第5話「風邪?」
第5話です。
「なんか今日、鼻声じゃない?」
「そうですかね? 確かに最近ちょっと咳が出るんですよ」
「風邪には気をつけなよ」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃ、今日も拠点潰しをしていきますか〜」
私たちはその後、同じように敵の拠点を「建物ごと」ぶち壊すという活動を行っていた。敵側も力の差を察知したようで、戦力を集中させるよりも複数拠点に分散させ、できるだけ被害を最小化しようという考えのようだった。
「今日はここ。さて、行きますか」
「はい」
「早く終わらせよう」
私たちはいつものように建物に突入した。
「強化せよーーreinforce, Level 2」
「荒れ狂う刃ーーfierce-claw, Level.4」
私の強化魔法を受けて、ブラウンが跳躍し、いつも通りの近接格闘スキルを発動する。
ーーしかし、今回は結果がちょっと異なった。まだ敵が倒れていない。それどころか、HPを半分も削れていない。
「まだだ! 切り裂け、split-claw, Level 4」
格闘スキル中に支援魔法の効果が切れてしまう。ブラウンの攻撃モーションが終わる。
「束縛せよーーbind, Level 4」
光の輪によって手足を拘束されるブラウン。
「ブラウン! 護れーーprotection-」
「迸れーーflame-stream Level 4」
シャロの詠唱の終わらないうちに敵の攻撃魔法が発動する。激しい灼熱の炎がブラウンを包み込む。
「ブラウン!」
炎の消えたあと、ブラウンの姿はなかった。
「な、なんでー」
私はうろたえた。こんな展開、これまでには無かった。
「退却するよ!」
「ダメだ。もう遅い」
足元には赤い魔法陣。身動きが取れなくなっていた。
「完全に、マズったか〜」
敵は攻撃魔法の射出準備をしている。
「何をしている。早く逃げるぞ!」
「ブラウン!」
ブラウンの声が聞こえる。しかし、その姿は見えない。気づくと、足元の魔法陣が消えている。
「転移せよーーTransition Level 4」
私たちは戦場から瞬間移動した。
「ひとまず、今はログアウトしよう」
安全地帯まで戻ったあと、私たちはログアウト操作を行った。