第7話「復活」
第7話です。
「今日はよろしくお願いします!」
アパートのドアを開けて私は言った。
「待ってたよ!」
歓喜の声を上げるシャロ。パンダは黙って席についているが、どことなく嬉しそうに見える。ブラウンがちらりとこちらを見やる。
「随分遅かったな。早く席につけ、始めるぞ」
戦況はいわゆる最悪といった状況だった。今日で挽回できなければ敗北はほぼ確定していただろう。
「まずは相手の戦力が集まっている大きめの拠点に向かい、潰す。その後はその周りのごちゃごちゃしたのを一気に片付ける。上級スキルも上級魔法も使いまくりだが、準備はいいか?」
「この日に備えて揃えてきてる。バッチリだよ」
シャロが胸を張る。
「オーケー、じゃあ行こうか。ここ最近は酷いやられようだったからな、お返しはキッチリしておかないといけない」
いつもより幾分か高めのテンションでブラウンは言った。
最初の標的地点に到着する。
「さて、始めよう。頼んだ、モエコ」
「強化せよーーreinforce, Level 4」
「レベル4!?」
「モエコ、おまえーー」
「安心してください、風邪はちゃんと治してますから」
風邪で学校を休んでいる間、私は家のパソコンでコツコツとレベル上げをしていた。もちろん、風邪を治すためにも睡眠時間は一切削っていない。ゲームして食べて寝るだけ、みたいな生活だったけれど。
VWOでは、魔術呪文の熟練度が上がることでレベルが上がり、レベル4となるとレベル2の時と比べてさらに二倍程度の威力となる。この差はかなり大きい。
ブラウンのスキル、シャロの上級魔術により敵をあっという間に駆逐していく。気づくと、敵の拠点は壊滅していた。
「さて、あっさりと拠点制圧に成功したわけだが。時間が惜しい、次に行くぞ」
その後、私たちは敵の拠点を数カ所回り、いずれも壊滅状態にしていった。
「今日は非常に上出来だった。このペースでいけばすぐに実力拮抗、いや競り勝てるレベルまでは行けるはずだ」
ブラウンは続ける。
「しかし、もはや戦局はかなり終盤に差し掛かっている。こちらが相手と同程度の領地を取り戻したところで、敵は必ず総力戦を仕掛けてくるだろう」
最後は総力戦になることが間違いなく予想されていた。今でこそ敵は戦力を温存しているが、ゲーム終了間近ともなれば温存する理由もない。
「モエコのスキル成長の効果は目覚しい。ただ、一方で決して楽観視できない状況なのもたしかだ」
全員が真剣な面持ちでブラウンの話に耳を傾ける。
「これまではゴリ押しで行けたわけだがーーちょっと今回は、作戦を立てた方が良さそうだ。問題ない、皆で協力すれば勝機はある」