第8話「最終決戦」
第8話「最終決戦」最終話です。
最終決戦が始まった。
始まって早々、早くも私たちは絶対絶命としか言いようがない状況にあった。敵の数は一向に減らないどころか、どんどん増えているような気もする。
「ブラウン!」
飛翔して敵に向かうブラウンが魔術攻撃を受ける。追撃に来た敵を、シャロの魔術で撃退する。戻ってきたブラウンを私の魔術で回復した。
「これまで備蓄してきた回復薬やら何やら、根こそぎ尽きてしまいそうだ。このままだと間違いなくやられる。予定時刻よりまだ早いが、そろそろ仕掛けよう」
「オーケー、手筈通りによろしくね」
「わかった」
「了解です!」
再び飛翔するブラウン。攻撃をしつつ相手の注意を引く。ブラウンの誘導に乗ってきた敵が、予定していたポイントに到達する。
「第一陣、いくよー! 貫けーーflame-bullet Level 4」
シャロの詠唱で、無数の炎の弾丸が敵に迫る。
「反射せよーーreflection Level 4」
敵が弾丸を魔術障壁で跳ね返す。
「砕けーーdiamond-smash Level 4」
跳躍するパンダ。敵を魔術障壁もろとも爆砕する。
「束縛せよーーbind, Level 4」
光の輪によって拘束されるパンダ。襲い来る敵をブラウンが迎え撃つ。
「切り裂け、split-claw, Level 4」
「ブラウン! 後ろ!」
シャロの声に反応し、ブラウンが攻撃の直後に横っ飛びする。直前までいた場所に無数の弾丸が降り注ぐ。ブラウンは舌打ちをする。
「ダメだ。ろくに攻撃もできやしねえ。シャロ、第二陣ぶっ放してやれ」
「オーケー!崩れゆく均衡ーーhard-quake, Level.4」
大地が揺れ動き、大小様々な破片が敵陣に降り注ぐ。しばらくの間攻撃は止まず、辺りには土煙が立ち昇る。
「シャロ!」
土煙の中から飛び出した弾丸にブラウンが反応する。しかし、届かない。
「護れ!ーーprotectーー」
防御魔法の詠唱が間に合わない。弾丸がシャロに命中する。
「あちゃー、やっちゃったわ……」
「魔封じか……」
シャロに放たれた弾丸は、一定時間詠唱が不可能になる魔封じの弾丸だった。
「ーー作戦変更だ!プランBにーー」
「ブラウン、右!」
ブラウンに向かって無数の剣戟が繰り出される。ブラウンは全てを防ぎきれず、いくつかの攻撃を受けてしまう。
「しまったーー麻痺付きか」
動きの鈍るブラウン。止めを刺そうとする剣先を、パンダのハンマーが薙ぐ。
「これ、ヤバイと思う。って言っても、退くところも、もはや無いんだけど」
パンダが弱音を漏らす。
「そんな…」
終わってしまうのか。そうしたら、一緒に戦った仲間達は一体どうなるのだろう? 少なくとも、平穏無事でいられるのならば、最初からこんなことはしていないはずだ。
敵は、とどめの一撃のためにパワーチャージをしている。今度こそ、後はない。
「もはやここまで……か。モエコ。巻き込んでしまってすまなかった」
ブラウンが目を瞑る。
「そんな…」
「あたしも魔法使えないんじゃ、何もできないのよね」
「俺一人では無理だ」
私は苛立った。絶望的な状況と、自分の無力さに。
「ふざけないでよ! なんのために私が……」
涙がこぼれ落ちた。四人でゲーム攻略をしていた時を思い出す。面白いように簡単に倒せる敵。次はどこに行こうか、と話す四人。
「ここで終わりなんて……嫌だよ。もっとあなたたちとゲームが、したい」
ここで終わってしまったら、もうこの四人が出会うことなどないだろう。それを私はたまらなく、許せなかった。
「光へ還れーーheaven’s stream Level 5」
なんだ、それ。敵の詠唱は最上級魔術だった。ほとばしる光が私たちに迫る。
悔しい。悔しい。私にも輝ける場所があるかも。私にも、救える世界があるのかもしれない。そう思ったのに。こんなの、絶対受け入れられない。
「何か、何か策はーー」
その時、私は自分のスキルウィンドウに見慣れない文字列を見つけた。即座に、詠唱を始める。
ーーいや、それは呪文ではなかった。
「歌唱スキルーー!?」
驚きに目を見張るブラウン。私は、歌っていた。
「常しえに続く友の祈り 空を駆け天を裂き 降り注ぐ星々」
「信じられないーーあれって、最上級魔術のメテオの詠唱よ」
光の奔流に対し、無数の隕石が降り注ぎ、拮抗する。やがてーー打ち勝った。
「私は歌う 戦う友のために 立ちはだかるものは 無へと還る」
敵の姿が次々と消えていく。
「おいおい、なんだそりゃあーー回避不可即死つき全体攻撃魔法なんて、チートにも程があるんじゃねえのか」
大勢の軍勢は、為す術もなく消えていく。
気がつくと、そこには四人しか立っていなかった。
「勝ったーーのか?」
「ーーそう、みたいね。って、ちょっと、モエコ!?」
ーー私は、そこから先はよく覚えていない。
ひとまず戦いには勝ったらしく、その後に四人で祝杯をあげた。謝礼金を渡すとも言われたのだけど、それはさすがに申し訳なくて断ってしまった。敵陣営はというと、一千万円もの大金を逃したのだから暴動か何か起きるのではと心配したものの、特に動きは無いようだった。
これでひと段落ーーと思っていた矢先、ブラウン達の元に一本の連絡が入った。
「はい。社長がですか? ですから、今回のようなことは今後一切やめていただきたいとーー はい? 二回戦?」
ーーTo be continued.
初投稿でした。お読みいただいた方、ありがとうございました。
これからも投稿していこうと思います。