第71話 [双子7]私の親友
「小町ちゃーん、ねぇ、聞いてよー」
朝のホームルーム前、私はクラスメイトで親友の小町ちゃんの席まで行って、朝から元気に話しかける。
「どうしたの、めぐっち、ミーくんのこと以外ならなんでも聞いてあげるよ」
「…………」
「ミーくん以外の話題ないんかい」
「ないよ!」
「そんな元気に言われても」
小町ちゃんは呆れたように溜息をつく。
「めぐっち、私の前ではいいけど、他の友達の前じゃ引かれるから、ミーくんの話はやめといた方がいいよ」
「えー、当然じゃない。こんな話、親友で兄のいる小町ちゃんにしか話せないよ」
「兄がいるからこそ、全く共感できないんだけどね」
「またまたー」
こめかみを抑える小町ちゃんに私は出来るだけ共感できそうな話を考えて話題を振る。
「あっ、小町ちゃんはお風呂、お兄ちゃんの後に入って残り湯楽しむ派、それとも先に入ってお兄ちゃんに自分の残り湯に浸からせる派?」
「そんな派閥は存在しない。あと、今日から兄の前後で風呂に入りにくくなったわ」
小町ちゃんは、疲れたように頬杖をついて、私をジロっと見つめる。
「めぐっち、最近前よりミーくん病激しくなったね。やっぱりミーくんが彼女と別れたあたりぐらいかなー」
「え? その話小町ちゃんにしたっけ?」
「五回」
「ごめんさい」
そうか、そんなに話したっけ。
小町ちゃんは心底どうでもよさそうに「因みに」と口にした。
「私がミーくんと付き合ったら、めぐっちはどう思う?」
私はそう言われて思わず真剣に考え込んでしまう。
しかし、結論は直ぐに出た。
「最高だよ! 小町ちゃんが私のお姉ちゃんなんて、毎日一緒に寝ようね」
「うん、私、ミーくんとだけは付き合えないわ」
何故か小町ちゃんは何かを悟ったようなスマイルでミーくんを拒否した。
ミーくん可哀想。
「でも、やっぱりめぐっちの暴走を食い止めるためには、ミーくんにまた彼女を作ってもらうのが、手っ取り早いと思うんだけどねー、いい人いないかね」
「ミーくんの場合、本人が作ろうと思えばいくらでも作れるから、本人の意思次第かなぁ」
「すげーな、ミーくん。もやしみたいだから私のタイプではないけど」
小町ちゃんは筋肉質な男の人が好きなのだ。
ミーくん可哀想。
そこまで話して担任が朝のホームルームのため教室に入って来たので、会話は終わった。
しかし、小町ちゃんの言ってることも一理あるなとその日は放課後まで授業も聞かずに真剣にミーくんの恋人をどうやって作るかを考えていた。
授業が全部終わり、後は帰るだけなので、私は小町ちゃんに声を掛けた。
「小町ちゃん、帰りどっか寄ってこうよ」
いつもなら割とよく二人で遊んで帰るのだけど、今日の小町ちゃんは少し上機嫌でその提案を断った。
「ごめん、今日映画行くんだ。この前、公開になった恋愛映画」
「えー、それ私も行きたーい、駄目?」
「あー、ごめん。もう一緒に行く人決まってるから」
「誰?」
「ん? 兄貴だよ」
私は『類は友を呼ぶ』と言う単語を思い出したが、口に出さずに直ぐに忘れることにした。




