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【両想いの魔法陣】 SWEET★FIL ~ 火力最強の非戦闘員!? ~  作者: 三色アイス
第1章 エルドの町
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姪の秘密と戻った理由 — レブロ視点

「カタカタ…カタカタ…」


 俺は変な物音で目を覚ました。


 まさか…泥棒か?


 ゆっくり扉を開けてみると、まだ夜が明けきらないうちに、ステラがひっそりと出ていくところだった。


 俺はすぐに止めようと思ったが、何のために人目を忍んで出ていくのか気になり、後をつけることにした。今はパン屋をやっているが元は冒険者。尾行するのは、得意分野だ。


 学校のある方向に歩いているが、いつもの道ではなく、なぜか遠回りをして向かっている。理由はわからないが、何か意味があるのか。


「…早朝に学校で勉強でもしてるのか?」


 だが、今日は休日で学校も休みのはず。そのまま見守っていると、学校を通り過ぎ、どんどん進んでいく。この先には、森しかない。


 ―まさか、森に入る気か!?


 森に子供が1人で入ることは禁止されている。大人であっても、必ずギルドでの申請が必要だ。止めようかどうか迷っているうちに、ステラが森に入ってしまった。


 俺も仕方なく後を追って森に入る。ステラは迷いなく森を進んでいくことから、恐らく今回が初めてではないのだろう。魔獣に襲われないように細心の注意を払いながら、後をつける。しばらく進むと、ステラが池の横に荷物を置いて、座りこんだ。


 この池に何があるんだ?


 更に様子をうかがっていると、立ち上がって、池の水を燃やし始めた。今いる位置からではうまく見えないが、燃えた池の水からキラキラと粉が落ちてきている。


 ―まさか、あれは『砂糖』か?


 俺も長く冒険者をしていたが、あんなに白くて甘い粉は見たことがない。メロンパン作りの時に初めて見たが、クルトに聞いてもステラが持ってくるというだけで、詳しくは知らないようだった。ただ、レイラと一緒に作ったと言っていたので、ギルドで会った時に聞いてみたが、知らないという返事だった。


 俺は直接ステラにも聞いてみたが、いつも誤魔化すばかりでどこで買っているのか教えてもらえなかった。だが、決まって学校帰り、それも遅くなる時にだけ両手に大きな袋を持って帰ってきた。


 いつも大きな袋を持ち歩いているなと思ったが、まさかここで作っていたとは…。


 突然、ステラが手を止め、茂みの方向を見る。次の瞬間、魔獣がステラの前に飛び出てきた。俺は素早く呪文を唱え、魔獣を退治しながら、ステラに近づく。また魔獣が出てきたら大変だ。すると、ステラが驚いた顔で振り返って、こちらを見てくる。


 俺は更に近づきながら、何をしているのか理由を聞く。ステラがいつものように誤魔化そうとしてきたが、今日は誤魔化されない。やっと観念したのか、今日森に来たこと、砂糖のこと、これまでの店のことを話してくれた。


 売上がそこまで悪くなっていたのか…。


 ステラの話を聞きながら、俺はパン屋を開業した時のことが思い出していた。


 俺がエルドの町に戻った理由、それは…リアンを手に入れる為だった。


 パン屋を選んだのは、俺がこの町で出来る仕事がこれしかなかったこともあるが、クルトより俺の方が絶対リアンを幸せにしてみせると証明したかった。


 だが、パン屋を開店して数か月後、リアンが事故で亡くなってしまった。きっと、家族を傷つけてでも、リアンを手に入れたいと思った俺への罰だ。


 すぐにでもパン屋を辞めるつもりでいたが、町の奴らに励まされ、やむ無く続けていた。


 しばらくすると、クルトの店に行列ができ始めた。来ていた客に何があったのか尋ねると、『メロンパン』という甘いパンを開発したらしい。俺が知っているクルトは、普通のパンでも作るのが精一杯で、何か新しいことをするような性格じゃない。


 早めに店を閉めることが多かったクルトが、朝早くから夜遅くまで工房に灯りがついていることが多くなった。気になった俺は変装して、メロンパンを買いに行くことした。店に行くと、事故で意識不明だった姪のステラが売り子をしていた。


「メロンパン1個ですね! ありがとうございます!」


 笑顔がリアンに似ているな…。


 俺はメロンパンを受け取りながら、工房を覗くと、クルトが必死でメロンパンを作っている姿が見えた。いつも何を考えてるのかわからない顔をしていたが、真剣な顔つきに変わっていた。疲れているのか、昔より痩せているようにもみえた。甥のトトルも見様見真似で、手伝いをしている。


 俺は…昔のままだな……。


 2人が結婚すると聞いた時、リアンを諦めきれず、祝福もできない自分に嫌気がさして、家を出た。リアンが亡くなった時は、もう俺には大切なものはないと思っていた。だが、3人の姿をみて、日増しに俺にできることがあれば、してあげたいという気持ちが大きくなっていった。いや、俺が3人の傍にいたいと思ったからかもしれない。


 そして、戻った俺を3人は快く迎えてくれた。家族の大切さを教えてくれたクルトに本当に感謝している。


 だから……リアン、約束するよ。君が大切にしてきたものを、これからは俺が守っていく―

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