第54話 永遠に見せない
「小島先輩! ツインテールにしてみて下さい!」
馬鹿な後輩が馬鹿な事を頼んできた。
「嫌よ」
「大丈夫ですよ。似合いますよ!」
私は溜息をついて、やりかけの宿題のプリントの上にシャーペンを置いた。
「そもそも私、ショートなんだけど」
「伸びるまで待ちます!」
「いや、そんな元気よく言われても」
気が長過ぎるわ。
「大丈夫ですよ! 絶対似合います!」
「いや、似合う、似合わないの心配してないんだけど」
「天下取れます!」
「私、普通の高校生だし、天下とか興味ないんだけど」
「いけますよ! 天下!」
「だから天下興味ないって、どんだけ私に天下取らせたいのよ。私は豊臣秀吉か」
私は首元までしかない後ろ髪に少し触れる。
「大体、なんで突然訳の分からない事言いだしてんのよ」
「昨日、夢でツインテの先輩を見たんで、現実でも見てみたいなって!」
「あんた、何でもハキハキ言えば許されると思ってない?」
こいつはその節がある。
私はこめかみに手をやり、嘆息する。
「だいたい、私が周りからなんて呼ばれてるか知ってるの?」
「……織田信長?」
「いや、天下シリーズはもういいわ。ってかそう呼ばれてたら私どんな奴なのよ」
「天下取れそうな可愛さです!」
「あんた、眼球ついてる?」
「二つ付いてます!」
「そう、あとで洗ってきなさい」
私は二人きりの部室を見渡す。
部室の廊下の方にまで耳を立て人のいない事も確認する。
「はぁ、言いたくないけど一人だけでオカルト部なんて訳のわからないものをやっている変わり者って言われてるのよ」
「二人ですよ!」
「そうね。今年からあんたが入って二人ね」
私の代で終わるかと思っていた、この部もこいつが入ったおかげかせいか分からないが存続が確定してる。
「だいたい、あんた何でこんな訳の分からない部に入ったのよ」
「小島先輩に一目惚れしたからです!」
「…………あんた、私が髪伸びるまで待ってくれるのよね」
「はい! 明智光秀のようにお側で待ちます」
「最終的に殺す気かよ」
明日、美容院に行こう。
しばらく髪を伸ばすのはやめておこう。




