第293話 永続的愛の供給
ジャラジャラと独特な麻雀牌のぶつかる音がする。彼とその友人たちの四人で卓を囲み、もくもくと煙を蒸している。
私は彼の後ろでただニコニコしていた。
「桂香ちゃん、何も雀荘までついてこなくても。暇でしょ?」
「えー、そんなことないよ。私はただ雄志と居られるだけで幸せだもん」
「うわー、俺もそんな台詞を彼女に一度でいいから言われてみたいよ」
彼の友達が私が退屈でないかと心配をして声を掛けてくれた。彼自身は黙々と麻雀に夢中で特に私に声をかけたりはしない。しかし、その横顔をまたカッコ良かったりするのだ。
雄志と同じ空間にいるだけで私は安心感と幸福感を同時に得ることが出来る。初めて会った時から不器用な人だったけど、告白は彼からだった。
『好きになった』
初めて二人で遊びに行った日の帰りに真剣な顔で言われたのだ。私は少し戸惑いはしたけれど、勇気を出して一つだけお願いをしてみた。
『ずっと一緒にいてくれる?』
昔からベタベタし過ぎるとか、束縛が激しいと言われ、誰と付き合っても長続きしなかった。
だから、もう恋人は要らないかなと思っていたタイミングでもあったのだ。
『お前の気の済むまで』
それは私の求めていた満点の解答だった。
友人との麻雀も終わり、お店を出ると時計は深夜を回っていた。
「帰るか」
「うん」
彼は羽織っていたコートを私に貸してくれた。
「退屈だったろ」
「全然」
私と雄志は仕事の時以外本当にずっと一緒にいる。ここまで許容してくれた彼氏は初めてだ。
「雄志は私が邪魔じゃない?」
「邪魔なら付き合ってないだろ」
「……うん、そうだね」
胸の中がギュッと熱くなった。
多分、私は彼と別れてしまえばもう二度誰とも付き合うことはしないだろう。
私は彼の腕をギュッと抱きしめた。
欲しいのは側にいてくれる貴方だけなの。




