第3話「私TUEEEE 前編」
第3話です。
「VWOは、フルダイブ型VRを採用しています。ヘッドギアを装着することで、ゲームの仮想空間でのプレイをお楽しみいただけます」
無機質な音声でチュートリアルの説明が行われるのを、私は黙って聞いていた。
「MPを消費することで、魔法を使用することができます。魔法には攻撃魔法、防御魔法、支援魔法があります。キャラクターの能力値はHP、MP、攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、敏捷性の七要素からなり、通常攻撃や魔法攻撃などの各行動の威力などに影響します」
ステータスは一般的なオンラインRPGと同様のようだ。
「ジョブを選んでください。ジョブは格闘家、魔法使い、僧侶、盗賊の四種類から選択できます」
「このゲームは職業固定なの。よく考えて選んでね。まあ、あなたなら何を選んでも強いと思うけど」
「オンラインゲームを何度かやったことがあるならわかると思うが、格闘家が物理攻撃・防御、魔法使いが攻撃魔法、僧侶が回復・支援魔法、盗賊がその他トリッキーなスキルに対して強みがある。ちなみに、裏パラメータ『声の魅力』は全パラメータに影響するから、何の職業を選んだとしても影響はないはずだ」
うーん、と私は唸った。どうしようか。私は前線に立ってというよりは裏方のキャラクターの方が好きなので、支援魔法を使う僧侶に決定した。
「僧侶か。良い選択だな」
「裏方が好きなので」
「頼りにしてるからね」
チュートリアルで呪文の使用方法を教わった。初期は味方のパラメータを微量アップさせるくらいの簡単な支援魔法しか使えないようだ。
「最初はMPも限られているだろうから、あまり連発はしない方が良い。あと防御力も低いだろうから、前線にはなるべく出ないようにしてくれ」
「わかりました」
ゲームが開始し、フィールドが目の前に現れた。見渡す限り、大草原が広がっている。
白髪の青年、大男、華奢な女性の三人が周りに立っていた。
「私がシャロ、白髪のがブラウン。あの大きいのがパンダね」
華奢な女性が説明してくれた。
「よろしく頼む」
「あっ、はい。わかりました」
それにしても、グラフィックがとても綺麗だ。思わず見とれてしまう。
「えっと……グラフィックがすごく綺麗ですね……」
「やっぱり、最初はそう思うよねえ」
「このゲームのウリだからな」
これならハマる人が多いのもなんとなく頷けるような気がした。まあ今時そこまで珍しくはないけれど、このゲーム自体に対する私の期待感はかなり高かった。
「さて、急で申し訳ないが、早速戦闘だ。今回のゲームは陣取りゲームで、地域ごとに陣営が全滅すると占領される。相手に全部占領されるか、ゲーム開始から一定の期間が経過するまでゲームは続く。ちなみにそのゲーム終了日は、今日から数えておよそ三週間後だ」
「えっと……そんなことより、なんかこの状況ってやばくないですか……?」
私の気のせいでなければーー私たちはすでに、大勢の敵に囲まれている。
「簡単に状況を説明すると、ここは敵陣営のど真ん中で、まさに殺されそうっていう状況ね」
「ええ〜っ!」
「大丈夫だ。とりあえずチュートリアルで習った通りに呪文を使ってくれ。攻撃力アップの魔法くらいは初期から使えるだろう」
「は、はい……えーっと」
呪文は基本的に詠唱が必要だ。直接声に出して読み上げる必要があるらしい。
「強化せよーーreinforce, Level1」
ブラウンの身体が光り輝いた。
「この能力上昇はーー」
「えっ! こんなに!?」
「これなら、いけるーー」
高く跳躍するブラウン。敵の詠唱が終わる。ブラウンに向かって、炎の矢の形をした魔法攻撃が迫る。
「打ち消せーーcansellation, Level.4」
シャロの魔法によって、魔法攻撃が相殺された。敵の密集地帯に着地すると同時に、ブラウンは近接戦闘スキルを発動させた。
「荒れ狂う刃ーーfierce claw, Level.4」
ブラウンは剣を振り回して乱舞した。瞬く間に周囲の敵のHPがゼロになり、キャラクターが消滅する。数十人はいた敵が散り散りになり、消滅し、逃げ去っていく。
「えっと……勝ったんですか……?」
「ああ」
「なんていうか……」
「想像以上、と言ったところか。今の連中はかなりの精鋭部隊だ。それを、初期の支援魔法と近接戦闘スキルだけで蹴散らす。パンダに至ってはただ見ていただけだからな。モエコ、君はポテンシャルの塊という他ない」
「何もすることが無かったから黙って見ていた」
冷静にパンダは言った。あまり言葉数の多いタイプではなさそうだ。
「そ、そうですか……」
私としては、あまりにもあっさりと戦闘が終わり、実感が湧かないのが正直なところだった。
「この際だし、もう本拠地ぶっ壊しちゃいましょうよ」
シャロが物騒な提案をした。
「それもそうだな」
「ええ……」
あまりにも急な展開に、もはや私はついていけていなかった。とはいえ、せっかく来てまだプレイ時間も十五分くらいしか経っていない。戸惑いつつも、私は三人についていくことにした。