第300話 それにも色んな種類がある
可愛い後輩が出来た。
私は昔から何故か人の嘘に敏感で嘘をつかれる時の独特の雰囲気が苦手だった。澄ました顔、動揺した顔、強気な顔、弱気な顔、どれも嫌いだ。
つまり私は嘘付きが嫌いだった。
高校に入学して今もどこかで人とは一定の距離を置いてしまっているところがあるかもしれない。
可愛い後輩が出来た。
私の可愛い後輩はよく嘘をつく。そのどれもが私に関する事だった。初めは軽蔑した。何故、そんな意味のない、意味のわからない嘘をつくのかなと思っていた。しかし、ある日の部活動で私が遅れて教室に入ろうとした時、可愛い後輩と他の後輩たちが話しているのが廊下に漏れてきた。
「お前、折川先輩のこと好きだろ」
「んなわけねーよ」
「本当かなぁ」
「あり得ないって」
あっ、そう言うこと。
恥ずかしながら嘘を見抜けるこの体質のせいもあり、人と距離を置き、人から好かれると言う事を体験した事が無かったので嘘は見抜けてもそんな簡単な事が見抜けていなかった。
帰り私は意図的に可愛い後輩と教室に二人きりになった。
「箕田、私のこと好き?」
「別にそうでもないです」
可愛い後輩は案外嘘が上手い。
「箕田、私と付き合ってみる?」
「は? 意味が分かりません?」
「付き合いたくないの?」
「言っている意味がよく分かりません」
「そっか、残念。先帰るね」
私はわざとゆっくりと足を動かした。
嘘つきな後輩が正直な後輩になるのを待つ為に、
「ちょ、ちょっと待って!」
「なに?」
「本気ですか?」
「なにが?」
「……付き合いたいです」
私は踵を返した。
可愛い恋人が出来た。




