!》
「おっけー!」
早速見えてくる四角いマーク達。
ぶっ壊せってことは分かってる……じゃあ、早速!
ブゥン!
まず手短なところ、目の前の箱みたいなでっかいキャノンだ!!
必殺の光波ブレードで、一刀両断!そして爆発!
「やっぱデカいの相手はブレードだよね!」
<イオ>
《レーザーブレードの原型は建造物解体作業用ですからね!》
「じゃあ、今はドカタ系美少女な大鳥ホノカちゃん、
解体ショー、次行くね?」
ひゃっはー!要塞解体ショーの始まりだー!!
次はあそこの砲台じゃー!!!
カァオッ!!
って思ったら横から取られたー!!
私の獲物を撃ったの誰!?
<シルヴィア>
『はっはっは!!近づいて仕舞えば、ヨークタウン級の素晴らしい高エネルギー伝達設計も、杜撰なダメージ管理しかできない欠陥という訳だよ!』
あのちびっ子のデカ太重2!!名前なんだっけ?なんとかキャッスル??何城!?
まぁそれより見た目通り火力も高いからねぇ!!
一撃爆散だよ同じぐらいデカい砲塔が!!
<ありす>
『えー、ありす3番乗りぃ?
他の子だらしなくなーい?』
ズカカカカカカカカカカッッ!!!
と思えば、我が心の友ありすちゃんの愛機、ピンクのガチタンことハピ⭐︎タンがゴツい4連装オトキャを2丁拳銃しながらやってきた!!
左の甲板がもう大炎上だ!いや物理的にね?ありすちゃん炎上しそうなアイドルじゃないし。
<シルヴィア>
『そうら、新人くん達よ!ボクのキャッスルブラボーよりも軽快な君らもブレードですぐに破壊をしていきたまえ!
動きが止まっているのも一時的だ!
Eシールドと違い武装はすぐ動き出すぞ?』
『『『『了解〜!!!』』』
なんて、まだ10歳にもなってない子に顎で使われる新人ちゃん達も見える。
これなら、こっちよりはあっちの無事な甲板に行こう。
ドヒャアッ!
向こうの甲板に来た。やっぱ乗ってる新型愛機のグレートアークは早すぎるし軽すぎる。
でもおかげで、光波ブレードの射程内だ!
ブゥン!!
パシュゥッ!
「へ!?」
完璧に決まった光波ブレードが、突然現れた光るシールドにかき消された。
「まって、Eシールド!?
もう敵のシールドが復活したの!?」
<イオ>
《違います!!
甲板カタパルト方向!!来ます!!》
ボッ、ボッ、とやってきたのはグレネード!
慌てて避けて、近接信管ってヤツで起爆した爆風と破片とかからもグレートアークの最高速度で避ける。
でも今度はボボボ、って弾が飛んできた。弾速と弾幕でガトリングって分かる。
そうガトリング。
いくら私がね、人の名前もパーツ名も分からないアホの子ホノカちゃんでも、異常だって分かる!
「なんか敵っぽくない攻撃だなぁ!?」
<イオ>
《敵ですけど……敵っぽくないのも当然かも!
アレを!!》
ストライクブーストを蒸してやってくる機体。
4脚のシルエットだ。見慣れたね。
でも、その見慣れたっていうのは敵の機体だからじゃない!
「カモメちゃんごめん!!
グレートアークのカメラ越しで見えてる!?」
<カモメ>
『こちらオペレーターのカモメです!!
ええ、そりゃあ見間違えませんとも、あれは!!』
────確かあの脚、シンセイスペーステクノロジー社の脚。
もう分かるよね?
あの機体は私らと同じ、
機動兵器エクシードウォーリアだ!!
<謎のeX-W>
『まさか、この要塞を小破まで追い込むとは。
なるほど、いくら民生品兵器とはいえ正規軍以上の実戦経験者か。
相手が悪いな、我が方のひよっこどもでは』
わざわざ広域無線で語りかけてくる謎の4脚eX-Wさん。
というか、密かにレーダーには別の反応!
目視で見れば、この移動要塞の甲板には、私達以外のeX-Wが上がってくる!
「誰だよアンタら!?
まさか傭兵!?」
<謎のeX-W>
『違法傭兵としての経験もあるがな。
本名のノア・グレイブの名で聞いたことはあるかな、敵の諸君?』
<カモメ>
『ノア・グレイブ!?
ウォーキング・ヘル・グレイブの!?』
「カモメちゃん知ってるの!?」
わざわざ答えてくれた相手の言葉。なんかヤバいのかな、それ?
<カモメ>
『懸賞金額450000cnの違法傭兵です!!
最後の目撃例で単騎でランカー上位の一桁ナンバーの傭兵6名同時とMW部隊50機を相手取り、
その全員を完膚なきまでに叩き潰し、その戦場が火の海になったほど苛烈な戦いをした伝説の違法傭兵!!
とにかく、全て叩きのめし燃やし尽くす戦い方のせいで『歩く地獄』グレイブと言われている危険な相手です!!
あの肩の複数のヘリコプターが描かれたのエンブレムも機体構成も、若干差異はありますが間違いありません!』
「なんでそんなのが敵の移動要塞にいんのさ!?」
<ノア>
『私が答えよう。
そもそも違法傭兵の多くはそちらの人類生存圏に存在する反社会性力の名を借りた我々火星統一政府の工作部隊だ。
目的は情報収集と、仮想敵部隊の組織だ』
「……あぐれっさーってなに?レッサーパンダの親戚だっけ?」
<イオ>
《もう忘れちゃったんですか!?
訓練とか演習の敵役の部隊ですよ!!
似た様な事やりましたよね??それもちょっと前に!!》
「そうだっけ?
……そうかも」
ダメだこりゃ。私の脳みそはやっぱポンコツだわ。
しかも広域無線越しに相手がククク、ってめっちゃ笑ってるし。
<ノア>
『ククク……随分、腕の噂の割に面白い性格をしているようだな大鳥ホノカ』
「知ってるんかい、私のこと」
<ノア>
『知ってるも何も、ずっと会いたかった。
ファンなんだ、お前のな』
……へ?
「何、私のファンなの?
サインでもあげようか?芸能人とかアイドルみたいなサイン書けないけど」
<ノア>
『ファンサービスが良い様だ。
なら欲しいものならある。それをもらいに来た』
「何欲しいわけ?」
<ノア>
『当然……お前の命と、お前の機体の残骸とのツーショットだ!!』
相手の4脚のガトリングが火を吹く。
避けた先を予知して、デカいグレネードが飛んでくる!
グレートアークじゃ一撃死確実じゃん!!
───でもグレートアークの反応速度のおかげで避けられた。即死コンボじゃん!
「流石にそんなファンサービスしてないよぉ!?」
<ノア>
『お前が当確を表した時、私はすでに任務を終え帰還せざるを得なかった!
アグレッサー部隊『バウンティ・ターゲット』を組織するためにな!!
それ自体は良い。任務である上に、教育する立場は嫌いじゃない。
だが私は、他のネオツーデザインドの仲間とは違っているのだ。
何故なら、私は!!
こうして敵を殲滅する事が心底楽しいからな!!!』
左腕、弾速の速いHEATライフル!!
慌てて避けたと思えばミサイル!!
回避するにもガトリング!!
なんて無茶苦茶な戦いだよ!?
さっきあの過激なファンが、今も流れ弾が当たるこの甲板の砲台に張ったEシールドがもう消えそうじゃん!
「バトル中毒者ってヤツ!?
しかもトリガーハッピーって来たか!!」
<ノア>
『的確な表現だ!!
先程ふざけていても隙をなかなか見せなかっただけはある!!』
相手の機体は、脚はシンセイスペーステクノロジー社製のパーツだった。
つまり、安定性もあるけどかなり速度が出る。
重いけどあの長めの脚は運動性能がいいんだ。甲板をアメンボみたいにスイスイ動いて攻撃してくる……!狙いがつけづらい……!
<ノア>
『ククク……B1よりバウンティ・ターゲット全機へ。
お前達も何回かは辛酸を舐めさせられた傭兵達が相手だ。
久々に、これまでのルールありの精鋭を育てる為の戦い方じゃあない。
黒鳥と罵られ、硝煙の煤と戦場の泥で汚れた灰色の白鳥どもと区別された我々らしい、全て焼き尽くすように戦う為の戦い方をするぞ』
レーダーに新しい影が映る。
やばい、移動要塞から翼みたいに伸びてる甲板のエレベーターのある場所から何機も出てきてる!!
チラッと見れば、やっぱりいつもの敵じゃないけど見慣れた形。
私達と同じ、eX-Wだ!!
<ノア>
『狩られる賞金首だった時間は終わりだ。
好きに暴れろ。
要塞が傷つく程度やりすぎなければ勝てない相手だと思え。
私はもう待てない……!
各自───戦闘開始!!』
まるで、ミサイル見たいな勢いで、
敵がどんどんエレベーターの入り口から飛び出してくる。
そして相手の4脚もガトブッパで突っ込んできた!!
「そういうノリ嫌い!!!」
勘弁してよ、もう!!
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