密談 その10
ダン、またここにいたのかい。本当、亡くなってから数十年の年月が経つというのに、君の奥さんの入れ物はまるで眠っているかのように美しいね。体から魂の記憶が消えてしまう前に、計画を遂行しなければ、と躍起になっていた頃が懐かしいよ。
君と私の出会いからもうすぐ十年か……ようやく全てが終わる。
君は生き返った奥さんと本当の意味で感動の再会を果たし、私は愛しの女神様に会えるかもしれない。こんなに頑張ったんだ。犠牲になった多くの命も、きっと喜んでくれるさ。だからそんな顔をしないでおくれ。
ああ、そうだ。この場所に君を呼んだのは大切な用があったからだった。
ダン、よく聞いてくれ。君の孫娘、ミドナのお気に入りが先程エリスを尋ねて来て、君に面会を要求している。
あの男は今回の計画においても重要人物だ。昨日ようやく足跡を掴んだ男が自ら僕らの前に現れてくれるだなんて、願ってもみない好機だ。天は僕らに味方をしてくれているらしい。
あの男は何か目的があって一度は姿を消したこの組織に再び現れたらしいが、そんなこと私たちには関係ないさ。私たちは私たちの全力で計画の完遂を目指すのみ。今まで通りね。
ああ、でも、油断はしてはいけないよ。相手もそれなりの覚悟をして私たちの前に戻ってきたことは間違いないんだから。
申し訳ないけれど、私は席を外させてもらうよ。
後ほど助言はさせてもらうけれど、あの男との話し合いでの選択の全ては君に任せるよ。
君がどんな選択をしたとしても、私は従おう。君の意思が一番だ。それが君の前に私が現れた意味であり、全てだ。だからほら、行っておいで、ダン・ニコルソン。
私は最終調整をして待つとしよう。
あの男――――リルクの力を最大限利用できるように。




