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第7話 3【地下一階にて】








 僕がベッドから起き上がったのは、時計の針が午前七時を示した頃だった。冴えない頭を掻きながら体を起こす。部屋の中に人の気配を感じた。シャワールームから水の流れる音がする。


 一体誰がいるのだろう?


 寝ぼけ眼を擦りながら首を傾げる僕は、それからとんでもない光景を目にすることになる。


シャワーの音が止まり、中から利用者がろくに体を拭かずに現れ、起床した僕に気がついて笑った。



「あ、ヒッカ、おっはよー! よく眠れた?」



 朝から優雅に汗を流していたのは暗殺部隊所属の少女、リリィさんだった。



「は、は、は――――!」



 素っ裸のリリィさんは、タオルを肩にかけた状態のままで僕の前に立っていた。

 慌てて辺りを見渡すが、リリィさん以外の人影は見当たらない。僕は顔を真っ赤にしながら、なるべくリリィさんの裸体を見ないように目をそらして服を着せると、一緒に朝食をとった。


 そんな慌ただしい朝が数十分前。



「ほらヒッカ、早くしてよぉ。これ以上遅れると、リリィが怒られちゃうんだけどぉ」



「ご、ごめん。でもあとちょっと、せめてもう一回だけ深呼吸させて」



「も~、それ十回くらい聞いたんだけど~。いーいーかーらー、行くよぉ」



「後生~!」



 僕はいよいよ迫ったミドナちゃんとの面会に緊張してガチガチに固くなっていた。

 エリス本部地下一階の廊下を僕はリリィさんに無理矢理引きずられていた。



「ほらほら早く! ミドナ様が待ってるよ!」



 大広間前までやってきた僕らの姿を視界にとらえたキャロルさんは、ドスのきいた声で、



「舐めてんのか、ああ?」



 と言い放った。



「まったく……リリィ、君は先日のことをもう忘れたのかい?」



 リリィさんの体がビクリと震えた。



「わ、忘れてないです、ごめんなさい」



「今日は運がいいことにダン様が出席されないからな。それで気が緩んでいたんじゃないか?」



「……」



「り、リリィさんは悪くありません! 彼女は僕を何度も急かしてくれました」



「でも、結果として君たちは時間に遅れているわけだろう」



「……」



 黙り込む僕らの間に沈黙が流れてから数秒、言葉を発したのはキャロルさんだった。



「もういい、この話は終わりだ。私としても、これ以上ミドナ様を待たせるのは忍びない。身を引き締めろ。君はこれから、エリスの洗礼を受けるのだから」



 生唾を飲みながら首を縦に振った僕を見て、キャロルさんは扉を開く。ぎい、と金属の軋む音がして、分厚い扉が口を開けた。



「用意はいいか? 行くぞ」



「はい」



 キャロルさんの合図と共に、僕はミドナちゃんの待つ大広間へ足を踏み入れた。





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