表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/68

密談 その9





 神様……というか、私が会ったのは女神様だな。

 恥ずかしながら親に恵まれず、虐待を受けていた私はいつも孤独でね、友達もいなかった。


 ある日朽ちた教会を見つけてからというもの、毎日そこに通って、いるはずもない神に祈りを捧げていた。「どうか僕を助けてください」とね。


 何度目か分からない祈りの最中、私はいつもとは違うことを祈った。


「友達がほしい」とか「自由になりたい」だとか、そんなありふれたことじゃない。

 私はね、神に祈ったんだ。「殺してくれ」と。


 そしたらどうだ、目の前に六枚羽の美しい女が現れた。

 彼女は自分のことを「フロマ」と呼んだ。あの神話に登場する女神の名を呼んだんだ。


 彼女は神話と同じように美しい六枚羽で空を飛び、直視するのも眩しいくらい艶やかな薄紫の長い髪をしていたし、何より左足は神話の中で彼女が神殺しの魔女ゼティルを倒した時に負傷した結果と同じ、金の義足だった。


 それに、杖をはじめとした、七色の宝玉も持っていた。当時の私が彼女を色彩の女神「フロマ」だと認めるのにそう時間はかからなかった。


 彼女は子供だった私の願いを聞いて大笑いをした。「殺してくれ」と祈る子供がよほどおかしかったらしい。彼女は私に言ったんだ。



「そんなに殺してほしければ、殺してあげる。でもその前に、世界を見なさい」と。



「お前が世界を見て、全てを知った時、それでも殺してほしければ殺してあげる。でも、それまでは生きなさい」



 お前は、神が愛した「人間」なのだから、と言っていたな。

 神とは、ゼティルに殺されてしまった己の創造主のことを言っていたのだろう。


 だから私は今も生きている。私が死ぬ時は、彼女に殺される時だ。


 それも夢物語ではなくなってきたようだ。どうやらエリス計画に必要な人材が見つかったらしい。計画の完遂まで、もう少し。最終段階に移行したと言ってもいい。


 人材が手に入ればあとは実際、計画を実行するだけだ。そのための方法も、材料も集まった。


 ダン、君の夢まであと一歩だよ。ああほら、涙を流すのはまだ早いよ。最後まで気を抜いてはいけない。もう少しだけ、私と共に頑張ろうじゃないか。



 ねえ、ダン・ニコルソン。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ