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【両想いの魔法陣】 SWEET★FIL ~ 火力最強の非戦闘員!? ~  作者: 三色アイス
第1章 エルドの町
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火祭りの準備

 あっという間に月日が過ぎ、火祭り前日になった。


 今日は夕方から火祭りで販売するフィナンシェの最終打ち合わせに参加する為、大きな公民館のような建物にきている。クルトもレブロも忙しく、手伝うのが私ということもあり、参加することになったのだ。


「ふぅ~終わったぁ…こっちだったかな?」


 必要なところだけ参加し、先に会議室から抜けた私は、建物の中で彷徨っていた。キョロキョロしながら歩いていると、突然何かにぶつかる。


「……痛ッ!」


 ぶつかった勢いで足がもつれて尻餅をつくと、女性の声が聞こえてくる。


「ごめんなさい! 大丈夫?」


 声のする方を見上げると、20歳手前くらいの知らない女性が扉から顔を出し、すぐに駆け寄ってきた。


 どうやらタイミング悪く開けた扉にぶつかったようだ。


 女性から中腰で差し出しされた手を取ろうとした瞬間、


 …え!? 着てないッ!?


 痛みが一瞬で吹き飛び、女性を凝視する。


 私の驚きが伝わったのか、女性がすぐに差し出した手を引っ込めて、背を伸ばす。ベージュのビキニのようなものを着た女性は「ほら、ちゃんと着てるわよ?」と笑顔で話しかけてくる。


 …確かに着てる…着てるけど…ほとんど出てるんですけどぉおッ!?


 気になりつつも引っ張り起こしてもらい、もう一度マジマジと見つめていると、他の女性の声が聞こえてくる。


「どうしたの? 早く練習に戻って!」


 話しながら顔を出したのは、ギルドマスターの娘ニナだ。通路に突っ立ている私を見ると、すぐに話しかけてきた。


「あら?ステラちゃんじゃない、見学にでもきたの?」


「いえ、ちょっと迷ってしまって…」


「そうなのね。んーそうね、後学になるかもしれないし、せっかくだから見学してく?」


「あ、はい!」


 流れに任せて返事をしてしまった…すぐに帰る予定だったのに!


 会議室の中を覗くと、最終打合せをした会議室とは違い、椅子も机も置いていない。壁も鏡になっていて、まるでダンススタジオのようだ。ここで明日の本番に向けて、女性だけで行われる『エスプロヴェート』の最後の練習をしているという。


 1人…2人…7人か。しかも…みんなビキニ…


 私が見回していると、元気な声が聞こえてくる。


「あっ! ステラちゃんだ!」


 話しかけてきたのは、道具屋のリリカである。リリカは、今年成人したばかりで16歳だ。道具屋には度々買い物に行くので、話しをするようになった。長い小豆色の髪を綺麗にまとめてポニーテールにしている。


「ステラちゃん見学にきたの?」


「明日の打ち合わせで来てたんだけど、迷っちゃって」


「ここって似たようなとこ多いし、意外と広いもんね! あたしも最初はよく迷ったよ!」


 リリカと話していると、突然柔らかなものに挟まれる。


「スーテーラちゃん♪」


 後ろからぎゅっと抱きつかれて、思わずハウッと声が漏れる。上を見上げると、ルカと目が合った。


 リリカとルカは姉妹で、ウェーブのかかった飴色の髪で、確か20歳くらいだったはず。


「あの…コレって…」


「ウフフッ、柔らかかった?」


 ルカに離してもらい振り返ると、わかってはいたが、女性でも釘づけになるほどの、まるで小ぶりのスイカのような胸がプルプルしていた。


 …F…いや、G?…もっと大きいかも…


「Iカップよ、ウフフッ」


 心を読んだのだろうか、ルカから正解のカップ数が伝えられる。


 …ワタシハコレカラセイチョウキ…


 板のような自分の胸を見ながら、呪文のように自己暗示をかけておく。


 再度、ルカを見ながら、衣装について考えてみたが、それが衣装ってことないよね…さすがに。


「あの、本番ってその…今の衣装のままなんですか?」


「あら? ステラちゃん、見たことなかったのね。見せてあげるわ! 火傷しちゃうから、ちょっと離れててね! ここにね、こうやって自分の火をつけるのよ」


 色っぽい声で《アリュメ》と、ルカが呪文を唱えると、ビキニに火がつき、炎のビキニが出来上がる。


「おおぉ~すごい! きれい!」


「ウフフッ、ステラちゃんって可愛いわね!」


「でも、その…ズレたりしないんですか?」


「大丈夫よ、ちゃんと魔法で固定してるから。ほら、ここ引っ張ってみて」


 火の消えたビキニの腰紐を引っ張ると、全然動かない。


 再度、感動していると、パンパンッと手を打つ音が会議室に響く。


「さぁ、休憩終わり。明日が本番よ! 最後に通しでやって終わりにするから」


 ニナが集合をかけると、女の子達が「は~い」と言いながら集まっていく。


 私も、みんなの後ろに移動し、体操座りで見学することにした。


 女性の『エスプロヴェート』は、ダンスだ。16歳から24歳までの未婚の女性の中から選ばれるようになっているそうだが…顔と胸が選考基準なのは間違いない。ニナは後学なんて言ってたけど…私が選ばれることはなさそうだ。


 ダンスはフラダンスとフラメンコが混ざったような曲と動きなのだが…なぜか最後に全員で「ファイヤーリンボー」という、かけ声と共にリンボーダンスが行われる。


 最初はみんなで炎のついた水平のバーを潜り、どんどんバーの位置を下げていく。最後は50センチも満たないような高さのバーを1人がくぐって、決めポーズで終わる。


 なぜリンボーなのか、という疑問は解決できなかったが、ビキニの布面積については、小さい方がその年が豊作になるらしく年々小さくなっていったのだと、ニナに教えてもらった。


 通しでのダンスが終わると、ニナが手を叩き、


「はーい、終了! 明日の為に今日はゆっくり休むように! 解散!」


 と言うと、微笑みながらルカが何かを持って近づいてきた。


「ねぇ、ステラちゃん。レブロさんって彼女いるって聞いたことある?」


「うーん、聞いたことないです」


「良かった! なら、これをレブロさんに渡して欲しいの。お願いしてもいい?」


 ルカが差し出してきた手には、『エピスト』が握られていた。


= 『エピスト』=

宛名の人だけが開けられるようになっているサイコロを大きくしたような魔法の手紙。

色々な柄があり、文字以外にもエピストで包めるサイズなら物を入れることも可能。



 ルカからエピストを受け取ろうとした時、「アーーーーッ! ズルい!」と部屋の中に大きな声が響く。


 ズカズカと早足でやってきたのはマリンダだ。マリンダは、よくメロンパンを買いにくる町長の娘だ。


「ルカ! 抜け駆けはやめてよね! あたしがレブロさんに渡してもらうんだから!」


「あら? マリンダ。アイールに彼氏ができたってこないだ話してなかった?」


「それはそれ! これはこれよ! アンタには関係ないわ!」


「まぁ、彼氏がいるのにレブロさんに渡すなんて失礼だと思わないの?」


「…ッ、何よ! ちょっと乳が大きいくらいで、調子に乗らないでよね!」


「あらあら、僻んでるの? そんな小さなサイズにしても、大きくはならないわよ?」


 さっきから気になっていたが、マリンダだけは他の人よりもビキニが小さい。だが、ルカのも同じくらい小さく見えるのだから、不思議だ。


 マリンダとルカの口論が激しくなるにつれ、部屋の中に険悪な空気が流れはじめる。


「コラ!アンタ達、こんな時に言い合いしない! 2人とも渡せばいいじゃない。選ぶのはレブロなんだから」


 見かねたニナが話に割って入ってくる。


 美人だが釣り上がった目のマリンダは、フンッとニナを睨みつけて、私に話しかけてきた。


「ステラちゃん、これをレブロさんにお願いね! 絶対落としたりしないでよね」


 私は手を出してエピストを受け取ろうとした時、マリンダの手がピタッと止まる。急に不敵な笑みを浮かべたかと思うと、「いいこと考えたわ」と私の頭にエピストを置いて《フィクス》と呪文を唱える。


「これで間違いなく届くわ。じゃ、お先に失礼しまーす」


 そういうと、素早く着替えてマリンダは帰っていた。


 町長の娘だからなのか、嫌な感じだ。頭に乗ったエピストをとろうとすると、引っ張ってもとれないことに気づく。


「アレ? とれない」


「フィクスで固定してあるから、とれないのよ。うーん、そうねぇ…」


 ルカは少し考えるそぶりを見せて、「私のもお願いね!」と、またも頭にエピストをのせられ、《フィクス》で固定されてしまった。


「レブロさんなら、とれるから。安心してね!」


 ルカはやや垂れた目で微笑んでいるが、やってることはマリンダと同じだ。


 仕方なく伝書鳩になる決意をすると、他の数名からもレブロ宛のエピストをのせられ、動くたびに頭の上からカシャカシャと手紙がぶつかる音がする。


 重くはないけど…こんなに手紙をのせて歩いてる人なんて見たことない。遅いしさっさと帰ろ。


「今日は見学させてもらい、ありがとうございました」と一礼して立ち去ろうとした時、ニナから声をかけられる。


「ステラちゃん、ちょっと待って! これ、クルトさんに渡してもらえる? 後、遅いから送って行くわ」


 ニナは素早く帰り支度を済ませ、一緒に会議室を出る。


「ねぇ、ステラちゃん。家での2人ってどんな感じ?」


「…2人って、父さんとおじさんのことですか?」


「えぇ、前に凄く喧嘩したことがあったから…どうなんだろって気になってたの」


「うーん、喧嘩とかはないですね」


「そう…それなら良かったわ! あ、そういえば、リアンは凄く踊りが上手で、ファイヤーリンボーの達人だったのよ。歴代で1番低いバーをくぐっているのよ」


「母さんがですか?」


「ええ、とても優しくて強くて、私もリアンに踊りを教えてもらったことがあったから…本当に亡くなって残念だったわ。あまり力になれないかもしれないけど、何かあれば同じ町の女同士、気軽に相談してね!」


 最初にギルドで見かけた時は、言葉遣いがキツくて怖い人だなって思ってたけど、本当は優しい人なんだな…。


 ニナは優しく微笑みながら、私の頭を撫でると、カシャカシャと音が鳴った。


「フフッ、早く帰ってこれをとってもらわないとね!」


 家の近くまで来ると、ちょうど向かい側からレブロとトトルが歩いてくる。


 その途端、ニナの足がピタッと止まり、「ここまできたら、安心ね! 明日はお祭り楽しんで」と言って、きた道を戻っていった。


 パン屋の前を通る方がギルドに近いのに、なんでわざわざ戻ったんだろう。レブロとなんかあったのかな? と勘繰っていると、向かいからレブロが早足でやってくる。


「こんな時間までどこ行ってたんだ! 早く家に入るぞ」


 家に入るとすぐにクルトから「みんな一緒だったんだね、おかえり」と声をかけられる。


 それと同時にレブロが私の頭に沢山のったエピストを指先ながら、


「その頭の上のはどうした?」


「さっきダンスの見学してたら、頼まれたの。おじさん宛だって、すぐとってよ!」


 不満そうな顔の私を見て、レブロは「はぁ」と大きなため息をつき外していく。


 机の上に全部のエピストがのったところで、ニナから預かったクルト宛のエピストをポケットから取り出す。


「父さん。これ、ニナさんから」


「ニナから? 間違いじゃないのかな? はい、レブロ」


「…いや、俺宛じゃない。返す」


「なんだろ」


「開けてみれば分かるだろ?」


「そうだね。あー思い出した、あの時のか」


 クルトの手にはエピストと一緒に、お金が握られていた。


「少し前にニナの弟のヴァンがパンを買いに来て、お金が足りなくて困ってたから、後からでいいよって言っておいたんだ。ステラ、これ売り上げにいれといてくれるかな」


 クルトから硬貨数枚を受け取り、金庫に入れにいく。戻ってくると、レブロが眉間に皺を寄せながら、もらったエピストを1つ開けると、チャリっと音を立てて、ペンダントが床に落ちる。


 クルトが落ちたペンダントを拾い上げながら、「どうするんだい?」ときくと、レブロは「どうもしない」と言いながら、ペンダントとエピストを持って部屋に戻ってしまった。


 レブロが部屋に戻った後、クルトにペンダントのことを聞こうと話しかけたが「明日は忙しいから寝なさい」と言われ、教えてもらえなかった。


 でも、あのペンダント…どっかでみたような気がする。


 私は思い出せないまま、布団に潜り込んだ。

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