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第一話




授業中ふと窓の外を見ていた。

すると中庭の花壇を眺めている1人の人物を見つけた。

その人はいつもとは違い頰を赤くさせ目をキラキラさせていた。



その瞬間私はーーー




ここは私立A学園高等学校。

100年以上もの歴史と伝統を持つ女子校、、、だった。

元は女性の自立のため縫製学校として開いたのが始まりであり、多くの女性がここで技術を身につけ社会へ旅立って行ったそうだ。

現在では一般的な高校となっており、皆日々勉学に勤しんでいる。



私、本郷ゆづ葉(ほんごうゆづは)はこの歴史と伝統ある高校に入るため勉学に励みに励んだ。

元々成績は悪く無かったが確実な合格を手に入れる為、日々勉学に勤しんだのだ。

合格発表の時ほど緊張したことはこれまでにないだろう。パソコン画面を食い入るように眺め自身の番号を見つけたときの高揚感は今でも忘れられない。


晴れて私はA学園高等学校の生徒となり、本校の門をくぐったのである。



私がここまでしてこの高校に入りたかった理由、そして目的。他人にとっては意味が分からないだろうが、私の中では最重要項目である動機がある。

 



それは、、、

女子校と言う名の乙女の花園(パラダイス)へ足を踏み入れ、愛らしい彼女たちの成長をより身近に愛でる為であった!!!



、、、コホンッコホンッ。失礼した。

えー、勘違いして貰っては困るが私は歴とした女子だ。性別を偽って女子校へ入学しあれやこれやをしようというゲームの様な設定は全くない。

かと言って女子なのに女子を愛でたいとなると今度は恋愛対象なのかと思うかもしれないがそれも違う。

もちろん偏見がある訳ではない。好きになったなら年齢性別なんて関係ないと思っている。だが未だにその感覚は経験したことは無いのだ。



つまり基本可愛いモノ好きな私は、女子を愛でるということで現状満足しているのだった。



そうそう女子と括ると年上の方々は省くのかと言われれば答えは“N O”である。

女子、いわゆる女性というのはいくつになっても至高の極みであり、可愛く儚く愛おしい存在だと言うことだ。

その年代によりまた違った可愛さがあり、つまりは女子(可愛い)は正義で絶対なのだ。



まぁそう語る私自身も女子であるが自分に対しては可愛いという言葉は当てはまらないだろうと自覚している。

私の顔はいたって普通だと思うのだが、一重で目付きが鋭いのが全てをマイナスにしている。

そして周りにいる女子と違い可愛げのない性格で愛想もいい方ではない為、悲しいかなみんなから距離を置かれている。



入学当初、可愛い女子達に対し普通な態度(鼻息が荒いのは抑えていたはず)で接していた私だったが、会話を始めると何故だかみんな段々言葉が続かなくなっていったのだ。

そして震え出し最後には泣きそうな潤んだ瞳をしながら俯き、周りの友達に支えられ離れていくのだった。



その後何度か彼女達に話しかけようと試みたが、目が合えばビクッと肩が震える姿を目の当たりにしてはそれ以上言葉を掛けられ無かった。


可愛い女子達にとって私は怖い存在なのかもしれないとその時悟ったのである。



それでも希望を持ち2年生になり、そして結局諦念の心で3年生となった。

まぁ、私の中の可愛い女子を愛でたいという感情がだだ漏れで、無意識に女子達がそれを感じ取り避けている感も否めないが。



そんな日々ではあるが入学当初よりは落ち込んではいない。

なぜなら私の視線に気付きビクッとなる彼女達の仕草がまるで小動物の様に見えるのだ。あぁ尊い。彼女達の可愛さに果てはない。

そして私は気にしない風を装いつつ、心眼をフル稼働させ細部までその姿を記録している。



これはこれでいい。だがしかし少しはお近づきになりたいという欲求もあるのでどうしたら良いものか日毎考えを巡らせている。


そんな事を考えながら窓の外をぼーっと眺めていると




「お~いゆづ葉~、また残念な事考えてな~い?そしてその思考とちぐはぐな物憂げな顔、遠巻きに見られてるよ~」




間延びした口調で突然そう話し掛けてきたのはクラスメイトの足立夕子(あだちゆうこ)だった。

この学校で唯一怖がらずに話しかけてくれる最愛の友人である。



夕子は所謂美少女だ。

目はぱっちり二重で鼻筋はスッキリと。肩までの短い栗毛色の髪。低めの身長が幼さを醸し出しているが出ているとこは出ていて締まっているところキュッとしていてスタイルは抜群。


唯一の欠点と言えば勉強が苦手な所だ。頭の回転は早く地頭は良い筈なのになぜか勉強方面には向かずからっきし。

毎回テスト返却時には死んだ魚の様な目をして灰になっている。

もちろんそんな姿も限りなく可愛い事を付け足しておく。

そんな彼女とは小学生からずっと一緒の幼馴染という間柄で、私の趣味嗜好を熟知しており気兼ねなく話せる強い味方でもあった。




「いやいや目つきが悪い私を見る物好きな子はそういないさ。

ん?いや待てよ、もしかしたら女子好き思考がダダ漏れでヤバイ奴って見られていた可能性も!!

あぁ変な注目を浴びてこれ以上避けられない為にも気をつけねば。

そしてなんとしても可愛い女子をより側で愛でなくては!」




「うっわ~、その話だけ聞くとド変態なんだよね~。幼馴染の私でも流石に遠巻きにしたい感出てくるわ~。

、、、けど、遠巻きにされちゃってるのはちょっと違う理由なんだよね~」



そう意味深な事を言いつつ周りを見渡す夕子。私は意味が分からずコテンと首を傾げていると、夕子がはぁと深い溜息をついたがその後言葉は続かなかった。

私にはその「違う理由」というのを教えてくれる気は無いようだ。

それにしても夕子の語尾が伸びる話し方はいつも可愛いな!、、、辛辣な言葉は胸に刺さるけど。




「いや私はド変態では無いよ、自分に正直なだけだ。可愛いモノを近くで愛でたいと思うのは当たり前のことさ。

ん?でも実際遠巻きにされているということはド変態認定されているという事なのか??

それが本当なら、、、ツライ。


いやいや、それよりも夕子は私と居て大丈夫なのか?私のせいで夕子まで遠巻きにされたり避けられるようになったら嫌だな。大好きな存在が辛い思いをするのは耐えられないよ。」




私がそう言うと




「はいは~い、相変わらずセリフが臭いわ~。胸焼けするわ~。

大丈夫。私は自分が一番可愛いからね~、何かあればいっつでもあんたから離れてあげますとも~~」




半眼で素っ気ないことを言う夕子だがこれでいて私のことを心配してくれてる節があるのは知っている。




「ふふっ、そう言いつついつも側に居てくれるから夕子は優しいよね。それに無理して悪態つくとこも本当に可愛い。

はあ、やっぱり夕子が好きだな。」




いつもの様に夕子の頰に手を添えつつニヤつく顔をなんとか抑えながら言う私に、夕子が死んだような目で呆れた顔をしていた。そして何故か両手で自分の耳を塞いでいた。



《うん!そんな顔も仕草も可愛いぞ。》と思った瞬間、




 「「「「きゃーーーっ!!!」」」」


 「「「「うぉーーーっ!!!」」」」



クラス全体から悲鳴が聞こえた。

私は驚いて周りを見るが、みんな一様に目を見開き口を押さえてる姿があった。


《ん?ん?なんかあったのかな?》


とキョロキョロ周りを見渡していた私に夕子が何か言っていたが、耳がきーんとなっていた私は聞き取れなかった。




「本当、無自覚垂らしは手に負えない」








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