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【両想いの魔法陣】 SWEET★FIL ~ 火力最強の非戦闘員!? ~  作者: 三色アイス
第1章 エルドの町
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花畑

 んん…いい匂い…メロンパン……?


 起きて工房に行くと、レブロがすでにパンを作っていた。早すぎじゃない!? と思った時、クルトも起きたらしく工房に顔を出した。


「おはよう、レブロ。早いな」


 いやいや、早いな、じゃないくらい早い。まだ外は暗く、ほとんどの人が寝ている時間だ。


「昨日教えてもらったメロンパンを練習したくてさ。悪いな、起こしたみたいで」


「いいよ、好きに工房を使っていいから。俺はもう少し寝るから、また後で」


 ……この2人、本当に兄弟?


 レブロは、イケメンだからもっとチャラチャラしているのかと思っていたが、すごく真面目だ。どちらかというと、クルトは寝坊してても慌てず開店時間を遅らせるような性格だ。2人の性格の違いが気になったが、私も二度寝すべく部屋に戻った。


 朝起きると、テーブルにパンとマフィンとメロンパンが置いてあった。いつものか…と思っていると、レブロが目玉焼きとベーコンを焼いて持ってきてくれる。


 今日…ついに朝食に革命が起きました! ありがとう、レブロ様!!


 私はレブロに感謝しつつ、朝食を食べ終える。登校時、クルトに授業が長引くことを伝え、3人でお店を回してもらうようお願いした。


 授業を終えた後、少し後ろめたい気持ちでギルドへ向かう。扉をゆっくり開けると、すぐに頼れるお兄さんが声をかけてくる。


「すぐに行けそうか?」


「はいッ! よろしくお願いします!」


「そういえば、名前を聞いてなかったな、俺はノワ。よろしくな」


「私はステラです! 今日はご迷惑おかけします!」


 挨拶を済ませ、すぐに2人で森へ向かう。森に着くと、前回同様ペンダントを失くした場所を適当に指さす。すると、ノワは指さしたところに行き、呪文を唱える。


「シェルル…ここら辺にはなさそうだな…」


 探索系の魔法らしく、森を進みながら、指さしたところでノワが呪文を唱えた。


 見つかるわけないのに…。


 時間が経つにつれ、一生懸命探してくれるノワへの懺悔の気持ちがこみ上げてくる。上から水をかけられたって文句は言わないッ! いや、むしろかけられてスッキリしたい!! 脳内パニックを起こしながら、少しでも早くペンダント探しを終えることを考える。時間は有限だ、これ以上ノワの時間を奪いたくない。


「もしかしたら、誰かに持っていかれたのかもしれないです。なので、もう諦めます。一緒に探していただいて、ありがとうございました!」


「…諦めるのか? 大切なものなんだろ?」


「…………」


 きっと、本当に大切なもの失くしていたら、簡単には諦めきれなかった。ノワの真っ直ぐな強い視線に、思わず目を逸らすと、何かを察したのか、話を逸らしてくれた。


「…ここまで探してないとなると、確かにもうこの森にはないかもしれないな」


「…」


「なら、いい場所に連れて行ってやるよ。せっかく森の奥まできたからな」


 俯いている私の手を引っ張り、森の更に奥に進んだ。引っ張ってくれる大きな手に、私の鼓動が早くなっていくのを感じる…いや、走ったせいかもしれないけど…。


 しばらく進むと、大きな崖があったが、ノワの魔法で簡単に登ることができた。


「着いたぞ」


 ノワの声と同時に、視界には一面の花畑が広がっていた。赤、黄、ピンク…色とりどりの花が咲き乱れ、心地よい風といい匂いに包まれる。今まで見てき中で一番綺麗な景色だ。


「…綺麗…」


 知らぬ間に心の声が漏れていたようで、ノワが話かけてくる。


「そうだろ? 俺も教えてもらった時には、感動した。特別な場所だ」


 風魔法が使えない私では、きっと来ることはできないだろう。


 お礼を言いたくて、振り返ろうとした瞬間、私の頭にポンッと大きな手がのせられる。


「少しは元気でたか?」


 急に忘れていた罪悪感と気遣ってくれるノワの優しさで、胸がいっぱいになりながら、私は笑顔で答えた。


「はいッ!」


 その後、2人で花を摘み、お礼を言って森の入口で別れた。私は摘んだ花を飾りながら、プリンスのことを思い出していた。


 プリンスもあそこで花を摘んだのかな…。

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