密談 その12
ねえ、お願い。私にアナタの体を貸してくれない?
あんたは……
私? 私はフロマ。新書の中で見たことない?
新書?
あ……アナタのその髪の色……もしかしてエクセプション?
エクセプ……?
話が進まないから、今回は見過ごすわね。それで、改めてお願いなんだけど、私にアナタの体を貸してほしいのよ。ダメ?
えっと……上手く状況が理解できないんだけど……これは夢? なんか翼とか見えるし。
夢……そうね。そうだったらよかったけど、残念ながら、これは現実。
そっか現実……あれ、なんだかすごくまぶたが重くなってきた……昨日徹夜したからかなぁ。
……ねえ、死ぬとしたら、どんな風に死にたい?
え? そうだなぁ……皺くちゃの爺になって、沢山の孫と、あんたみたいな美人に看取られて眠るように、笑って死にたいなぁ……
そう。それじゃあ、今はまだ、死にたくないわよね?
そりゃもちろん……え?
その答えがアナタの願いだと受け止め、私は今からアナタの体を借ります。大丈夫。私が体の意思決定権を持てば、そんな傷、一瞬で治っちゃうんだから。それと、アナタの妹。あの子も無事、元の世界に戻してあげる。
傷……?
見れば分かるでしょう。アナタ、あいつの攻撃を受けて腹に大穴が開いてるのよ。見てよあれ。まるでウインナー加工場かってくらい、中身がぶちまけられちゃってる。私が生命維持してなきゃ、出血多量の前に痛みでショック死してるわよ。
うえ……気持ちわり。
……アナタ、実はけっこう肝が据わってるわよね。
あれ……海は……どこだ。
妹なら、あっちで泣いてるわ。アナタが完全に死んだと思ってるみたい。だからホラ、急がないと。脳が完全に死を理解したらアウトなんだから。
……よく分かんないけど、分かった。いいよ、貸してやる。だから……助けてくれ。
任せなさい。私にかかれば一瞬で終わるわ。
すっげー……ラスボスみてぇ。
それは褒め言葉として受け取っておくわ。本当に終わらせちゃうことも出来るんだし。
夢も、現実も、ね。




