密談 その4
え? 私が言ってる意味が分からないの?
要は、魔血球の量が多い人間の特徴を思い浮かべればいいんだけど……大丈夫?
あー、おしい、赤髪じゃないんだよなぁ。それよりもっと、すごいの、いるでしょ?
そう、そう! 大正解! 赤い瞳の人間さ。
は? その人間たちをどうするのかって?
――――殺すんだよ。
瞳は新鮮な魔血球の濃度が一番高く現れる部分とされている。瞳に含まれる魔血球は血液中とは違い、不純物が少ないからこの実験には打ってつけなのさ。
沢山の赤い瞳の人間を殺して、まあ、殺さなくてもいいんだけど、念のため、ね。
死体から赤い眼球と、出来れば血液も抜いて、とにかく沢山集めてほしい。
人殺しは犯罪? ははは! 君がそれを言うのかい? 組織の裏切り者を殺してきた君が? おかしな冗談はやめたまえよ。今さら怖気づいたのかい? でも、もう後戻りは出来ないよ。
君は私の手を取ってしまったのだから。逃げると言うのなら、私は資金援助をしてくれている君の信者たちにこう告げよう。
「君達の崇める教祖は、自分の妻を生き返らせることしか考えていない。君達がいくらお金をつぎ込もうとも、祈りを捧げようとも、君達の大切な人は二度と戻ってはこない」と、ね。
教祖が教えを乞う相手の言うことだ。彼らはきっと信じてくれる。いや、信じさせるけれど。
あっはっは! 冗談だよ。君が情けない顔をするから少しからかってみたんだ。ごめんね?
それで、その赤い瞳と血液を集める役割を担う人選なのだけど……君の組織に暗殺部隊の子たちがいただろう? あの子たちに任せようと思う。
この間話をする機会があったのだけど、子供のわりには皆しっかりしているいい子たちだったし、適任だと思うんだ。後で君からあの子たちに極秘任務として伝えておいてよ。
どうせあの子達、万が一失敗しても口は割らないよう仕込んであるだろうし、警察に捕まったとしても、どちらにせよ人を殺してるんだから死刑だろ。これほど後処理が簡単な駒はいないだろ?
君も私のように使えるものは全て駒として扱わないと、失敗するよ?
私は使えるものは何でも使う。例えそれが己の妻子だろうとね。
ああ、そうだ。赤目が最後に足りなくなったら私の娘と息子も使うかい?
何を隠そう、私の子は片方ずつだが二人とも赤い瞳の持ち主なのさ! まあ、私の両目が赤いのだから、当然と言えば当然なのだろうけど。
さすがに私の両目を差し出すわけにはいかないからねえ……何も見えなくなると困るし。
まあ、冗談はこのくらいにして、一度、君の奥さんに会わせてもらってもいいかい?
今日はお孫さん、ミドナちゃんだっけ? 彼女に憑依しているんだろう? 奥さんのエリスさん。旦那さんの仕事のパートナーですって挨拶しなくちゃ!
 




