表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/68

プロローグ




「お母さん、この絵本読んで」



 幼い頃、就寝前の夏川(なつかわ)(ひかる)は母親に一冊の本を読んでもらうのが日課だった。



「あら、またその本持ってきて……陽は本当にその絵本が好きね」



「うん! 僕もいつか、この絵本の世界に行ってみたいんだ!」



「……そう」



 無邪気に笑いながら言った陽を見て、母親は悲しい顔をした。


 絵本の題名は「ミラーワールドの大冒険」

 この絵本には元になったエッセイがある。


 母親は陽が眠った後、本棚から一冊の本を取り出した。


 題名は「鏡の国」絵本として出版された「ミラーワールドの大冒険」の元になったエッセイである。著者はカミヤという人物。


 エッセイの冒頭はこうだ。



【 私は十五歳の時、鏡の世界でもう一人の自分と会ったことがある。

 私たちの住む現実世界とは別に、もう一つ、この世界には「裏側」が存在する。

 あちらの世界の特徴として、文字が全て反転していることから、私はこの世界を「鏡の国」と呼ぶことにした。

 私は何かの拍子であちらの世界に迷い込んでしまい、そして戻ってきた過去があるのだ。

 その時のことを、覚えている限りでこの本に記しておこうと思う。

 私のように誰かがあの世界に迷い込んだ時、この本が道しるべになる時が来ると信じて】



 一見、現実離れした話のようだが、母親は本の内容を信じていた。

 なぜならこの本を出版したのが実の兄だったから。母親も同じように、あちらの世界に迷い込んでしまった経験があったから。

 陽がそれを知るのはまだ先の話。


 母親は眠る陽の髪の毛を撫でながら大きく溜息をついた。



「運命……か」



 それから月日は流れ、幼かった陽は十八歳になっていた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ