第3話 2【質問その2、僕を待ってる女の子は誰なんですか?】
「えっと、次の質問は……なんだっけ? ごめんね、最近物忘れが激しくて」
頭を掻きながら恥ずかしそうに言うエドワーズさんに、僕は言った。
「いえ、次の質問は……あ、そうだ。エドワーズさんはさっき、僕のことを今年初めての迷子だって言いましたよね。それって、僕の他にもこうしてこの世界に迷い込んで来る人がいるってことですか? エドワーズさん達はそういう人を見つけて元の世界に返すだとか、そういう活動をしているんですか? 教えてください」
身を乗り出して正面に腰を下ろすエドワーズさんに質問する。
「要するに僕たちが何者なのか、か……その前にボクも君に一つ質問したい。いいかい?」
「はい」
エドワーズさんは、真剣な表情で言った。
「君は、リルクという男を知っているかい?」
リルク。どこかで聞いたことがある名前だった。僕は、その名前をどこで聞いたのだっけ。
――――あ、思い出した。
「リルク……あの子もそう言ってた。僕はリルクに似てるって」
「あの子って!」
エドワーズさんは椅子から立ち上がり、両手でテーブルを叩いた。
「僕がこっちの世界に迷い込むきっかけになった廃墟の中で、黒い猫が女の子の声で喋ったんです。あなた、リルクに似てるわねって」
エドワーズさんは全身の力が抜けたように椅子にもたれ掛かる。と、そこで今度はメルヴィンが思いきりテーブルを叩いた。
「あいつ!」
「そうか……君がこの世界に来たのは偶然ではなかったのか……驚かせてごめんね。お詫びにクッキーでもどうだい?」
「え、え? どういうことですか? あ、クッキーいただきます」
エドワーズさんが次々と出してくるもてなしの品を全てたいらげながら、困惑する。
僕は意図的にこの世界へ連れて来られたということなのだろうか? そうだとするならば、僕が元の世界に戻るためには、メルヴィンの言う「あいつ」とやらに会う必要があるのかもしれない。
「君が鏡の国に来てしまったのは多分、彼女――――ミドナに呼ばれたからなんだ」
エドワーズさんはそう言って、深い溜息をついた。
彼の口ぶりからするに、そのミドナという人物こそ、僕をこの世界に誘導した黒猫の正体なのだろう。二人の困惑具合から察するに、そうとう厄介な子のようだ。これは、後々彼女と会うかもしれない僕も、一筋縄ではいかないかもしれない。
「ミドナって、誰なんですか?」
「ミドナは俺の妹だよ」
「え?」
メルヴィンは眉間にシワを寄せ、吐き捨てるように言った。
次回は12時頃の予定です。




